ごちそうさまと、ありがとうが聞こえる食卓で | 金曜日のひとりごと
そんなに遠い過去ではないはずだけど、いつのことだったか。
夫が晩ごはんを食べた後に「ごちそうさま」につづいて「一緒に食べてくれてありがとう。きょうもおいしくご飯を食べられた」と言ってきた。
そして、今もそれが続いている。
1人で食べるより、誰かと一緒に食べたほうがなんかおいしいよね、という話を以前ふたりでしたことがあった。
でも、改まって一緒に食べることに対して「ありがとう」と言われると不思議な気持ちだった。
たしかに、残業から帰ってくるのを待って一緒に食べる夜もある。そんな日だったらなんとなくわかる。
でも、はやい時間に晩ごはんを食べても「ごちそうさま」のあとには「ありがとう」がくっついてくる。
自然と、わたしもつられて「ありがとう」をたくさん言うようになった。
ご飯は夫が作り置きしてくれたおかずがいっぱいだから。わたしはお米を炊いて、冷蔵庫のおかずと味噌汁を温め直せばいいだけ。
わが家の場合、食事について手間をかけてくれているのは圧倒的に夫なのだ。
わたしもありがとうと言うようになった時、夫は「何もしてないよ」とよく言い返していたけど、「そういうのはお互いにとって良くない」と話して感謝された方はちゃんと受け取ることにした。
ありがとうの“応酬”によって、相手がしてくれているあらゆることが見えるようになってきた。
もともとつられて言いはじめたから、最初はわたしの言葉の中身はからっぽだった。でも、言っているうちに夫のしてくれていることが鮮明に見えてきて、ちゃんと気持ちのこもった言葉になっていった。
夫と日常的にしている会話で、覚えていることはほとんどない。ひたすらに意味のない会話をできる相手がいるっていいよねってまじめに話した日はある。
そんなわたしたちの日々の中で、意味を持って伝え合う「ありがとう」の習慣が、今はお気に入りだ。