
セッション定番曲その188:Just Friends
ジャズセッションの人気定番曲。インストでは速いテンポで演奏されることも多いですが、意外に歌詞の内容を知らずに演奏している人も多いので、おさらいしておきましょう。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Chet Baker
1955年録音、これも有名な歌唱/演奏ですね。声を張らない「ダメ男」っぽい感じが歌詞の内容に似合っています。あまり指摘されませんが、実は歌う時のリズム感やタイム感は抜群だと思います。
ポイント2:Charlie Parker
1949年録音、賛否両論あるストリングスとのレコーディングセッション。確かに印象としては「ヌルい演奏やってんな」という感じですが、リラックスしたバードの演奏自体は聴き応えありますね。これはちゃんと「録音物」として遺そうとした意図を感じます。実はストリングスパートも一流揃いだったようです。
ポイント3:Just friends
1931年に書かれた古い曲です。作詞家のSam M. Lewisはこの他にも「Dinah」「For All We Know」「I'm Sitting on Top of the World」「Rock-a-Bye Your Baby with a Dixie Melody」などのポップなヒット曲を手掛けていて、スタンダード化しています。
「ただの友達関係」・・・一体どんなニュアンスなのでしょうか?
Just friends, Lovers no more
Just friends, But not like before
To think of what we've been
And not to kiss again
Seems like pretending
It isn't the ending
「friends」と「lovers」の対比から始まります。
私たちはもうただの「お友達」、最早「恋人同士」じゃない
恋人になる前は「お友達」から始めたけど、もうそこにも戻れない
ずっと色々なことを一緒に乗り越えてやってきたし
いつもキスをしていたのに
これって本当にお別れだったのかな?
Two friends, Drifting apart
Two friends, But one broken heart
We loved we laughed we cried
Then suddenly love died
The story ends
And we're, Just friends
ふたりは「友達」だけど、徐々に離れ離れに
ふたりだけど、傷んだ心はひとつ
あんなに愛し合って、一緒に笑ったり泣いたりしたよね
ある日突然、愛は死んだ
ふたりの物語はもう終わり
もう「ただの友達(以下)」になってしまった
この「friends」はとても悲しい響きですね。
「broken heart」はひとつだけと歌っているので、この歌の主人公がフラれた側でしょうね。未練タラタラですね。「まだ終わりじゃないと思い込みたい」とか言っているし。当時のポピュラーソングとして書かれたので、シンプルな単語だけでちょっと複雑な感情を描写しています。
この歌詞を踏まえて演奏/歌唱するとすると、やたらと賑やかにやるのはちょっと場違いかもしれませんね。
ポイント4:曲の構成
分かりやすいABAC構成です。ちょっと切ないメロディ、メジャーとマイナーをうまく織り交ぜたコード進行。歌う際には歌詞の切れ目と小節の頭がズレているのがポイントです。スラーで繋がれた箇所が緩急をうまく生み出しています。

分析は1分過ぎから
ポイント5:様々なバリュエーションを聴いてみましょう
Pat Martino、1967年録音
スピード感のある演奏。ジャズギターの演奏はスケールをなぞるだけの機械的なものになりがちですが、Pat Martinoのギターはちゃんと歌っています。暖かいハモンドオルガンの音色もいいですね。
Sonny Stitt、1961年録音
滑らかな音色のサックスで歌うように演奏しています。
John Coltrane, Cecil Taylor、1959年録音
煽るピアノとそれに呼応するサックス、トランペット。
Tony Bennett、1961年録音
ゆったりとしたテンポで歌詞を丁寧に歌っています。物語性のある歌が上手いですね。テーマを歌い切ってあっさり終わります。
笠井紀美子, 大野雄二トリオ、1970年ライブ録音
前半はバラードで切ない感じで歌って、途中からテンポを上げてスイングしていきます。最高のライブ。
Eliane Elias、2013年録音
Chet Bakerへのトリビュート盤ということで、抑え気味にあっさり歌っていますが、ピアノは饒舌。
Rachael Price、2008年録音
軽快な演奏にのってあっさり目に歌っています。歌に続くスキャットも軽快。もう別れた相手のことは吹っ切れた?
◼️歌詞
Just friends, Lovers no more
Just friends, But not like before
To think of what we've been
And not to kiss again
Seems like pretending
It isn't the ending
Two friends, Drifting apart
Two friends, But one broken heart
We loved we laughed we cried
Then suddenly love died
The story ends
And we're, Just friends