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家庭科室の窓から [ショートショート]

家庭科の授業中、私はミシンの針に糸を通していた。生徒たちは自分たちのユニフォームを縫い直している。ボタンが取れたり、裾がほつれたりと、日常的な修繕だ。窓の外を見ると、隣のビルが完成していた。以前は差し込んでいた日差しが遮られ、教室内は少し薄暗い。


「先生、このボタンの付け方で合っていますか?」と生徒の一人が尋ねる。「ええ、そのままで大丈夫よ」と答える。生徒たちは真剣な表情で作業に取り組んでいる。


教室内の照明が明るく感じられる。日照権のことをふと思い出す。隣のビルの建設で、私たちの教室はもう自然光に恵まれないのだ。エネルギーの節約を考えると、昼間でも照明をつけるのは少し気が引ける。


「今日は少し暗いですね」と別の生徒が言う。「そうね、新しいビルが高くなったからかもしれないわね」と返す。生徒は頷いて、また針に糸を通し始めた。


黒板に目をやると、次の授業のレシピが書いてある。来週は調理実習だ。材料の発注を確認しなければならない。何気ない日々の業務が頭をよぎる。


「先生、この縫い目がおかしい気がします」と別の生徒が声をかける。「見せてごらん。少し糸が緩いみたいね。もう一度やってみましょう」とアドバイスする。


授業が終わり、生徒たちは片付けを始める。窓の外を見ると、空には雲が広がっている。天気も曇りがちで、ますます教室は暗く感じられる。


「照明を消しておいてね」と生徒たちに声をかける。彼女たちは元気よく「はい」と答える。私は次の授業の準備をしながら、今日も特に変わらない一日だと感じた。

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