第54椀 どてめし
初出:2018年9月5日
<お味噌汁> ひと椀がつむぐ大切なもの それは日本のたから
テーマ:味噌が決め手!
「どてめし」
今回のテーマは『味噌が決め手!(お味噌汁以外も可)』という番外編のお題をいただきましたので、思い入れのたっぷり詰まった東海圏ロードサイド食堂の定番「どてめし」を紹介します。
東海地方独特の豆味噌を使って甘辛く煮込んだ料理が味噌おでんやどて煮です。中身はお店によって違いがありますが、一般的に名古屋でどて煮と言ったら豚の腸が主流です。これが岐阜県ですと牛スジであることが多いようです。
豆味噌は大豆と塩だけを使って長期熟成したもので、水分量も他の味噌に比べて少なく固くなっています。これは東海地方の夏が高温多湿のために、酸敗(脂肪類が酸化してすっぱくなること)を防ぎ長期保存が効くように工夫されたものです。徳川家康が野戦上手と言われたのはこの味噌のおかげとも言われているほどです。また、豆味噌は煮込めば煮込むほど旨みが出てくるので煮込み料理には最適です。まさにどて煮はこの味噌が決め手!な料理なのです。
私のどて煮の作り方は、牛スジをさっと茹でて洗い、食べやすい大きさに切ってから、昆布水、酒(みりん)、生姜の千切り、ザラメ、豆味噌を加えて長時間トロトロになるまで煮込んで作ります。コンニャクや大根などの根菜類を入れる時もあります。これをどんぶりめしにかけて、刻みネギを天盛りしていただくのがどてめしです。お好みで一味唐辛子などをふってもよいでしょう。
煮込み料理は大量にどっさり、長時間じっくり煮込んだものが格別ですので、実はお店でいただくことのほうが多いです。今回の写真のどてめしも、岐阜県東濃地方のとある食堂のものです。注文してぱっとすぐ出てくるのも、せっかちな自分には魅力的なところなのです。
かつて幹線道路沿いには、ドライバーのための庶民的な食堂が数多く点在していまして、それぞれの店で違った味わいを楽しめたものでした。近頃ではそんな個人経営の食堂もめっきり減りまして、おのずとどてめしも希少な存在になってきました。しかし、まだまだ東海圏のソウルフードとして末永く頑張っていただけるよう、一生懸命食べて応援していきたいと思っています。