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法人営業が顧客解像度を高めるために大事な2つのこと

セールスパーソンは「お客様のことを知れ!」とは、一度は言われたことがあるんじゃないでしょうか。人は何かしらの悩みや欲求をもっていて、それを解決したり欲を満たすために購買するわけですから、セールスパーソンは相手がどんな悩みや欲求を持っているのか、詳しく知らなければいけませんよね。

今日は #営業アドベントカレンダー の8日目の担当ということで、セールスで大事な「お客様のことを知る」ために役立ちそうな話を書きたいと思います。興味を持った方はお付き合いください。

はじめに

申し遅れましたが、私、杉本と申します。時間はかかるけれども案件を通じて世界をより豊かにする #ザ法人営業 として、大企業向けの法人営業(エンタープライズ営業)を長くやってきました。私がやっている法人営業がどんな仕事なのか、私が法人営業としてした仕事はどのようなものなのか、詳しく知りたい方は以下の自己紹介をご覧いただければと思います。

営業のノウハウは数多くありますが、私は少しマニアックだけれども大事で役立つことについて今後noteでも書きたいと思いまして、初めてnoteを書いています。

そして、冒頭のとおり、今回はお客様のことを知ること、言い換えると「顧客解像度を高めること」について「より生々しく、顧客の行動を促すために必要なレベルにまで鮮明に」顧客解像度を高めるための2つの心構えを書きたいと思います。

顧客解像度を高めるためのアクション

顧客解像度を高めるアイディアやアクションについては、ちょうど今回の #営業アドベントカレンダー で合同会社セールスリクエストの原さんの記事があがっていたので、そちらも参照してみてください。

この記事では顧客担当者以外から得る情報がメインではありますが、法人営業が自分が担当している顧客の解決すべき課題を把握する方法としては、以下を相互に実施する必要があります。

①顧客担当者以外からの情報
・サイトのIR情報
・業界本や事例記事
・顧客のサービスを調べる(できれば使ってみる)
・顧客の競合のサービスを調べる(できれば使ってみる)
・同業でサービス導入してくれた受注済みの顧客のインタビュー
②顧客担当者から直に課題を聞き出すこと
 商品紹介や仮説提案をもとにお客様に課題を聞き出す
 (※課題を聞き出す方法は長くなりそうなのでまた別の機会に書きます)

簡単に言うと、顧客以外から得る情報収集と、顧客から聞く情報収集ですね。このときに忘れてほしくないことを事例も交えて2つほどお伝えします。

顧客解像度を高めるために大事な2つのこと

まず1つ目から行きましょう。

【その1】現地・現物・現場から全神経をフル稼働させて想像する

「現地・現物・現場」という言葉はお聞きになったことがあるでしょう。実際に現地で現物を観察したり使ってみたりして、現実を把握した上で解決策を図る大切さをいった三現主義のことです。これは新卒時代からどの上司にもベテラン先輩にも口を酸っぱく言われてきました。

「机に腰掛けて仕事をしている気になるな」

新卒時代、私が自社オフィスで資料を作っていると、それをみた部長から「お前はここで何やっているんだ?資料作りはお客様先ですればいい。実際にお客様の近くで見て聞いてこい。自分の机に腰掛けて仕事をしている気になるんじゃない」と言われて、オフィスを追い出される日々でした。最初はお客様と仲良くもないですし、お客様先にも居場所がないので、とりあえずお客様近くにある喫茶店に入って、休憩してたりもしたのですが・・(笑)自分のメンターの先輩はどうしてお客様に信頼されて可愛がられているのか、どうしてお客様はその先輩にだけは色々と課題を打ち明けるのか。自分とメンターの先輩へのお客様の信頼度が違うことを肌で感じるようになり、先輩は圧倒的に顧客の業務にも、向き合っているお客様の担当者がどんな立場で何を考えてどういう嗜好性をもって行動しているのか、誰よりもよくしっているからだと理解しました。机上で考えた仮説だけではだめで、現地・現物・現場で顧客の業務や人間関係を理解したうえで、顧客と同じ目線で、顧客の言葉で、具体的な解決策を提案するところまでしないといけないことを、現場に出て何年かいることで、ようやく心から理解するようになりました。

