電離層擾乱(じょうらん)と巨大地震のメカニズム
以前に、GNSS(地上位置情報を伝える測位衛星の一般的名称。GPSはアメリカが提供しているもの)の新しい役割について触れました。
巨大地震の直前に電離層(高度60km-800km)が乱れる現象(擾乱:じょうらん)が起こることが計測でわかっており、GNSSがそれを検知することで地震予知ができるかも、というはなしです。
前回はあくまで結果だけで、なぜ巨大地震の直前に電離層で擾乱が生じるのかまでは分かりませんでした。
今回の「南海トラフ地震注意呼びかけ」をきっかけに改めて調べてみると、京都大学がそのメカニズムの仮説を実験付きで発表していました。
まず、地震が起こる仕組みの確認です。
厳密にはそのきっかけは分かってませんが(なので予知が難しい・・・)、プレート間の歪みが蓄積されて、どこかでそのずれを戻そうとする力が地震となります。内閣府のサイトが分かりやすいので貼っておきます。
今回の仮説の主役は、このプレート境界面にある粘土質(スメクタイト)です。ここに水分が含まれている可能性があり、重要な意味を持ってきます。
まず、地震(ずれを戻す力)によって地殻が破壊されると、その運動エネルギーが熱になって接合部は高温になります。
つまり高圧高温が進み、どこかで上記の粘土質内水分が臨界点を超えた特殊な状態となります。これは「超臨界状態」とよばれ、電気を通さない(電気抵抗が上昇)性質を持つことが知られています。1つ解説サイトを。
一方で、下敷きをこすって静電気を発生(よく髪の毛を逆立ててました)させていたように、接合部では摩擦で電気も発生しています。
これらから、発生した電気を通す・通さない差がこの領域で生じ(いわゆる電圧です)、それが閾値(今回の計算では300V)を超えると放電現象が生じ、地表にも伝わっていきます。それが上空 数百km以上にある電離層を乱れさせるにまでいたる、というわけです。
電気が発生するのか検証した実験結果がこちらの図になります。
この「20mV」の箇所が、先ほど触れた電圧発生の検証というわけですね。
個人的には腹落ちしたので、ぜひこれをモデルにして地震予知への研究をさらに推し進めてほしいです。
幸い、それを(本業ではないが)検知する日本のGNSS(愛称:みちびき)についてよい流れがあります。
元々は7機体制で進めていましたが(現在4機稼働中)、11機体制へと拡大を検討しています。
機数が増えると、バックアップ強化だけでなく、その検知精度も高くなっていくことが期待されます。
防災大国日本ですが、地震は世界各地で起こりえます。
この研究が花開き、日本をはじめとして地球全体の地震予知に貢献することを強く望んでいます。