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《第10回SCCしずおかコピー大賞 独りごと反省会。》 vol.26

課題3:社会貢献したくなるコピー
 ・親切なんか、いくらでもやり返せ。

女性と男性の垣根が、コトバにもあったのは昔の話。JR東日本の『行くぜ、東北。』(https://tohoku-tourism.jp/)は、若い女性たちに投げかけられたコピー。『〜するぜ!』という言い方は、もう男性だけのものではない。だからこそ、マスコミに席を置く作者が書いた『親切なんか、いくらでもやり返せ。』というコトバの響きに、静岡も遅ればせながら、ノーボーダーな時代に追いついたことを想像させた。

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一読すれば、ターゲットは「親切された人」であることがわかる。あえて『親切』としたのは、社会貢献の裾野を広げながら、より広い範囲の良好な行為に対して感謝したことがある人たちに、目を向けてほしいからではないかと思われる。

『親切』を復興やボランティアというように限定したキーワードにするのも視野が狭い。課題の掲げる社会貢献の範囲が曖昧かつ広いからこそ、想定するターゲットの範囲を広く、広範囲に流布しやすくなる。この大量方向に進むマスコミ的なアプローチは、作者の仕事柄からなのかもしれない。

『親切』には価値がある。親切を媒介することにより、人はベネフィット(受け手の利益)を享受することができる。しかし、このコピーは、コトバの上で『なんか』と否定している。この否定によって導き出されているのは、ギャップを使ったメッセージの強さだ。

『親切』など大したことはない。躊躇するほどのこともない。そう言い切り『いくらでもやり返せ。』と、まるで仕返しをけし嗾けるように言い放つ。本来なら恩返しとして、遜る言い方になるはずが、乱暴に、野蛮に、受け手に命令するのだ。

だが、そこがこのコピーのユーモア。

「親切なら、いくらやっても物足りない。」
みたいなコトバでは、印象が薄い。ましてや、若者に訴えるにはパンチがない。作者の触覚でつかみ取った言い回しは、穏やかで丁寧な言い回しでは届かない人たちの反応を促そうと必死だ。

だがしかしだ。そこまで読み解いても、やはり、コトバが少し乱暴だ。そして、長い。

『行くぜ、東北。』が完成されたコピーの例であるならば、「親切を、やり返せ。」くらいが、コトバの乱暴さのスレスレ手前で踏み止まりながら、さらに鋭く相手の急所に滑り込んで行く、カウンターパンチのよなスピードと破壊力とを実現できそうだ。このコトバの磨き作業(検討・検証)をしているのかどうか? ここが入賞を分けた点のように思う。

コピーは丁寧に紡ぐ必要はある。でも、破壊力を考えたとき、またターゲットに届くコトバ遣いを考えたとき、時に乱暴さを取り入れることで印象に残りやすくなることもある。このコピーは、乱暴さのインパクトと匙加減を、それこそ丁寧に紡ぐ必要があることを伝えてくれるコピーと言えます。


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