セッション定番曲その21:I'd Rather Go Blind by Etta James / Beyoncé / Christine McVie, etc.
2コードのスローブルース、女性シンガー向きの定番曲。キーを変えれば男性シンガーにも。ブルースが苦手というジャズ寄りのシンガーさんにもおすすめです。
(歌詞は最下段に掲載)
ポイント1:I would rather go blind
「I would rather」「I'd rather」は中学校で習いましたね。「(何々するよりは)むしろ何々の方がいい」と。ここでは「目が見えなくなってしまった方がいいわ」と歌っています。なぜなら「私のもとを去って他のオンナの所へ行ってしまうのを見るくらいなら」と。演歌っぽい題材ですが、こういう情念って世界共通ですね。「Love is blind(恋は盲目)」というのは恋愛初期の感情ですが、その後ドップリ浸かった時期を経てまた「見たくないものは見えない方がいい」という心境に。
自分を捨てた場面を見なければ、単にオトコが気変わりして去ったのだと諦めることも出来るけど。
ポイント2:the reflection in the glass
When the reflection in the glass that I held to my lips now baby
Revealed the tears that was on my face
ここの歌詞がそれこそ詩的で素敵ですね。
(たぶんお酒を)飲もうと思って掲げたグラスに自分の顔が映って涙が流れているのが見えてしまった、と。ここの箇所は譜割りに対して歌詞がぎっしり詰まっているので、語り口調になるのも印象的。
ポイント3:Baby, baby, baby…
ブルース/ジャズではこの「baby」が大事なフレーズ。これにいかに感情を乗せられるかが歌い手にとっての技量が問われるところです。ちょっと気恥ずかしいですが・・・。
歌詞のシーンによってこれに籠める感情は異なっていて、愛情を籠めた呼び掛けだったり、悲痛な叫びだったり、自分自身の心の中への問い掛けだったり。この曲の中では「捨てられようとしているオンナの悲痛な嘆き/叫び」という感情ですね。それを「感情を露わにして歌う」のか「自虐的にひっそりと歌うのか」・・・表現としては色々可能性があると思います。
ねちこくねちこく歌うとまさにブルース!ですが、ジャズっぽく軽めに歌うとリズムで遊ぶような表現になってスキャットの置き換えに。
ポイント4:2コードブルース
l →llm を延々と繰り返すコード進行で、リズムは6/8のスローブルース。ずっとフワフワと落ち着かない雰囲気が続きます。進行そのものには推進力が無いので、いかに歌と演奏で上げ下げを演出するか、というところ。こういうループ感って古いものでもあるし、新しいものでもあるので、料理の仕方次第で古臭くならない工夫も出来ると思います。
バラード系の曲ってノリがのっぺりしがちなので、歌い方で思い切ってメリハリを付けて、盛り上げるところは盛り上げる、落とすところはきっちり落とす、楽器のソロに渡す時にはどっちで渡すのかを明確にする、とか曲の中での演出を工夫したいところ。そういう共同作業を、お互いにその場の流れを読んで即興で出来るのがジャムセッションの醍醐味ですね。「アドリブ」って個々が即興で何かやるということだけじゃなくて、その場で出来る「アンサンブル」を試みることが面白いところですね。
ブルースといえばブルース、歌い方はR&Bっぽくて、ジャズシンガーの方もバラード曲として歌いやすい曲だと思います。
ポイント5:Etta James
1960-70年代半ば、チェス・レコードに所属してヒットを連発したエタ・ジェイムズ。ブルース、R&B、ポップスなどのバランスを上手く取って歌っていた歌手でした。ドラッグ問題、健康問題などもあり、姿を消していた時期もあって、影響力や後進からの尊敬という面ではアレサなどとは雲泥の差が付いてしまいました。チェス・レコードを舞台にした映画「キャデラック・レコード」ではビヨンセが演じていましたね。
Etta James
Beyoncé
この曲はそのビヨンセの他にもChicken Shack時代からChristine McVie(Christine Perfect)が歌っていたり、男性だとRod Stewartが初期のソロアルバムで歌っていたり、最近だとDua Lipaが歌っていたり、必ずしも声量がある強い声のシンガーばかりがレパートリーにしている訳ではないのが面白いところです。
Christine Perfect
Rod Stewart
Dua Lipa
ポイント6:girl
発音の難しい箇所は特にありませんが、「girl」というのが実はとても難しい単語。「rl」と「r」と「l」が連続して出てきます。その直前の「ir」はこもった音で喉の奥の方で出す感じ、そこからしっかり「l」を、舌先を口の中の上の方にくっ付けて発音します。日本語の「ガール」の明るい音とは全然違いますね。
Something deep down in my soul said, "Cry Girl"
このgirlは自分に対して
When I saw you and that girl, walking out
このgirlは「憎たらしいあのオンナ」
■歌詞
Something told me it was over
When I saw you and her talking
Something deep down in my soul said, "Cry Girl"
When I saw you and that girl, walking out
I would rather, I would rather go blind boy
Than to see you, walk away from me child, and all
So you see, I love you so much
That I don't want to watch you leave me baby
Most of all, I just don't, I just don't want to be free no
I was just, I was just, I was just sitting here thinking
Of your kisses and your warm embrace, yeah
When the reflection in the glass that I held to my lips now baby
Revealed the tears that was on my face, yeah
And baby, baby, I would rather, I would rather be blind boy
Than to see you walk away, see you walk away from me, yeah
Baby, baby, baby, I'd rather be blind now