オンライン授業と比べた場合の対面授業の日本語習得的な有利さ ─ メルロ=ポンティの身体論的な分析
きのうは、対面授業の初日でした。オンライン授業という「牢獄」から解放されたわたしは、何とも自由自在&伸び伸びと授業を実践しました。ちなみに言うと、わたしの授業のモットーは「言語習得的に豊かで豊穣な授業」です。90分の授業を受けただけでも、学生の日本語技量が豊穣化されるような授業です。文型・文法について「勘案」しつつ、そして、語彙の制約も「勘案」しつつ、です。
*昨日の授業は、「好きなもの・好きなこと」(NEJのユニット3)の再練習(←「復習」という言葉はどうも好きでない! 「再練習」もイマイチですが)という建前でしたが、ここまでの入門期の学習を総再練習するような具合で授業をしました。
そんな授業をした後に、ふと「オンライン授業ではなかなか味わうことができない、この豊かさ、豊穣さ、自由自在さはどこから生まれるのだろうか」と考えました。そのことについて、取りあえず箇条書きで書いてみます。期せずして、メルロ=ポンティの身体論的な分析となりました。バフチンの対話原理の視点も含まれています。
1.基本環境
時空間の共有
↓
イベントベース(五感で感じるすべて)の共有
↓
有機的な活動組成とそれへの参画と活動ユニットとしての一体感
2.活動の組成
(1)すべての活動は活動ユニットとしての一体感の下に行われ展開される。
(2)諸活動の有機的な展開 ─ いずれの活動も、直前の活動を引き受けて展開し、直後の活動を誘発する(cf.バフチンの対話原理)
3.利用可能なメディア
*ホワイトボードにパソコンのPPT画面を投影しながら授業を実施している状況で。
(1) 広義の身体の動き
身体の移動
身体の動き
顔の表情
手差し(指名)、指さし
(2) ホワイトボード上のイメージに関わるアクション
ホワイトボード上のイメージ(ピクチャー、図表、地図、文字などを含む)の投射
特定部分のマウス指しや指さし
特定部分の囲みやマーカー付け(パソコン上でも、ホワイトボード上でも)
特定部分への注釈
引き出し線を使っての関連事項の書き込み(イメージ外へも)
イメージ外書き込みからの更なる関連の展開
(3) 容易に展開可能な対面的な活動
授業進行のマネージメント(距離や位置の取り方を含む)
全身体的な誘導(手差しや指さしや視線などを含む)
表情豊かな声(声の大きさ、声の高さ・低さ、発話の緩急、話し方の緩急などを含む)
声の向き
実物(実物を見せる、操作する)
以上を伴った、言葉を伴った対面的なインターアクション
(4) ホワイトボード上のイメージから立ち上がるトーク
*教師が話す場合でも、一部学生の参画を求める場合でも。
イメージをめぐるトーク
イメージから拡げたトーク
イメージの部分や要素に注目したトーク
イメージを解釈するトーク
イメージに応答するトーク
イメージと教室内のリアルを結びつけたトーク
(5) (3)+(4)及び(3)×(4)
(3)と(4)を複合したインターアクション
(3)と(4)を掛け合わせたインターアクション
(6) 自在な板書
口にした語や表現などの板書
板書した図式化や注記や結びつけなどにサポートされた解説
板書した絵やグラフなどにサポートされた解説
漢字、ひらがな、ローマ字など複数の書記法による語の提示
(7) 身体にサポートされたコミュニケーション
手や身体によるイラストレーションにサポートされたコミュニケーション(「大きい」、「小さい」、「少し」、「ぜんぶ」、「食べました」、「飲みました」など)
手や身体によるイラスト的動的描写にサポートされたコミュニケーション(「先生の部屋に行きました。そして、ドアをノックしました。先生は『どうぞ』と言いました。わたしは、ノブを回してドアを開けました。そうすると、ドアのところに犬がいました。」などを描写しながら話す。)
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