新しい秋の始まりに心躍らせる、双子の小学生の話。
「「いってきまーす!!」」
そう言って、家を駆けだす二人。
小学4年生の双子、宮路うい と 宮路ゆい。
勢いよく駆けだした”ゆい”と、マイペースにしっかり靴を履いてから、玄関を出た”うい”。
ゆい「びゅーん!!」
うい「ちょっと待って、ゆい!…(風が吹く)うぉお、さぶっ。」
二人のもとに、冷たい、透き通った風が通る。
ゆい「ん、この風…!!」
ゆい・うい「「秋だ!!!」」
ゆい「(あたりの匂いを嗅ぎ)んー、いい匂い。夏とは違う、ちょっと軽めで新鮮な空気!!」
うい「秋だねぇ、でもきっと、すーぐ冬が来ちゃうんだろうなぁ。」
ゆい「それでもいいよ!秋は秋!冬は冬!ゆいはねー、今日みたいな、夏から秋に変わる瞬間結構好きなんだよ~、うい知ってた?」
うい「え、知らない。何で何で?」
ゆい「ふふ、だってー、夏って長いでしょ?春から夏って、春短くて、結構早く夏に変わっちゃうじゃん?んでもって、夏長いじゃん、飽きるじゃん!だからやっと季節が変わってくれるこの感じ!夏から秋の変わり目!新鮮で好きなんだー。」
うい「確かにそうだね、夏飽きる。季節の変化も、テンポよく行きたいよね。」
ゆい「そうそう、テンポ大事!」
うい「ゆい、半袖寒くない?」
ゆい「大丈夫!ゆいは風の子!元気な子!」
うい「う、ういだって元気だし!」
ゆい「長袖じゃーん。」
うい「う、うるさいなぁ!」
ゆい「いひひ、そういえばこの会話、去年もやらなかったぁ?」
うい「確かに、やったかも(笑) 去年は確か、帰りにはゆい、寒くて凍えてるのがオチだったよね~」
ゆい「き、貴様よく覚えてやがる…」
うい「半袖でよかったって思うのは、体育ぐらいだよー。でも体育も、最初外出る時は寒いから、上着着るけど。」
ゆい「上着は面倒だよ、結果走ったら脱ぐんだもん、お荷物面倒!ゆいはお友達とギューしながら外出るよ!」
うい「ギュー?(笑)」
ゆい「うん!秋はスキンシップ始められるから好き!」
うい「寒い時期はよく、ゆいくっついてくるもんなぁ~」
ゆい「へへへ~なんだか褒められると照れる(笑)」
うい「全然褒めてない…。」
ゆい「秋と言えば~、持久走!」
うい「ハロウィン!」
ゆい「んー、読書の秋!」
うい「食欲の秋!」
ゆい「芸術の秋!」
うい「スポーツの秋!」
ゆい「睡眠の秋!」
うい「す、睡眠…?」
ゆい「あとー、音楽の秋、ダンスの秋、TVの秋、youtubeの秋…」
うい「それ、ゆいが好きなものただ出してるだけでしょ。」
ゆい「ええ、バレたぁ~?」
うい「ゆいはこの時期になると、「去年はこんなことあったなぁ~」とか、思い出すことある?」
ゆい「あるある!んーとねー、やっぱり秋は合唱祭かなぁ。去年の伴奏のオーディション、懐かしいなぁ。」
うい「家でピアノの取り合いしたね。」
ゆい「うん、したした。」
うい「今年は負けないよ~ゆい!」
ゆい「なにをー!今年もゆいが伴奏選ばれて、ういのことビービー泣かす!!」
うい「性格悪っ(笑)」
ゆい「あとはね~あ、1年の時に、男子が教室の窓割ったの!」
うい「あ!!あれもちょうどこの時期だったね!」
ゆい「あれで先生ガチおこしたの、今でも思い出すよ~(ガクブル)」
うい「ういのクラスまで先生の声聞こえたもん。」
ゆい「ガチ怖かったよね(笑)」
うい「うん。」
ゆい「ねぇ、ういはないのー?秋で思い出すこと!」
うい「うーんそうだなぁ。去年のハロウィンパーティは楽しかったし覚えてるかも。」
ゆい「あー!みんなで仮装したやつね!」
うい「ゆいがお菓子食べ過ぎてお腹壊したやつ。」
ゆい「それは言わないお約束…」
うい「でもうい、意外と今年は、昔のことよりも、今年やりたいことの方が思いつくかも。」
ゆい「お、何々?」
うい「まず、月見バーガーが食べたい。」
ゆい「あれみんな美味いって言うよね~!ゆいも食べたい!」
うい「あとー、マラソン大会で5位以内に入りたい!」
ゆい「きぇー!か、陰ながら応援するよ私は…。」
うい「あとー、…。」
ゆい「ん?」
うい「…やっぱいいや。」
ゆい「何でよ、いってよ!…あ、わかった、今書いてる本、完成させたいんでしょー?」
うい「本じゃない、小説!」
ゆい「どっちも一緒だよ。ういが絶対に人には見せない本~」
うい「うるさいー。」
ゆい「でも、そういう目標なんかカッコよくていいな!ゆいもなんか絵描いて完成させようかな!」
うい「だからその目標じゃないって!」
ゆい「え、違うの?」
うい「確かに、書き終わらせたいけど…今年の秋は、ゆいと一緒に漫画、描き、たい。」
ゆい「ゆいと、一緒に、漫画?」
うい「うん。」
ゆい「ゆいって…」
ゆい、自分を指さす。
うい、顔を赤らめながら小さく頷く。
ゆい「…あー、ありだね!」
うい「ほんと?」
ゆい「うん!ういが本書いて、ゆいが絵描くってことでしょ?」
うい「うん。」
ゆい「おもろそうじゃん!」
うい「…だよね!」
ゆい「うん!なんか本物の漫画家みたいでカッコいい!!ねぇねぇ、どんな話にする?」
うい「…実はもう構想ちょっと練ってるんだ。」
ゆい「え!ほんとに!?うい先生はやーい!」
うい「学校着いたら見せていい?」
ゆい「もちろん!え、(学校まで)ダッシュする?」
うい「しません。」
ゆい「しよ!」
うい「しません!」
ゆい「よーいスタートー!!!」
ランドセルをあらゆる方向に揺らしながら、勢いよく走りだすゆい。
うい「あーもー、ちょっと、危ないよー!!!」
ゆい「はーやくー!!!」
うい「…もー!!!」
ういも飽きれながら、ゆいの後を追い走り出す。
体育の得意なういは、すぐにゆいに追いついてしまう。
追いつかれたゆいは「ブーブー」言いながら、もう一回戦をういにねだる。
ういは走り出さないように、ゆいの腕をがっしり掴む。
二人、笑いあいながら、仲良く歩幅を合わせ、学校を目指す。
まだまだ元気な双子の姉妹の、新しい秋が始まる。
おしまい
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