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【シナリオ】"ちゃんとした大人"ってなんだろう?と考える中高生の話。

ーはじめにー
大人に憧れて、大人みたいになりたくて、でもどうしていいか分からなくて。そんな高校生時代がありました。
大人とはなんでしょう?
そんな考えても答えが見つからないようなことの、答えを見つけたがる中学3年生と、それに付き合う高校1年生の女の子のお話。

〇ミュージカルスタジオ。早朝。
なずなが1人、ストレッチをしている。
レッスンが始まる前に、自主練習をするためだ。
ロッカールームから彩奈が出てきて、なずなから少し離れた場所で、ストレッチを始める。

無言。

なずな「…「歳だけとってどうすんの。」」
彩奈「…え?」
なずな「え?」
彩奈「え?いや、何か言った?」
なずな「いや?」

なずな「え、口に出てた?」
彩奈「多分、出てた。その、…歳だけ?」
なずな「ああ、うん。「歳だけとってどうすんの」って。(笑)」
彩奈「あー。」
なずな「そうそう。」

彩奈「え、それが、どうしたの?」
なずな「あー、いやー、ね、昨日ドラマ観てたらね、そのセリフ出てきて。」
彩奈「なんてドラマ?」
なずな「『プロミスシンデレラ』!昨日から始まったんだよ!観た??」
彩奈「ごめんドラマは…。」
なずな「あ、そうだった。そう、なんかね、そういうドラマがあって、お風呂上がってたまたまやってたから観たんだけど。」
彩奈「うん。」
なずな「あ、観たっていうか、ほんとにちょっと?そのシーンから見たの。」
彩奈「その…歳だけとってー、ってとこから?」
なずな「そうなの。22歳の女の人にね、怒鳴りながら二階堂ふみちゃんが、あ、主役の子ね、が、そう、言ってて。」
彩奈「「歳だけとってどうすんの」って?」
なずな「うん。そう。」
彩奈「…それが、どうしたの?」
なずな「…なんか引っかかったの。」
彩奈「…その前のシーンはどんなだったの?」
なずな「いや、わかんないんだよね、そこから見たから。ただ、失礼な事を人に言っていて、「そんなこともわかんないのか、歳だけとってどうすんだ」って。」
彩奈「へぇー。まぁ失礼なことを言うのは良くないね。」
なずな「そうだよね。」

彩奈「なんで、なずなは引っかかったの?」
なずな「なんかね、うーん。…彩奈ちゃんには多分、わかんないと思うんだけどね、」
彩奈「うん。」
なずな「私まだね、分からないことばっかなの。知らないこと多いんだ。」
彩奈「うん。」
なずな「私まだ、物事の善し悪しも分かってないんだよね。」
彩奈「そうなの?」
なずな「もちろん、万引きとか、人殺しちゃいけないってのはわかるんだよ。だけどさ、学校とかでも、なんだろう、そんなつもりはなかったのに、言葉が間違って伝わっちゃったこと?とかあって。」
彩奈「あー。」
なずな「そういうのまずいんだろうなって。やっぱ、人を傷つけてしまうのは、良くないことだから。もしかしたら私もこのままだと、歳だけとった大人になっちゃうんじゃないかって思っちゃって。」
彩奈「…善し悪しの区別って難しいよね。」
なずな「彩奈ちゃんも?」
彩奈「私もしょっちゅう人を傷つけてると思うんだよね。自覚無いだけで。」
なずな「私、彩奈ちゃんに傷つけられたことないよ?」
彩奈「それはなずなが鈍感すぎるんだよ。」
なずな「そうなのかなー。」

なずな「…でも私、きっと永遠にこのままな気がするんだよね。」
彩奈「善し悪しが分からないまま?」
なずな「全てのことって、把握しきれないと思うんだよね。そりゃ、大人になって、少しずつ知識は増えていくと思うんだけど。」
彩奈「うん。」
なずな「完全に、何かについて理解することって難しい気がする。」
彩奈「なんでそう思ったの?」
なずな「だって私、15年生きてきて、私の事全然わかってないんだもん。」

