シミュレーション仮説はもう笑って済ませられない?
物理学者が描く夢は「万物理論の発見」とは昔よく聞きました。
あのアインシュタインが晩年に目指したのも電磁気学と重力を統合的に扱える統一的な理論でした。
今までの科学も謎の物理現象を解明すべく、仮説が構築され淘汰され練磨され、「理論」として呼ばれてきました。(理論の手前で模型と呼ぶことも)
ただ、その流れとは一線を画する大胆な仮説があります。
「シミュレーション仮説」と呼ばれます。
ようは、
この世界はコンピュータシミュレーションである、
という仮説です。
2003年にこの業界(?)では有名なニック・ボストロムが提唱しました。
イーロン・マスクもその可能性に言及したことでも話題になりました。
当時の論文はこちらで閲覧できます。概要で言及しているように、ポストヒューマンの考え方を踏まえているようです。
ポストヒューマンとは、シンギュラリティ(技術的特異点)を超えて技術と融合する人類の進化形態で、過去にもふれたので引用にとどめておきます。
シミュレーション仮説も、以前の投稿でもちらっと触れました。
この仮説を初めて聞くと、「そんなばかな」、と一笑に付すと思いますが、これが意外に反証が難しく、今でも専門家が話題にすることもあります。
そのシミュレーション仮説に関する記事が投稿されています。
ようは、
シミュレーション仮説を証明出来る可能性はある、
ということです。
こちらの記事を砕いて以下に紹介したいと思います。
ちなみに、元の仮説をもう少し踏み込んだ説が2016年に唱えられ、
「宇宙は量子コンピュータである」
とし、これは(シミュレーション仮説提唱者ボストロムが哲学者であるのに対し)物理学者セス・ロイドが唱えています。
さて、まずは支持する考え方を整理しておきます。
ざっくりいうと下記に集約されます。
1.物質を細かくしていくとビット(これ以上分けられない離散的な単位)になる
2.宇宙の最大速度制限が敷かれていること(=光速度)
3.「量子もつれ」の説明がつく(観察者の存在)
1はなんとなくわかりますが、2と3は補足が必要です。
2ですが、我々が使うPCやスマートデバイスはCPU(中央演算装置)のスペックが決まっており、その処理速度が限界値です。
同じように宇宙をシミュレーションするコンピュータにも処理限界があり、それが光速度を表すということです。
3の「量子もつれ」については、基礎情報は過去投稿にとどめておきます。
一旦複数の素粒子同士が「もつれ」ると、どんな遠距離でも光速度を超えて情報が伝わっているという謎の現象です。
これを、「処理を担うコンピュータから等距離にあると初期設定すれば」説明がつく、という論法です。(と記事に書いてますが実は筆者も腹落ちしてません。。。)
実際に研究者のなかには、これを証明しようとしている方もいます。
例えば、ある科学者は情報を物質の5番目の形態(強い力、弱い力、電磁気力、重力)に位置づけ、その情報量も予測したうえで、検証を試みています。下記で投稿されています。(難解なので未読・・・)
長期的な観点で間接的検証になるのが、「自然定数の変化」で、これは過去に物理学者ディラックも唱えていました。(当時はあまり真剣には取り合われなかったようです)
まだ決着がつく気配は見えませんが、ただこういった議論を重ねることで思わぬ副産物が生まれることは科学の世界では往々にしてあります。
なにより、謎が深まるほど好奇心がわいてきますね☺
今後の進展によってはこの仮説、もう笑って流せる状況ではなくなってくるかもしれません。