【シナリオ】あの日、どこに上がるかわからない花火を探した話。
ーはじめにー
去年の6月、20時頃になると、ヒュー…ドン!!という音が鳴っていたのを思い出した。そしてその音の源はどこか、探していたのを思い出した。
〇2020年6月 20時頃の話
とある公園に来て、夜空を眺める祭と彩奈。
祭「う、うう…」
彩奈「…」
祭「予想外れにゃ…。」
彩奈「うーん。」
祭「今日は絶対ここで上がると思ったのに!」
彩奈「…あれ、でも、」
祭「ん?」
彩奈「聞こえない?ほら。」
遠くの方で音がする。ヒュー……ドーン。
祭「…やってる!どこかで花火上がってる!」
彩奈「ちょっと歩いて探してみましょうか。」
祭「うん!」
祭「でもここら辺であがりそうな場所なんて、この公園くらいだけだと思ってた。」
彩奈「逆に、上がりそうな場所では上げないんじゃないかしら?」
祭「あー、人が集まっちゃうから?」
彩奈「うん。実際結構人いたじゃない?さっきの公園。」
祭「恥ずかしいよね、みんなハズレって。」
彩奈「ほんとにね。」
祭「うーんどこだろうなぁ、花火。」
祭「…でもこれさ、」
彩奈「ん?」
祭「音の遠さ的に隣町とかなんじゃ?」
彩奈「あー、それはあるかも。」
祭「隣町かぁ…。」
2人、顔を見合わせる。
祭「電車は乗れないよにー…。」
彩奈「そうね…。…歩く?」
祭「いや、流石にそれは。」
彩奈「そうよね…。」
祭「ほんのちょっとでも見えたら良かったんだけどなー。」
彩奈「…家来てみる?」
祭「なんで?」
彩奈「5階からだったら見えるかなーって。」
祭「5階…じゃさすがに変わんないんじゃないかに。」
彩奈「そうかしら。」
祭「それにやっぱ、今 人の家に行くのはさ。一人暮らしならまだしも。」
彩奈「そうよね…。」
花火が上がる音だけが聞こえる。
彩奈「諦める?」
祭「だにー。今日はこの音を楽しもう。」
彩奈「ちょっと座りましょうか。」
祭「うん!」
2人、近くのベンチに腰をかける。
祭「…てか、いつぶり??」
彩奈「3月…とかかしら。」
祭「今まで毎日会ってたのにね。」
彩奈「たったの3ヶ月会わなかっただけだけどね。」
祭「だけじゃないよ!でかいよ!!幼稚園からの幼なじみなんだよ!?ずっと毎日あってたのに、3ヶ月急に会わなくなるなんて。」
彩奈「元気にしてた?」
祭「うーん…彩奈は?」
彩奈「…そんなに。」
祭「祭も。早く踊りたくて仕方なかった。スタジオに行って、みんなと会いたくて。」
彩奈「一人でいるのって、やっぱり寂しいわよね。」
祭「うん、寂しい。めっちゃ寂しい。」
彩奈「電話かけてくれればよかったのに。」
祭「いいの?」
彩奈「当たり前でしょ?」
祭「じゃあ、今度からそうする!」
彩奈「うん。私も祭と話したかったから。」
祭「11月の公演はできるかな?」
彩奈「この調子で流行が収まればきっと出来るわよ。」
祭「絶対やりたいね!」
彩奈「やりましょう。絶対。」
祭「うん!!」
花火が上がる音。
祭「…やっぱり見たいなぁ、花火。」
彩奈「…」
彩奈の携帯の着信音が鳴る。
彩奈、ポケットから携帯をだす。
彩奈「あ。」
祭「ん?」
彩奈「見て。」
彩奈、祭に携帯の画面を見せる。
花火の映像が映る。
祭「あ!!」
彩奈「響が送ってくれた。」
祭「じゃあやっぱり、隣町の方だったんだ!」
彩奈「みたいね。」
祭「いいなーいいなー。響も予想立ててその場所行ったのかな?」
彩奈「いや、たまたま買い物帰りだったみたいよ。」
祭「めっちゃ運いいじゃん!!」
花火が上がる音。
彩奈の携帯からは、何件かメッセージが届く音。
画面は、響からの花火映像に何人かが返信するグループラインのトーク画面。
それを横目で見る祭。
祭「皆、見てるんだね。見えなくても、私たちみたいに、音で感じてる子もいるかな。」
彩奈「そうね。」
祭「不思議だね。」
彩奈「…空って繋がってるのね。」
祭「…ちょっと臭いこと言っちゃったね、祭たち。」
彩奈「臭かった?」
祭「大分じゃない?」
彩奈「人と暫く話さなかったから、何が臭いか分からなくなっちゃった…。」
祭「じゃあ毎日電話しなきゃだね。」
彩奈「ふふ、そうね。」
おしまい
ーあとがきー
また今年も、少しで良いから花火が見たいです。
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