採用マーケティングで「選ばれる会社」になるには課題ファーストで
こんにちは。採用広報事業をやっているhypex代表の河合幸太です。
今回のテーマは「採用マーケティング」。
hypexの強みである採用マーケティングですが、特化している企業はまだあまり見かけません。しかし僕は、採用難易度が年々上がっていく中で、その重要性と必要性がますます高まると確信しています。
今回は、僕の経験やhypexでの事例を交えつつ、採用マーケティングについて詳しく解説したいと思います。このnoteを読めば、企業の規模や知名度に頼らなくても採用成功を叶えるヒントが得られるはずです。ぜひ最後までご覧いただき、採用業務にお役立てください。
戦略と実行の両輪で進める採用マーケティング
採用マーケティングとは、その名の通り「採用を目的としたマーケティング」。つまり、マーケティングの概念や手法を採用の領域で応用していく、ということです。
採用マーケティングというと、すぐに採用広告やサイト制作の話になりがちですが、そうではありません。会社が認知されてから入社されるまでの各段階で、候補者の気持ちや行動変容を促していくことを指します。
重要なのは、何をやるにしても、採用プロセス全体(ファネル)の中で「どの段階のためにやっているのか」を常に意識することです。
採用マーケティングは、大きく「上流=戦略」と「下流=実行」に分けられます。
上流(戦略):採用ストーリー(誰に何を伝えるか)、候補者体験(いつどのように何を知ってもらうか)を適切に設計する
下流(実行):採用サイトや採用記事・動画、資料、SNS運用、求人原稿、スカウトなど、候補者に対して継続的に情報を伝える
採用活動を進める際、まず重要なのは「誰に何を伝えるか」を明確にすること。しかし、これだけでは企業側の視点に偏ってしまいます。そこで、「候補者にいつどのように何を知ってもらうか」という観点も欠かせません。
候補者にとって必要な(効果的な)情報は、タイミングによって変わります。例えば、認知の段階で細かい職務内容を説明しても効果は薄く、面接の段階で会社の存在を知らせる駅広告を出しても遅すぎます。また、内定後に選考プロセスを説明しても意味がありません。
このように、企業視点と候補者視点の両面からきめ細かく戦略を設計し、具体的なアウトプットの実行につなげるまでが、採用マーケティングの全体像です。
99%の企業は「比較できない強み」を磨くべき
さて、hypexでは採用マーケティングをどう進めているのか、具体的に説明しましょう。
先ほど述べたように、最初に重要なのは「誰に何を伝えるか」。つまり、会社の価値を定義することです。会社の価値(魅力)は、大きく次の2つに分けられます。
比較できる強み:給与、福利厚生、アクセスなど
比較できない強み:企業理念(Mission・Vision)、カルチャー、人材など
採用マーケティングの本質は「会社の中にあるポジションを売る」という考え方にあります。つまり「このポジションで働いていただける方に、年間で数百万円お渡しします」という提案をしているのです。
ただし、同時に複数の会社では働けないため、候補者は取捨選択しなくてはなりません。そうすると、比較できる強みについては、条件がいい方が選ばれるに決まっています。注意したいのは、競合他社だけでなく「今の勤務先」とも比較されるということ。
正直、比較できる強み(特に給与)は、ビジネスモデルによってほぼ決まっています。例えば、M&Aやコンサル、証券などの“稼げる”業界、あるいはテレビ局のように十分な資産収入がある企業は、すでに候補者からの人気を集めていますよね。
問題は、99%の企業が比較できる強みを持っていないという点です。そうした企業では、比較できない強みを整理し、磨き上げ、具体的な施策に落とし込むことが求められます。
比較できない強みに焦点を当てれば、条件の優劣ではなく、候補者が「どの企業に共感できるか」「どこに魅力を感じるか」という話に変わります。
「この会社の理念に共感できる」
「この環境なら居心地がよさそう」
「この人と一緒に働きたい」
このように、候補者の心をしっかり掴めれば、他社がどんな条件を提示しても気持ちは揺らがないでしょう。
そしてアウトプットに関しては、ファネルの各段階で、候補者に適切な情報を届けることが重要です。例えば、次のようなコンテンツを作成していきます。
認知:企業カルチャーに関する一般論
応募:チームやメンバーの紹介
選考:業務に関する具体的な説明
内定:先輩社員の「今ここにいる理由」
hypexの採用マーケティングでは、戦略立案から実行までを一貫して提供していますが、コスパが測りやすいという理由から、実行(アウトプット)部分のみを支援することもあります。しかし、やはり採用成功のためには、全体を綿密に設計する視点が欠かせません。
特に、hypexが最も注力しているのは「候補者体験を重視したアウトプット」です。結局のところ、候補者が実際に目にするのはアウトプットのみ。そこに候補者視点が反映されているかどうかが、成功を左右するといっても過言ではありません。
成功のカギを握る自社理解と、失敗を招く準備不足
採用マーケティングで成功するパターンは、以下の2つを理解している企業です。
