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【書評】坂口恭平『まとまらない人』--どうしたら鬱にならないか

 どうしたら人は鬱にならないですむか。そのことを中心に坂口は論じている。
 鬱になる前には必ず睡眠不足がやってくる。要するに、よく眠れていないということだ。ならばよく眠るには、とにかく運動することが大事である。
 日に当たりながら歩き回る。1日3時間も歩いている、と知ってけっこうびっくりしてしまった。でもそれぐらい歩けば、疲れ切って眠れるよね。
 じゃあ起きている時間に何をするかと言うと、まずは嫌なことをしない。嫌なことをすると鬱になる。そうじゃなくて、好きなことをする。
 具体的には、手を動かして何かを作る。と言うと、周りから評価されるような、お金になるものを作らなきゃ、と思いがちだが、そういうことはいっさい考えない。ただ作る。作ったら次を作る。思いついたら別のものを作る。
 それが料理でも、音楽でも、畑でも、小説でも、絵でも何でもいい。そうしていたら調子が上がってくる。
 いやむしろ、そうしているほうが、思わず評価されたり金になったりする。ここらへんのパラドックスが坂口の面白いところだ。人がやっているものを調査して流行を追うと、作品は他人の意識にしか届かない。
 でも自分の内側から湧き上がってくるものを出し続ければ、そこには無意識が出てくる。そして無意識的な作品のほうが、意識的な作品よりも息が長い。こういうのはむちゃくちゃ勉強になるよね。
 僕も続けることに苦手意識があったけど、心の健康のためだと思えば続く、という坂口の教えはとても役に立っている。実際に運動も、仕事も、 SNS も前より持続力が上がってる気がする。
 本当に坂口さんには感謝しかない。

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