居酒屋でベテラン銀行員に教わったこと

私が最初に担当した中には製造業の企業で、工場の現場出身で叩き上げのお客様が多くいました。赤の他人で、入社してすぐの青瓢箪のような若造には何も教えてくれず、なかなか信頼して話もしてもらえず、非常に苦しい思いをしていました。そんなときに、上司や先輩と飲みにいったガード下の居酒屋で、たまたま隣に居合わせた銀行員の方が一緒に酒を飲むことになり、そこで面白い話を教えてくれました。

その方は中小企業に融資を行う担当(銀行の法人営業ですね)だったのですが、融資先の経営状況は財務諸表だけではなくて、会社内にある色々なものをみれば、経営状況が良いのか、ヤバい状況なのか(融資を引き上げないといけないのか等)なんとなくわかると言っていたのです。誰とも何もコミュニケーションをしなくても、現場をみるだけでも色々な情報が溢れているということに驚きました。そのときに銀行員に聞いた話をもとに、チェックするべき備品を書いたのが以下のツイートでした。

カレンダーひとつみても色々わかる

例えば、会社が年末の挨拶で配るカレンダー。年末のご挨拶にはカレンダーを持参し、逆に顧客からもカレンダーをお返しにもらいますが、色々な顧客からもらうカレンダーを一通り並べると、景気のいい企業は、CMで使っている有名芸能人をモデルにして限定カレンダーを作ったり、紙の質を豪華にしたり、ちょっとしたところにお金のかけ方が違います。逆に、景気が悪い会社は挨拶に配るカレンダーの本数が減り、カレンダーのノベルティごとなくなることもありました。ノベルティがなくなったのは、ノベルティ自体を無駄だと考える事業責任者が原因だったこともあるので、ノベルティひとつで今や直近の業績を明確に判断できるわけではないですが、少し高いアンテナと、繊細なセンサーを自分の中に持っているだけで、ちょっとした状況の変化に気がつくものだと、若い頃の私は肝に命じるようになりました。

トイレで掴んだ提案のチャンス

私を前からフォローしていただいているフォロワーさんはご存知かもしれないですが、LINE時代に直属の上司としてお世話になった田端さんにお話したら大変面白いと思われたのか、よくツイートいただくこんな受注エピソードがあるので、ご紹介しますね。

こちらはネタのようですが、正真正銘の実話です。

私は若手時代に先程の銀行員の話を聞いてから、色々と観察することが面白くなっていましたが、受付の人たちをそれとなく観察してみるとか、トイレが綺麗かみてみるとか、顧客の商品が売っている店舗があれば店員さんと話をしてみるとか、そういうことが習慣になっていました。

このエピソードの顧客は、建物全体も豪勢な雰囲気で一般受付も立派だったのですが、さらに別に役員専用フロアに受付とトイレがあったのです。特に役員トイレは大理石でつくられたのでしょうか、大変に広いし豪華なつくりだったこともあり、(大変迷惑な話なのですが)頻繁にお手洗いをお借りしていました。ところがある日、用を足したあと、肛門にあたるトイレットペーパーの感触がぞわっと・・・

(※お食事中の方がいたら、本当に申し訳ありません。高級なトイレットペーパーは紙が3層あって綿のようにふわふわでソフトなんです。トイレットペーパーの種類について詳しくなりたい方はコチラをどうぞ)

ちなみに、役員フロアではない一般の従業員トイレは元々普通の2層のトイレットペーパーだったのですが、トイレットペーパーはなんと1層。極めつけは「1回で使うトイレットペーパーはXXセンチまでにしましょう。総務部」と前にはなかった張り紙までありました。

コスト削減があるんじゃないか?と直感したのは、
・自分が働いていた会社でもコスト削減のときには、総務担当が扱うような削減しやすいものからコスト削減の指示が出ていた(コピー用紙の枚数制限など)
・当時は資源高騰のニュースが話題になりつつあり、顧客はまさにその影響を受ける企業だった
などが瞬時につながったからだったのですが、常に「何かの事象が発生したり変化したりしたとしたら、そこには必ず原因がある」というアンテナを貼っていたことが良かったのだと思います。

