セッション定番曲その150:What You Won't Do For Love (風のシルエット) by Bobby Caldwell
ファンク/R&Bセッションの定番曲。ループ的なオシャレ進行なので、セッション向きの曲です。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:What You Won't Do For Love
Bobby Caldwellの1978年のデビューアルバムからのヒット曲。アートワークに本人の顔を出さずシルエットだけにして、意図的に白人シンガーであることを隠したのが成功して、米国ではR&Bチャートでもヒットしました。
柔らかで煌びやかなエレピ、柔らかく絡むホーンセクション、意外にファンキーなベース、柔らかい音で録音されたドラム、と1980年代を先取りしているような音作りでした。
ポイント2:Bobby Caldwell
1980年代の日本ではBobby Caldwellのイメージは「青山とかのカフェバーとかで女の子を口説く時のBGMとして流れている甘い曲を歌っているヒト」「夕方〜夜のFMラジオで流れているポップな曲のヒト」という感じでした。硬派な音楽ファンからは「ボビコーとか・・・」とちょっとバカにされていました。分野でいうと「AOR (Adult-oriented rock)」とか「ホワイト・ソウル(ブルーアイド・ソウル)」「アダルト・コンテンポラリー・ミュージック」とか微妙に「本格的なロックやソウル音楽ではない」というレッテルを貼られている状態でした。
一方、米国では前述の作戦も功を奏して、ソウル/R&Bのファンにも受け入れられたようです。ビルボード誌のR&Bチャートの6位まで上がっています。位置付けも「白人だけど黒人のように歌えるソウルシンガー」「いい曲を書く作曲家」という感じ。この曲も多くの黒人シンガー達にカバーされています。
Bobby Caldwellが所属していたレコードレーベルは1980年に倒産してしまっていて、その後の配給やプロモーションがうまくいかない時期もあったようで、米国では「消えてしまった歌手」扱いで、主に作曲家として作品提供が中心。それに対して日本市場では「シティ感覚のおしゃれな音楽」をレコード会社が大プッシュしていたので、レコードも制作〜配給され、プロモーションも行われているという「Big in Japan」な状況でした。
ポイント3:「What You Won't Do For Love 進行」
終始感があまりなくて延々とループしていくようなイメージ。最近の洋楽ではそれが主流ですが、時代を先取りしていたと思います。だからこそ後述のようにサンプリングにも使われているんでしょうね。ジャムセッション向きでもあります。
一般的には「Just The Two Of Us 進行」あるいは「丸サ進行」と呼ばれているコード進行が大人気ですが、それの先駆けとして語られることもあります。
上記は単純化されていますが、実際には分数コードやもっと細かいテンションが入っていますね。リハ無しのジャムセッションの場合には単純化して遊べばよいと思います。
ポイント4:歌詞のポイント
I guess you wonder where I've been
I searched to find a love within
I came back to let you know
Got a thing for you and I can't let go
主人公は恋人のもとを離れて彷徨っていたようです。物理的な話ではなく「心のありよう」を歌っているのでしょうね。
「got a thing for you」は「君に惹かれている」
「let go」は「手放す」「解放する」
だから、自分の心の中を色々と深堀りしていったけど、やっぱり君しかいないんだ、と。
Some people go around the world for love
But they may never find what they dream of
「本当の愛」を求めて世界中を探し回るやつもいるけど、
そんなに簡単には見つからない
だってそれは一番身近なところにあるはずだから
「青い鳥」みたいなもんでしょうか?
What you won't do, do for love
You've tried everything, but you don't give up
In my world, only you
Make me do for love what I would not do
この曲の歌詞の中には「you」が沢山出てきますが、場面によってその意味が変わってくるのがややこしいところです。(異論もあり)
冒頭の
I guess you wonder where I've been
では、まさに「自分が置いてきてしまった相手(恋人)」
I came back to let you know
Got a thing for you and I can't let go
ここの「you」も同じ人です。
ところが
What you won't do, do for love
You've tried everything, but you don't give up
In my world, only you
Make me do for love what I would not do
ここの最初の2行に出てくる「you」は特定の誰かを指しているのではなく「世の中ってそういうものだよね」という表現だと思います。
それに対して後の2行に出てくる「you」はまた「自分がまた惹かれていてヨリを戻したい相手」です。
愛の為なら、普通はやならないことも(僕は)やるよ
あらゆることを試してダメでも、(僕は)諦めないよ
君だからこそ、僕はそんな風になってしまうんだ
ポイント5:カバー
Natalie Cole, Peabo Bryson、1979年録音
かなり「黒っぽい」熱いデュエット。
Intro、1995年録音
テンポを落としたスローファンク。
Phyllis Hyman、1986年録音
Snoh Aalegra、2021年録音
Victor Wooten、1997年録音
ファンキーなインスト演奏。
Elise Trouw、2018年録音
Foo Fighters「Everlong」とのマッシュアップ。世の中にはとんでもない才能の人がいますね・・・
レゲエ・アレンジ
ポイント6:Bobby Caldwellをサンプリングした例
Bobby Caldwellの曲は意外に多くのHip-Hop系のアーティストにサンプリングされています。切り取ってもちょうどいいグルーヴ感の曲が多いからでしょうね。
2Pac「Do For Love」
2Pac「Heaven Ain't Hard 2 Find」
Common「The Light」
The Notorious B.I.G.「Sky's The Limit」
◼️歌詞
I guess you wonder where I've been
I searched to find a love within
I came back to let you know
Got a thing for you and I can't let go
My friends wonder what is wrong with me
Well, I'm in a daze from your love, you see
I came back to let you know
Got a thing for you and I can't let it go
Some people go around the world for love
But they may never find what they dream of
What you won't do, do for love
You've tried everything, but you don't give up
In my world, only you
Make me do for love what I would not do
My friends wonder what is wrong with me
Well, I'm in a daze from your love, you see
I came back to let you know
Got a thing for you and I can't let go
And though I only want the best, it's true
I can't believe the things I do for you
What you won't do, do for love
You've tried everything, but you won't give up
In my world, only you
Make me do for love what I would not do
Make me do for love what I would not do
Make me do for love what I would not do
Make me do for love what I would not do