時代を動かすDARPAの業績
DARPAという組織を聞いたことがあるでしょうか?
つい最近、Starlink含めて米国主要衛星業者を選定して、衛星間レーザ通信の研究を進めようとしています。
ようは、
現状のコンステレーションは各社規格閉じているので、相互乗り入れができる光速ネットワークをつくろう、
という話です。
特定の企業による宇宙通信基地局が機能不全になっても、通信環境を維持出来る仕組みで、ある意味初期のインターネット創設に似ています。
これを指揮するDARPAですが、実はインターネット創設にも深くかかわっています。
先端技術の陰にはDARPAが結構関わっていますが、ここはアメリカ国防総省、通称ペンタゴンのR&D機関という位置付けです。
DARPAが関わり今では有名となった技術について今日は触れてみたいと思います。下記が主な参考サイトです。
自動運転車
今では米国をはじめ一部商用化も試験的に進み、技術的にはだいぶこなれてきた感があります。
21世紀初期に、DARPAが主催した自動運転コンテスト「グランドチャレンジ」が、まさに自動運転黎明期を支えた有名なイベントです。
砂漠に142マイルのコースを作り、トップに賞金100万ドルが用意されましたが、エントリした15 台いずれも完走できず、最長記録はたったの 7.5マイルでした。
このコンテストは毎回趣向を凝らし、都市内でのレースも行われ世間の話題を呼ぶとともに、競うことで確実に技術進化にも貢献しています。
その派生でヒト型ロボットのグランドチャレンジも開催され、なかには有名となったボストンダイナミクスも登場しています。
ここは元々DARPA支援の下で研究を進めており、今はGoogle・ソフトバンクを経て現代自動車グループが買収しています。
このグランドチャレンジという企画は、当初軍事集中のDARPAイメージを良くした効果もあったようで、それ以降もより民間支援またはPR効果を意識したプロジェクトを進めていきます。
ワクチン
意外と思われるかもしれませんが、DARPAはコロナワクチンを開発したモデルナへの出資も、今回のパンデミック前より行っています。
DARPAによると、2010年代より、その分野での重要な初期研究の多くは、同機関が主導するワクチン対策プログラムADEPTプロジェクトから生まれたそうです。
例えば、下記の記事(パンデミック前の2017年)でも確かにDARPAの活動が報告されています。
ドローン
これは結構知られているかもしれませんが、20世紀よりDARPAは主に軍事用途で無人飛行機の研究を進めてきました。
2021年に一部今のドローンを使ったデモ風景が公式チャンネルで公開されているので引用しておきます。
これは、群れをイメージして構想された、OFFensive Swarm-Enabled Tactics(OFFSET)と呼ばれるプロジェクトです。
200 台から 1,000 台の小さなドローンを配備して、自律的に相互作用して任務を支援するものです。
上記の動画では、我々が普段見る大きさのドローンですが、昆虫に擬した超小型のドローンも開発しています。2017年の初期タイプ、通称「Black Widow」は、6 インチ、40 グラムのカメラ付きで22分間飛行でき、今はその改良型を開発しています。
露骨にはコメントしていませんが、これは比較的軍事用途の強いプロジェクトと感じます。使い方によっては戦争の在り方を大きく変えかねない脅威を感じます。
現在のプロジェクト
上記以外にも、GPS・ステルス技術・BCI(Brain Computer Interface)などもDARPA主導で技術革新が進みました。そのマネジメント方式にも結構注目されています。
では今はというと、なかには人類の社会課題に関わりそうな興味深い研究を推進しています。
それは、「砂漠からでも水を取り出す技術」です。
記事内では詳細までは述べていませんが、材料工学の技術で大気内に微量存在するH2Oを吸着させて液体化する研究を行っています。
軍事に全く関係ないとは言いきれませんし、その技術を非営利目的で活用するかはまた別の問題ですが、もし実現できれば水不足問題に大きく貢献出来ます。
最後に、どんなに魅力的でもやはりDARPAは軍事組織配下です。
ただ、インターネットやボストンダイナミクスの例のように、民間開放・売却という選択も過去行っており、またなによりも、確実に科学技術発展には貢献しています。
微妙なバランスの上に成り立っていますが、DARPA自身もそういった黒メガネで見られないよう尽力しているのは感じられます。
こちらで、上記の砂漠の水化含めて今後の展望をDARPAが語っています。
どうか正しい科学技術普及のために、これからも貢献していただければと思います。