第4椀 すんき汁
初出:2014年12月16日
<お味噌汁> ひと椀がつむぐ大切なもの それは日本のたから
テーマ:寒い日に食べたいひと椀 私の工夫
「すんき汁」
寒くなると食べたくなるもののひとつに漬物があります。実はワタクシお味噌汁と同じくらい漬物が大好物なんですが、特に待ち遠しいのは、木曽の御嶽山麓一帯で作られている酸っぱいお漬物「すんき」です。本日は、その漬物をお味噌汁に入れてしまったという、両方大好きな私のような人間にはたまらない「すんき汁」をご紹介します。
木曽の御嶽山麓一帯は、海から遠く交通も不便だったために、塩がたいへんな貴重品だったそうです。そのために塩をまったく使わず、乳酸発酵だけで赤カブの茎を漬け込んだ「すんき」というお漬物ができたそうです。先人の叡智の結晶ですねぇ。木曽のお蕎麦屋さんでは師走に入りますと、温かい蕎麦に刻んだ「すんき」をこれでもかっ!と盛った「すんき蕎麦」が出始めます。
皆さまご存知かと思いますが、木曽の御嶽山では9月27日の噴火によって残念ながら多くの被災者が出てしまいました。しかしながら赤カブは噴火の影響もなく「すんき」は今年もおいしく出来上がっているそうです。「すんき汁」を初めて食べた人は、おそらく衝撃的な味でしょう。なんせお味噌汁が酸っぱいんですから。しかしこれがひと口ふた口と食べすすめるうちに、じんわりと旨みが押し寄せてきまして、ついには「また食べたい!」ということに…。
作り方はいたって簡単です。昆布を細かく切って水から煮出します。かくし味にほんの少~し日本酒(または本みりん)を入れます。出汁がふつふつしてきたら味噌を溶き入れ、刻んだ「すんき」を入れたら出来上がりです。あまり煮込まず、煮上がる寸前に入れるか、後でお椀に盛ることをおすすめします。
本来「すんき汁」の具は「すんき」のみですが、もちろん、ふだんのお味噌汁に「すんき」をのせてもまたよいものです。これから忘新年会シーズンでお酒をいただく機会も多いかと思いますが、「すんき」のお味噌汁は二日酔いの朝にもぴったり。シャキッとしますよ~。
***
「すんき汁」
出汁:昆布、日本酒
具材:すんき
吸口:削りかつお
味噌:手前味噌(米麦混合麹)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?