認知症の原因となるたんぱく質の除去メカニズムを解明
人生100年時代が珍しくない時代はいずれやってきます。
必然的に、病気に罹る確率も高くなり、なかでも老化も影響する「認知症」がより切実な社会課題になってきます。
そんななか、素敵な研究成果が2/26に日本で発表されました。
要は、
認知症の原因となる脳内タンパク質が除去される仕組みが解明された、
という話です。
まず、認知症、特に脳内神経細胞が死んでしまう「アルツハイマー」がなぜ起こるのかについて、確からしいことを簡単に触れておきます。(厳密には仮説です)
シンプルに言うと下記の流れで、時間的には数十年かかって進行します。
1.アミロイド前駆体タンパク遺伝子(APP)発現
2.アミロイドβタンパク(Aβ)生成
3.2が凝集されてAβオリゴマー生成
4.3が脳内タンパク質「タウ」をリン酸化
5.4によって神経細胞が傷つけられて死滅
これは「アミロイドカスケード仮説」と呼ばれ、いくつかの現象がドミノ倒しで反応が進んでいくイメージです。
さて、この神経細胞の死滅を防ぐには、1から5のうちどのドミノを食い止めるかとなりますが、今までは2を抑止する、つまりAβを抑える研究が比較的話題となっていました。
日本でもエーザイ製薬がバイオジェンと共同開発・販売をすすめており、下記の書籍はどのドキュメンタリーとして良質です。
そういったなか、冒頭の研究は初めて4,つまりタウと呼ぶたんぱく質を除去する仕組みを解明したもので、新しいアルツハイマー克服の道が開かれるかもしれません。
脳は神経細胞の集まりですが、その処理をサポートしたり脳内お掃除を担う「グリア細胞」がその除去を担います。(実は数も神経細胞と同数かそれ以上存在するようです)
今回のポイントは、そのお掃除の過程に「アクアポリン4」というたんぱく質が関与していることを明らかにしたことです。
今回はマウス実験ですが、実際にこのたんぱく質を遺伝子欠損させると神経細胞の死滅が助長されました。
まだ基礎研究の段階ですが、素人目で見てもこのたんぱく質を活性化させる手段が考案されれば、アルツハイマーの進行を抑制できそうです。
実は同じ時期(2/18)に、アルツハイマーに関する興味深い研究が、京都大で発表されています。
要は、
アルツハイマー病患者から作ったiPS細胞を用いて病気に関わる複数の遺伝子を特定することに成功し、今後の発現予測精度向上が期待できる、
という話です。
このように、発現後の対処だけでなく、「予防医学」においても研究が進んでおり、とても期待が持てます。
やはり病気になって回復するより、予防処置を行うことで、国家・個人の経済的な負担も軽減できると思います。
実は個人的に危惧しているのは、その予測を受け止める心理的な不安です。
例えばですが、ある日「5%の確率でアルツハイマーになります」と遺伝子解析で結果が出たらどうでしょう?
最終的には患者の判断ですが、この数字をどう受け止めるか、意外に悩ましい問いではないかと思います。
医学だけでなくそれをうけとめる社会のありようも並行して考えていく必要性があるのかもしれません。
いずれにせよ、今回の研究が、人類が抱える難病に立ち向かう貴重な一歩になることは間違いありません。
特に、途中で紹介した書籍を読むと、研究に携わった方々の辛く熱い思いが伝わります。心から感謝を届けたいと思います。