CEFRの中核的な物の見方が論じられているところを抽出しました。ぜひとも、熟読・解釈してみてください。 ※「邦訳」となっているのは、ゲーテインスティテュートの邦訳ページを示していますが、実際の和訳はわたし自身のものです。太字部のみ原典の英語も示しています。
A.言語ユーザー/ラーナー
学習者をユーザー/ラーナーと見ることについては、CEFR(2001)の第2章冒頭の行動中心のアプローチを簡潔に定義的に説明した囲み部分の記述で表明されています。CEFR(2020)でも再掲されている。
言語の行使は言語の学習を伴っています。そんな言語の行使は、人によって遂行される行為となっています。そして同時に、そのように行為を遂行する当人は、個人として、そして社会的主体として、一般的な能力と特にコミュニケーション言語能力を含むさまざまな能力を発達させます 。人は、言語活動に従事するために、さまざまな条件下のさまざまな文脈の下で、そしてさまざまな制約の中で能力を活用します。そして、言語活動には、言語活動で達成するべき課題を遂行するために最も適当と思われるストラテジーを起動させつつ、特定の領域のテーマに関連したテクストを作成したり受け取ったりする言語プロセスが伴います。これらの行動をモニターすることで、言語活動の当事者は能力を強化したり、知識を修正したりすることができます。
(CEFR, 2001, p.9、CEFR, 2020, p.32、筆者訳) Language use, embracing language learning, comprises the actions performed by persons who as individuals and as social agents develop a range of competences, both general and in particular communicative language competences.
(CEFR, 2001, p.9、CEFR, 2020, p…32) B.言語学習と言語行使の社会的性質
授業のレベルでも、行動中心のアプローチを実施することの意味がいくつかあります。学習者を「社会的存在」と見ることは、おそらくは能力記述を学習者とのコミュニケーションの手段として、学習者を学習という活動に従事させることを意味します。また、行動中心のアプローチには、言語の学習と言語の行使は人と人の間で行われるという性質があると認識することを含んでいます。 つまり、学習の過程で社会と個人が相互作用するということです。学習者を言語使用者と見るというのは、授業で広範に目標言語を使用することを意味します。つまり、ただ言語について(教科として)学ぶのではなくむしろ言語を使うことを学ぶのです。(p.30、邦訳p.10)
(CEFR, 2020, p.30、邦訳p.10) It also implies recognising the social nature of language learning and language use, namely the interaction between the social and the individual in the process of learning.
(CEFR, 2020, p.30) C.「実生活」と「現実世界」 ─ real-lifeあるいはreal lifeは、8回出現
real-life tasks、real-life situations, communicative ability in real life, real-life communicative needs, real-life language use, そして、collaborative, task-focused work, which is a daily occurrence in real life ─ real-worldあるいはreal worldは、2回出現。 ※ 「実生活」や「現実生活」の“life”の部分は、“vie”(フランス語)、“Leben”(ドイツ語)、“zizn”(ロシア語)。ヨーロッパ系言語のこれらは、1語で、「生活」「暮らし」「命」「生命」「人生」「生涯」などすべてを表します。
(1) プロトコル1
CEFRの行動中心のアプローチは、言語構造の学習が積み上げ式に進行するシラバスやあらかじめ決められた概念と機能に基づくシラバスから脱却すること、そして、ニーズ分析に基づいて、実生活で実際に遭遇するさまざまな課題の遂行に向け、はっきりとした目的の下に選ばれた概念と機能をめぐって策定されるシラバスに移行することを表明しています。シラバスのこうしたシフトは、学習者がまだ身につけていないものに焦点を当てる「足りないものを足していく」という見方(“deficiency” perspective)ではなく、むしろ、“can-do”記述文を導きとして「できるようになっていく」という見方(“proficiency-perspective” perspective)広めるでしょう。新しいシラバスの考え方は、現実世界でのコミュニケーションの必要性に基づき、実生活で実際に遭遇する諸課題をめぐって組織化し、学習者にねらいをはっきりと伝える「can-do」記述文を用意してカリキュラムやコースをデザインするということです。(CEFR, 2020, p.28、邦訳p.8)
(CEFR, 2020, p.28、邦訳p.8) The CEFR’s action-oriented approach represents a shift away from syllabuses based on a linear progression through language structures, or a pre-determined set of notions and functions, towards syllabuses based on needs analysis, oriented towards real-lifetasks and constructed around purposefully selected notions and functions. This promotes a “proficiency” perspective guided by “can do” descriptors rather than a “deficiency” perspective focusing on what the learners have not yet acquired. The idea is to design curricula and courses based on real-world communicative needs, organised around real-life tasks and accompanied by “can do” descriptors that communicate aims to learners.
(CEFR, 2020, p.28) (2) プロトコル2
CEFRの教育方法についての考えは、言語の学習を学習者が実生活のさまざまな状況で自分の考えを表現しさまざまな課題を遂行して行動できるようにすることに向けるべきだということです。
(CEFR, 2020, p..29、邦訳p.9) The methodological message of the CEFR is that language learning should be directed towards enabling learners to act in real-life situations, expressing themselves and accomplishing tasks of different natures.
(CEFR, 2020, p.29) (3) プロトコル3
どんな観点が採用されるにせよ、教室でのタスクは、CEFR の記述法で挙げられているもののような、現実世界でも起こるようなコミュニケーション言語活動とコミュニケーション言語方略(CEFR 2001 4.4)を含むものでなければならないでしょう。
(CEFR, 2020, p.32、邦訳p.12) No matter what perspective is adopted, it is implicit that tasks in the language classroom should involve communicative language activities and strategies (CEFR 2001 Section 4.4) that also occur in the real world, like those listed in the CEFR descriptive scheme.
(CEFR, 2020, p.32)