【詩】期末テスト
ぼーっとしていたらぬぼーっと朝がきた。立派な寝癖をたてたまま、ありもしないカメラが自分の顔を映しているのを意識しながら、テストへ向かう。徹夜明けである。決して勉強していた訳ではない。間違えて入ってしまった(そんなことがあるのだ)有料プランがもったいないので気に入ったドラマを1話から最終話までずっと観て肺呼吸をしていたのだった。
上立売通りから飛び出して烏丸通りを斜めに横断する。相国寺の参道にある死にかけの綿埃のような靄と、ちょっと遠くにべったりと寝そべりながら緩く繋がりあった山々をとても素敵だなと思う。振り向いて見上げると寒梅館が硬直していた。ショールより薄い澄んだ朝の大気がその上にかかり、あゝこんにちは嗚呼さやうならと叫びながら車がすれ違う。私は自分の肺呼吸をこの街にあげたくなる。或いは私が好きな訳じゃない嫌いを貰って欲しい。
教室は良心館の2階。階段を昇って右にいって2個目の教室を開けたらやけに太ったむかしの同級生が「ここはいいところだね」と笑って苦しそうに鰓をひくひくさせた。かわいそうなので私の肺をちょっとあげると悪態をつかれた。別によかった。さやうならと言って、私は教室を後にした。テストはお隣だった。
先生が試験開始30分を過ぎたら入室できませんと言うので、いつも開始から29分で入る。今日は29分43秒。にくしみ。縁起でもないが逆に縁起を悪くすることで縁起が良くなってくれないだろうか。
黒板には斜めに設問が3つ書かれていた。
第1問「数学を好きになりなさい」
無理です。
第2問「鎌鼬を捕まえてきなさい」
無理です。
第3問「仏教における懺悔の役割について具体例を挙げつつ300字から500字程度で述べなさい」
あはは。お饅頭の絵で勘弁してください。
お隣の男の子のペンがペンギンに見える
あゝこんにちはこんにちは
斜め前の女の子の消しゴムがメレンゲに見える
嗚呼さやうならさやうなら
こんにちはさやうなら