自社の価値:誰にとって、何が魅力なのか
自社の課題:何が伝わっていないから、採用できていないのか
例えば、hypexが過去に支援させていただいた、埼玉県にあるアイシン産業さんという製造業の企業があります。
この企業は「粉流体」という、一般にはあまり知られていない分野で事業を展開し、成長を続けています。最初の課題は、専門性の高い事業内容が伝わりにくいことと、製造業特有の「3K(きつい、汚い、危険)」イメージでした。
そこでhypexでは、粉流体という分野の可能性や、実際の職場が非常に新しくクリーンであることを、地域の求職者に向けて分かりやすく伝える戦略を立てました。
例えば、粉の世界が持つ大きな市場性や、空気で粉を送るという技術の面白さを強調。実際のオフィス環境が快適な様子も、視覚的にアピールしました。
結果的に応募者数が増加し、質の高い人材の採用に成功。このように、自社の価値と課題を整理して効果的に伝えることが、採用マーケティングの成功につながるんです。
一方で、採用マーケティングにはよくある失敗パターンもあります。
最も多いのは、アウトプットを急ぎすぎるケースです。戦略を十分練らずに広告を出稿したり、候補者のインサイト(隠れた本音)を理解せずにコンテンツを作ってしまったり。
この背景には、納期や予算の制約による焦りがあるのでしょう。「とりあえず何かやろう」「やりながら探そう」と準備なしに始めてしまうと、失敗しても原因が分からず、適切な検証ができずに終わってしまいます。
余談ですが、プロジェクトへの取り掛かりが早いことにおけるリスクを話している「メガプロジェクトにおける世界の第一人者」でもあるベント・フリウビヤ氏の著書『BIG THINGS』はおすすめです。
もう一つよくある失敗は、候補者目線に欠けるケースです。採用活動ではどうしても自社の「伝えたいこと」に偏りがちで、経営者の言葉が優先されることが多いんですよ。
また、候補者の本音を聞き出せていないこともあります。例えば、選考を途中で辞退した際に「年収が低かった」「あなたの印象が悪かった」とは、なかなか言いませんよね。業務的なやり取りでは、やっぱり表面的な回答しか得られません。
ここを打破するには、候補者との信頼関係を築き、率直な対話ができる環境を作るしかないと思います。タイミングにもよりますが、企業側が「今後の採用活動を改善するために」と誠実に尋ねれば、多くの候補者は本音で回答してくれるはずです。
一方で、マーケティングの視点から見ると「ユーザーの意見は必ずしも正確ではない」という考え方も大切です。表面的なインタビューよりも、実際の行動データを収集していく方がはるかに価値があるでしょう。
どのようなオファーが断られたのか
どの会社と比較して、その会社とはどんな関わりがあったのか
どのコンテンツを読んで、何が印象に残ったのか
これらの観点から、事実と考察に分けて検証することが不可欠です。このアプローチこそ、採用マーケティングらしい取り組みと言えるでしょう。
採用マーケティングは今後さらに求められていく
採用マーケティングの視点を持つ会社は、今後増加していくと予想されます。その背景には、以下のような日本の雇用環境の変化があります。
労働市場の変化:労働人口の減少と転職回数の増加により「惹きつけて離さない」採用が重要になる
労働力の偏り:AIなど技術革新の影響で、職種によって人材の需給バランスが崩れ、柔軟な採用戦略が求められる
企業間競争の激化:経済成長が鈍化してビジネスモデルの差別化が難しくなり「比較できない魅力」が人材獲得を左右する
このような状況を考えると、採用マーケティングの重要性と必要性は今後ますます高まっていくでしょう。自社の価値を整理して戦略を立て、適切な人材に効果的にアプローチしていく――そうした手法が、これからの人材獲得には不可欠となるはずです。
hypexの目指す役割は、採用マーケティングを通じて、価値ある企業が適切に認知され、かつ自社の価値を正確に理解できている状態を作り出すことです。
一方で、情報が多く判断に迷う候補者に対しては、今までにない質の高い情報を提供し、本当にいい会社との出会いを実現することが、僕たちの役目だと考えています。
最後に、採用マーケティングを取り入れたいと考えている方に向けて、最初の一歩としてのアドバイスを。
短期的な取り組みとしては、自社の価値をもう一度定義してみるといいのではないでしょうか。できる範囲で整理し、その中から一つでも求人原稿や媒体に反映させてみてください。
そして長期的には、採用マーケティングをより戦略的な視点で捉えることが重要です。例えば、目の前の採用に高額の紹介料を支払うよりも、自社のブランディングや採用基盤づくりに投資することで、将来的な競争力を高められます。
実際にhypexでは、基本的に外部の媒体やエージェントに頼らず、独自の採用マーケティング戦略で成長してきました。設立から数年の小さな会社でも、自社の価値をしっかりと理解し、それを効果的に伝えることで、採用成功は実現できるのです。
採用マーケティングについてもっと詳しく知りたい方、具体的なお悩みがある方は、ぜひお気軽にご連絡ください!
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