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オートファジーの発見物語は面白い

日本のオートファジー研究第一線を走る方のインタビュー記事が載っています。

以前にNoteでも、オートファジーが老化防止に繋がる研究を紹介したことがありました。

上記投稿では、オートファジー自身の説明はほぼ割愛しました。
ですので、そもそもオートファジーがどういった仕組みなのか?
その発見の経緯も含めて紹介してみたいと思います。

まず、オート=自己、ファジー=食べる、というギリシア語から取っており、その由来のとおり「自分を食べる」現象です。
これだけ聞くと少々怖いイメージを持ってしまいますね。

そもそもこんな不思議な現象が見つかったのは結構古く1950年代にさかのぼります。
電子顕微鏡の普及で、よりミクロなスケールを観察できるようになったことが大きいです。

ベルギーの研究者が、飢餓状態にしたラットの肝臓を観察すると、細胞質の包む袋が見つかって、自身の成分を自分で食べて分解しているのではないか?という仮説を唱え「オートファジー」と名付けました。

ところがここから苦難の時代が続きます。

他の細胞内にある器官(オルガネラと呼ばれます)の解析は進む一方で、オートファジーで出来た謎のコブクロがどういう仕組みで出来るのかが皆目見当つかなったわけです。

その他の器官(例:ミトコンドリア・リソソーム)は常に細胞内に存在し時期が来たら分解されます。
ところが、このコブクロはいつの間にか出現し、他の小器官と融合して消えていくのです。
しかも、コブクロの抽出に成功したとしても、袋の中には自食で取り込んだものもあるため解析は困難を極めていました。

そんな中で30年以上もオートファジーの研究は進展がなく、遂に思わぬ分野から明かりが照らされることになります。

それが、大隈教授による「遺伝学」を使った新しい挑戦です。

元々大隈教授は、酵母(パンの発酵でおなじみになりました)という単細胞生物の細胞周期を研究していました。
実は酵母は細胞分裂の周期が早く、なんと2時間で1個が2個(!)に分裂します。余談ながら我々哺乳類だと24時間かかります。

その分解を担う小器官の1つが「液胞」と呼ばれるもので、当時は「ゴミ置き場」の扱いで真面目に研究する人がおらず、だからこそ大隈教授が目を付けたそうです。このあたりは研究者タイプを表していますね。

液胞は他の小器官で分解されたものを吸収・輸送するのでは?という仮説のもとで飢餓状態にしてラットと同じような実験を行いましたが、やはり自身の分解作用との識別が困難でした。
そこで、海外より通常は自己分解をしない遺伝的な変異を持った液胞を調達して実験を行ったところ、ついに飢餓状態でのみ分解作用、つまり自食作用を行う現象を発見しました。
簡単にいいましたが、この経路にいたる執念は本当にすごいと思います。
繰り返しですが、当時は液胞は注目されてなかった存在です。

もう一つ補足すると、酵母は哺乳類よりもよりミクロであるため、相当最先端(つまり高価格)の電子顕微鏡を使わないと観察は出来ません。
その代わり、単細胞生物であるがゆえに機構が単純で、遺伝学の分野ではよく対象として使われてきた一日の長があります。
つまり、わざわざタンパク質を抽出しなくても、その遺伝子が分かれば特定可能ということです。

そういった外部環境もあって、酵母でオートファジー現象特有の遺伝子を特定し、1992年の論文で発表します。
それをきっかけとして、オートファジーの機構解明が認められてノーベル生理学賞の受賞に繋がるというわけです。

もちろんこれは単独ではなく、従来の生化学とよばれるアプローチは不慣れであるため、それぞれの専門家との共同研究ですし、最終的な遺伝子特定も研究メンバとのチームワークです。

今は健康ブームを追い風にオートファジーがファッション的にとりあげられていますが、ぜひその発見の経緯にも目を向け、偉大な先達にも興味をもってもらえたら幸いです。

今回の内容は、冒頭記事に加えて下記書籍を参考にしました。


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