あとで実際にお客様に聞いてみると、どうやら総務部主導でコピー用紙も含む色々なコスト削減を実際に始めており、その次には電話やシステムのコスト削減がお客様のIT部門に通知されました。それを予感して、電話やVoIP等で通信料のコスト削減の提案をしっかり根回ししていたおかげで、会社として過去の受注ゼロだった顧客から初受注をすることができました。

商談前に少し余裕をもって訪問先に到着して情報収集を楽しむ

こんな成功体験(?)もあって、商談が詰まっていないときには、私は訪問時には少しだけ時間に余裕をもって訪問して、色々と観察する習慣を続けています。トイレットペーパーが変わったみたいな事例は滅多にありませんが、そもそも観察で気がついた情報はお客様とのアイスブレイクで打ち解けるにも役立ちますし、何よりお客様に好感をもっていただけることが多いと感じます。そして、何よりお客様のことを知ることは本当に楽しいです。担当する顧客を好きになるきっかけもこのような習慣が生んでくれているのだと思います。

実は他にもチェックするところはたくさんあって、お客様の服装、表情、部署の机の数など、想像を膨らませられる材料やそれに関するエピソードもあるのですが、キリがないので、また後日のnoteに譲ります。

ここで言いたいことは、自分の目・鼻・耳など五感と全神経を総動員して観察し情報収集し、顧客のことを想像しすることが大切だということです。若干、妄想が入ってもいいと思います。そこで得られる情報は大事ですが、一番大事なのは、想像力を働かせて色々な状況をイメージしておくことで、何かの事象のひとつひとつの点が線となり、いずれストーリーとしてつながるようにすることなのです。

【その2】顧客担当者からのヒアリング結果に「批判的考察」と「人間考察」を交えて考え直してみる

担当顧客の課題解決をするとき、仮説を提示してコミュニケーションしたり、課題を気づかせたりすることもありますが、もっとも一般的なのは顧客自身から課題を聞き出すこと、直接話してもらうことでしょう。話してもらうためにはお客様から一定の期待はされる必要があって、例えば、

  • 提案している商品やサービスが役に立ちそうだ

  • 提案している会社は実績もあるし信頼できる

  • 何より法人営業の人柄がいいよね!

などなど、理由は様々ですが、顧客が課題について話してくれたとします。

顧客に快く課題を話してもらうステップはまた奥が深いですが、今日ここでお話したいのは、あなたが顧客から課題を話してもらったとして、その顧客から聞いた課題は本当ですか?その課題を解決する提案をしたからといって本当に顧客は(さらに言えば貴方が話している窓口の担当者やその上司は)自社の提案を聞き入れて動いてくれるのでしょうか?ということです。

法人営業は提案することで終わらせることなく、契約へ向けて顧客にアクションをしてもらわないといけません。特に大きな企業では、他部署に話して調整したり、合意をしたら役員会議にかけるための資料を作ったり…たくさんのアクションがあり、まずは第一歩目のアクションをしていただく必要があります。その一歩目のアクションをどう動かすか?しかも合意形成にはひとりだけではなくて複数の部署にまたがって動いてもらわないといけません。

この視点で契約までのアクションで捉え直したときに「顧客が商談で教えてくれた課題」で本当に動くのだろうか、を「批判的考察」と「人間観察」を交えて考え直すことで、「真の課題」と「顧客がアクションをしてくれるトリガー」が見えてきます。

顧客が話してくれた課題は「コスト削減」だったけど…

具体例を交えてお話します。

ある大企業の顧客に仮説をたててITソリューションを提案していて、ソリューションの筋も良かったのか、顧客から「課題は◯◯コストの削減です」というコメントも取れました。顧客以外の情報収集をしてみても、新聞にも業界紙にもその課題は書いてあるし、他の競合の顧客提案をしたときにも同様の課題だということもわかりました。よし、課題の特定も間違いなさそうだ。ソリューションを導入したときの費用対効果をシミュレーションして◯◯%の削減ができるし、自分たちの提案を導入したほうが絶対に効果がでると論理的にも明白です。提案と完璧なシミュレーションを顧客に提示しました。しかし、なぜかお客様の反応が悪く、こんなに明確な効果も出るのに案件が一向に進まないのです。

