人工冬眠がマウスの疾患治療に貢献しました
宇宙系SF小説では定番の人工冬眠への実現が一歩近づきました。
連合での研究ですが、その中に老化分子生物学研究チームがあり、以前にも紹介した砂川氏がリーダーです。
今回の研究は、
疾患を持つマウスを冬眠させると臓器損害が通常時より抑えられた、
という話です。
世界全体で見ると、死因トップを占めるのは血液の循環がうまくいかない疾患だそうです。
今回疾患を持つマウスを冬眠させるために、前回の投稿でも紹介した、砂川氏の遺伝子編集方式が採用されました。
要は、脳内のQ神経を刺激することで人工的に冬眠状態へ誘導出来ます。今回はそれを応用した医療実験の成功と見る事も出来ます。
今回は、人工冬眠の研究と、心臓血管手術時の大きなリスクとなる腎臓障害を防ぐ仕組みの掛け合わせです。
元々人工冬眠自体が、医療と宇宙開発での応用を掲げていたので違和感はない応用実験ですが、それでも異分野のコラボはやはり意義深いです。
よくよく見ると、理研の中に、そういった最先端の基礎研究と臨床を橋渡しするプログラムが存在していました。
このリードをする升本氏はiPSを使った人工心臓が研究テーマで、これもとても再生医療への期待が高まる分野です。
近年のこの研究では、高精度に心臓の動きを測るデバイス開発の研究が発表されています。
こちらも今回同様、橋渡しプログラムの一環でバイオテクノロジー研究者とのコラボです。
こういった試みはとても必要性とその意義を感じます。
特に医療のように、新しいテクノロジーの活用余地が極めて高く、同時にその新規参入が外部からは行いにくく見える分野においてはなおさらです。
升本氏以外のケースがまだ公開記事を見るとなさそうなので、ぜひこういった野心的なプログラムは活性化してほしいです。
余談ですが、もともと理研の創設は、海外での理化学研究の動きに明るい高峰譲吉などが国に嘆願して成就しました。今から100年以上前の話です。
その高峰譲吉が発見(諸説あり)したのが、お馴染みの「アドリナリン」です。
これは腎臓あたりから分泌される化学物質で、我々の血圧をあげる生理的作用を及ぼします。
医療においてアドレナリンは、心停止時に用いたり、アナフィラキシーショック(蜂にさされたときや食のアレルギーなどが有名ですね)や敗血症に対する血管収縮薬として用いられています。
つまり、理研創設者の研究が、iPSや人工冬眠という新しい手法で解決しようとしているという見方もできるわけですね。
と、やや強引ですが理研の新しい動きとその期待を、たっぷりと睡眠をとりながらこれからも健やかに眺めていきたいとおもいます。