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初期設定の愛 37.初夢

2024年1月1日深夜、正確には1月2日午前だろう。昨年の事だ。

こげ茶色の木のカウンター、かなり古びたバーだ。
薄暗い照明の店内。
ラウンドチェアに座り、グラスを持つ。水割りだろうか。
満たされている。なんの不満もない、筆者はほろ酔いだ。

すぐ右のラウンドチェア、距離は近い。同じくグラスを右手で握り、肘をかるくカウンターに預けている。
肩から上、顔をやや左に向けている。私の方向だ。
彼女の意識は今、100%私へ向けられている。なんの迷いもない、集中している、それを感じる。

大人に成長した我が女神だ。

店内には他に客はいない。彼女の右に二つのラウンドチェアがある。そこにはだれもいない。その先には古いドアがあり、その先は細い路地だろうか。
かなり古くて狭いバーだ。高級感はない。

何を話しているわけではない、ただ、二人とも満たされている。

(夜が明ける) 初夢がこれだけはっきりした明晰夢、この夢から1年以上経過しているが、メモはとっていないが、はっきり正確に再生できる。


女神のSNSをもう一度、良く精査する。
彼女は酒が好きで、高頻度でバーに良く出入りしている様子がうかがえる。SNSの彼女は、ほぼ酔っている。
バーの店名までは不明だが、かなりの頻度だ。
そんなヒントがあった。 おおまなかな出没エリアもわかった。

いてもたってもいられない。そんな衝動がある。
どうせ暇なのだ。行ってみよう。エゴの同意も得られたようだ。
まず会えまい(これがエゴ君の消極的同意)。

彼女の住むこの都市は、日本有数の歓楽街を複数有する。バーは星の数だ。

ただ、バーに酒を飲みにいくだけだ、偶然だれか知り合いに会う。そんなことがあるかもしれない。会えなくてもいいじゃないか。
(その時にエゴ君が思いついた言い訳だ)

ホテルは事前に予約した。
夜7時頃チェックインして、しばし仮眠ののち、身支度を始めた。とにかく東日本にあるこの大都市の冬は寒い。
冬のコート、厚めのマフラー、冬の完全装備だ。

事前にSNS情報で彼女の出没エリアで絞り込んだ飲食店は約300軒。エリアを絞っての絨毯爆撃だ。

筆者にはこのとき、予感が芽生えていた。
必ず会える。エゴ君はもう消えていた。

もし会えたら、すべて洗いざらい、思いを伝える。そう覚悟した。その後の展開はあえて考えないと決めた。考え始めるとエゴ君の独壇場となるためだ。
人生は有限なのだ。時間はもうそれほどない。

1月11日だったと思う。平日だ。寒い、とにかく寒い、繁華街の外を歩く人は少ない。

まずはひたすら歩く、歩く、ひたすら歩いた。バーの数が多いので、一軒一軒入るのは非効率だし、予算もない。繁華街の路地をひたすら歩く、それが一番効率的のように考えてのことだ。バーから出てくる彼女に出会えるかもしれない、しかも偶然に。
どれくらい歩いたろうか。
もう3回目の通過だろうか、このバー。どうも最初から気になっている。

今日はもういい、おしまいだ、とにかく寒いのだ。またこよう。そこでUターンしようとしたところ、

ちょうど、バーのドアが開いた。店主らしき若い女性と目があった。外の様子でも見に来たのかな。

ドアの中がちらっと見えた。どうもノーゲストのようだ。暇を持て余しているのだろう。

ひとり入れます?  だれかが勝ってに声を出す。無意識だ。

まあいい、少し飲んでからホテルへ帰ろう。そう思った。

38.魂の成長  へつづく


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