このとき私には「批判的考察」をして他の課題がある可能性を模索することなく、顧客の言っていることだけを信じてしまいました。「顧客の言っている課題は真の課題であるとは限らない」ということをすっかり忘れていました。真の課題でない場合というのは、顧客がその真の課題に気がついていない場合もありますが、このときは、顧客は◯◯コストの削減が課題であることは建前上言わざるを得なかったという業界内の特殊な事情があったのでした。つまり、◯◯コストの削減は導入の助けにはなって間違ってはいないが、顧客を真に動かす課題ではなかったのです。

顧客が口に出して言わなかった真の課題

そのときは幸いにも挽回のチャンスと時間がありました。再度「批判的考察」を加えて、他に真の課題と顧客が動く動機を探るべく、顧客はもちろん他部署や業界に詳しく知見がある人へのインタビュー・オフ会・飲み会・密談を含め、とにかく深く真相を探るコミュニケーションを数多くこなしました。すると、その顧客が感じている真の課題は「創業から大事にしてきたサービス品質が圧倒的に一番ではないこと」であり、顧客を動かすトリガーは「提案されるソリューションが、業界内で顧客のサービス品質が圧倒的一番である状態をつくり、それが大々的にアピールできること。実はコスト削減は二の次でよい」だったのです。正直、客観的にみればその顧客が提供しているサービスはすでにナンバーワンじゃないか!というものだったのですが、顧客自身はそれでは全く満足しておらず、サービス品質が圧倒的に一番でありつづけることへの拘りがあったのでした。それが顧客を動かす最大の要因だということに気づくことが出来たことで、私は彼らがサービス導入したときに告知やPRに協力するという、自社が持っているそのソリューションとは関係ないものをセットで提供するよう調整したことで、一気に案件が動きだし、結果的に数億円レベルではきかないくらいの案件になりました。

顧客担当者が本当に動く理由として考えておくべきこと

上記は会社全体の課題感の話ですが、いま自分が向き合っている担当者さんは何を目的にしているのか、実に人間的な理由を想像して「人間考察」を考えてみることも併せて行うべきです。

目の前にむきあっている人間が行動を起こす理由は、綺麗事ではなくて、非常に人間的な理由で動くことをわすれてはいけないと思います。しょうもないと思われるかもしれませんが、
・成果を出して年収を上げたい
・成果を出して出世したい
・チームやプロジェクトで自分が承認されたい
・できるだけ波風を立てずに楽に仕事をしたい
・早く仕事を終わらせてデートに行きたい
・早く仕事を終わらせて子供を保育園に迎えに行きたい
・みんなが「あっ!」と驚くような面白いことをしたい
など、本当は様々な動機で仕事をしています。当然、いくつか組み合わさっているケースがほとんどですが、行動を促す要因が驚くほど異なることに気がつくはずです。

ちなみに、先程の案件のご担当者様は、みんなが驚くような面白いことをしたいと心から思っている方でしたので、「大々的にこのプロジェクトをPRして世間をあっと言わせましょう!」を合言葉にしたことで、一緒に邁進できたのだろうと思います。

最後に

初noteということで、少し長くなってしまったかもしれませんが、いかがだったでしょうか?

法人営業の中でも、特殊な案件ばかりを経験してきたため、あまり体系的かつ整理されたかたちでは書くことが出来ていないかもしれません。

しかし、私は法人営業をしてきて、いくつかの大きな案件も経験し、大変さも楽しみも感じてきました。

今後はこの体験を少しずつでもnoteに記録して、法人営業の方はもちろん、すべての営業の方、ひいてはあらゆるビジネス活動に携わる方に発信していきます。

Twitterを始めた当初のように、ニッチでマニアックで役立つのかは微妙だけれども、なかなか語られない話を中心に、できることなら面白おかしくエッセイ風に書けたらいいな…と思っております。

今回 #営業アドベントカレンダー の企画をいただき、筆不精の私にnoteを書く機会を与えていただきまして、大変感謝しております。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
これからも発信していきますので、Twitternoteのフォローをよろしくお願いいたします!

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