彩奈「…ぷっ、ふふふ(笑)」
なずな「え!なんで笑ったの??」
彩奈「ううん、そうだよなと思って(笑)」
なずな「それで笑うー?」
彩奈「ごめんごめん。でも、本当に、なずなの言う通りだなって思った、私も。」
なずな「彩奈ちゃんも?」
彩奈「私は、今までずっと、大人になったら勝手に大人になるもんだと思ってたの。」
なずな「うん。」
彩奈「身体が大きくなると共に、知識も技術もちゃんと身について。先生とか、大人キャストの方とか見て、私もこんな風になれるんだって、思ってたとこあったんだよね。」
なずな「うん。」
彩奈「でも、簡単になれる訳じゃなくて、下積みをどれだけ頑張ったかで、素敵な大人になれるかどうか決まるんだって、最近やっとわかったの。」
なずな「そうだよねー。女優さんって、若い時代にどれだけ頑張るかで決まるって言われてるんだもんね。」
彩奈「なずなはさ、」
なずな「ん?」
彩奈「先生とか、大人キャストの方、魅力的に見える?」
なずな「めっっちゃ見える!!カッコイイよね!!あんなふうにバッキバキ歌って踊れたら、どれだけ気持ちいいんだろうって思う!」
彩奈「その方々はさ、歳だけとった大人か、それともちゃんとした大人か、どっちかな?」
なずな「そりゃちゃんとした大人だよ!!大人になるまでに、ちゃんと努力してきてるんだもん!」
彩奈「でもさ、気づいてた?」
なずな「何を?」
彩奈「その方々でさえ、今、練習を怠ってないんだよ。凄いのに、毎日ちゃんと基礎練してるんだって。」
なずな「へー。」
彩奈「それってね、私今まで、現状を維持するためだけかと思ってたの。でもほかにも理由があって、」
なずな「もしかして!」
彩奈「わかった?」
なずな「今の自分にまだ満足してなくて、もっと上にいけるって思ってる、とか?」
彩奈「そうなんじゃないかなって。」
なずな「すごいなーまだ上を行こうとしてるんだ。どうなっちゃうんだろうね、これ以上行ったら!」
彩奈「さっきなずなが言ってたことに似てない?」
なずな「…何言ったっけ?」
彩奈「「完全に、何かを理解するのは難しい」って。」
なずな「あー、言ったねー!…ん?」
彩奈「ずっと人間って、不完全なのよ、きっと。未完成なの。ちゃんとした大人なんて、きっといないの。」
なずな「…何かを、理解するために、知り続けるために、何かになるために、ずっと努力して、努力した先がちゃんとした大人、って事なのかな。」
彩奈「そうなんじゃないかなって、私は思うよ。」
なずな「…。難しいね!彩奈ちゃん!」
彩奈「開き直っちゃったの?」
なずな「直っちゃったー。でも、何となく理解できた気がする。」
彩奈「押してあげよっか、背中。」
なずな「あ、ありがとう!」

なずな、開脚をし、彩奈その背中を押す。

彩奈「柔らかくなってきたね。」
なずな「毎日お風呂上がり頑張ってますから!めっちゃお母さんに押されてるんだ。」
彩奈「そっか。」

なずな「…私毎日頑張ってる。」
彩奈「ん?」
なずな「これも、ちゃんとした大人になるための一歩?」
彩奈「ふふ、そうだね。」
なずな「歳だけとらないために、やってることの一つになるのかな!」
彩奈「はは、そうかもしれないね。」
なずな「頑張るって素敵だね!!」
彩奈「そんな目をキラキラさせないの(笑)」

彩奈、なずなの背中を押すのをやめ、
2人、並んで足をほぐす。

なずな「てことはさ、」
彩奈「ん?」
なずな「本当にちゃんとした大人は、自分がちゃんとした大人って思ってないのかな。」
彩奈「…そうね、思ってないんじゃないかな。思った時点で成長止まっちゃいそうだもんね。」
なずな「かっこいいなー。じゃあ、歳だけ取っちゃった大人は、自分のことちゃんとした大人だって勘違いしちゃった大人ってことになるね。」
彩奈「…(少し上を向いて)そう、かもしれないね。」
なずな「彩奈ちゃん、頭こんがらがってきた?」
彩奈「ちょっとね(笑)」
なずな「はは。でも、彩奈ちゃんはちゃんとした大人になるよ!」
彩奈「どうして?」
なずな「だって上手だし!それに、今ちゃんとした大人の作り方、わかったし!」
彩奈「それを言うなら、なずなもじゃない?」
なずな「私はまだまだルーキーだもん。作り方しっててもまだ、発展途上?だから。ちゃんとした大人予備軍かな。」
彩奈「なずなってほんと、(笑)」
なずな「何?」
彩奈「言葉のチョイスが変(笑)」

彩奈、お腹を抱えて笑う。

なずな「そんなにー!?もー!!」
彩奈「ごめんなさい(笑)さ、練習始めましょうか。自主練付き合うよ。」
なずな「ほんとに!?ありがとう!!」
彩奈「なにからやろっか。」
なずな「うーん。…あ。」
彩奈「なに?」
なずな「てことはさ、自分を知ることも、ちゃんとした大人になるための1歩になるのかな?」
彩奈「まだその話?(笑)」
なずな「ごめん、気になっちゃって。」
彩奈「そうね。何かを知ろうとしたり、それに向かって行動したり、極めたりすることをずっと続ければ、ちゃんとした大人になれるんじゃないかな。」
なずな「そっかー。じゃあ私、まずは自分のこと知らなきゃな。」

なずな、仁王立ちし腕を組み、考え始める。

彩奈「…なずな?」
なずな「ん?あ、練習だ!」
彩奈「はじめましょっか、まずは。」
なずな「うん!」


おしまい


ーおわりにー
「人間はずっと未完成」。この言葉を書いた時に、ウォルト・ディズニーの「ディズニーランドはずっと未完成だ」という言葉を思い出しました。
今に満足したら、一生ちゃんとした大人になれない。
私はそう肝に銘じて、毎日生きています。
この話、彩奈はスラスラと意見を言っているようですが、なずなのおかげで気付かされて、言葉が出てきている感じです。話しながら気持ちが整理されることありますよね。この話は2人ともそれです。
そういう話が出来る仲間がいるっていいですよね。
文章量が多い話となりました。読んでいただきありがとうございました!


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