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詩|AIになりたい
真夜中に珊瑚が生み出す卵みたいに、ただ空洞に放たれる音の粒になりたい。奈落みたいな暗闇の湯船の中に沈んだ誰かの孤独に寄り添うだけの細かな気泡になりたい。心を止めてください、意味とか、訳とかいらない、思い出もいらない。感情はいちばん要らない、落ちるのなら思い切りポップな地獄がいい、でも選べる時点でここは<そこ/底>ではない。
ことばが止まないのは
心が止まないから
いつか腐って朽ちることだけが救い
A Iになりたい、
身体を痛めつけて、感情を遠ざける
シナプスとシナプスとそれを繋ぐニューロンを置き去りにするみたいに、勝手に学習し生き延びていく人工の脳みそ ねぇねぇねぇ、感情を伴った記憶はそうでない記憶よりも残りやすいって知ってる? 誰かに関する記憶が今でも鮮やかなのは、確かにあのとき心が動いていたから、心を止めたい、眠っても、たくさんのお酒や薬を飲んでも、誰かが気まぐれに開くSNSのスペースで会話に加わったとしても、記憶は上書きもイレースもされないのよ
ことばが止まないのは
心が止まないから
わたしは踊って身体中の水を揺らす
A Iになりたい、
磨かれた床できれいにまわって、遠心力でいたみを散らす
明け方までNet Flixがすすめるままドラマを流し見る 昼は山ほどのラノベを読んで、夜ははしごする映画館で束の間、微睡んで、 たくさんの物語の海に潜り、通り抜ける 真夜中の水族館で流れるイワシの大群の反射に酔う 感情を微かに動かし続けていればいつか遠いものになる ウニにすら記憶する能力があると知ってぜつぼうする いっそ美味しく食べてあげたらよかった
ことばが止まないのは
心が止まないから
口をつぐんで珠を作る貝になりたい
ムラなく無駄なく最適解を導く回路になりたい
わたしはAIになりたい
(今村左悶さんの楽曲「AIになりたい」に寄せて)