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機械仕掛けの優しさ [ショートショート]

朝、目覚めた瞬間に違和感が走った。腰が痛い。昨日は特に重いものを持った記憶もないのに、鈍い痛みが背中の下部に広がっている。寝違えただけならいいのだけれど。

ゆっくりと身体を起こし、リビングに向かうと、キッチンでロボットが朝食の準備をしていた。白いボディに青いライトが点滅し、淡々とパンを焼きながら「おはようございます」と機械音声で挨拶をする。

「おはよう。ちょっと腰が痛くてね」

そう言うと、ロボットは一瞬動きを止めた。

「分析します」

青いライトが細かく点滅し、数秒後に答えが返ってくる。

「軽度の腰痛が検知されました。原因の一つとして、昨日の座り方が考えられます」

なるほど、確かに昨日はソファに長時間沈み込んでいたかもしれない。思い返せば、姿勢も悪かった。

「温めると楽になるでしょう。ヒーターを作動させますか?」

ロボットの提案に頷くと、彼はスムーズに動き、腰にちょうどいい温度のヒートパッドをそっと当ててくれた。じんわりと温かさが広がり、少し楽になる。

「ありがとう、助かるよ」

「どういたしまして。引き続き、姿勢にご注意ください」

機械仕掛けの声は感情を持たないはずなのに、どこか優しく感じられた。

朝食を終え、少しストレッチをしてみる。痛みは完全には引かないが、ロボットのおかげで随分と楽になった。こうして人間の体調まで気遣ってくれるなんて、便利な時代になったものだ。

部屋の隅で掃除を始めるロボットを見ながら、私は小さく笑った。少しずつ動けば、今日のうちに痛みも和らぐかもしれない。

腰痛も悪いことばかりじゃない。ロボットの優しさを、少しだけ感じられた朝だった。

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