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セッション定番曲その175:The Gentle Rain (Chuva Delicada) by Luiz Bonfá

ボサノバ/ジャズ(ボーカル)セッションの定番曲。ちょっと歌謡曲的な覚えやすいメロディの曲です。優しく降る雨をイメージして歌いましょう。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Astrud Gilberto

この曲が書かれた1965年に録音され、この曲のイメージを決定付けたバージョンです。この曲が発表された直後に色々なミュージシャンが取り上げていることから、いかに人気曲だったのか分かります。

Astrud Gilbertoは例によって、感情を押し殺して脱力したヘタウマ・ボーカル。それが儚さを感じさせます。これは彼女の個性なので、安易に真似すると泥沼に嵌ります。

こういうボサノバ系の曲を歌う際、彼女のように囁くような声で楽器の音に埋没するように歌う人も多いですが、それだけがボサノバではないので、色々な表現に挑戦しましょう。


ポイント2:Stacey Kent

こちらは2007年の現代的な録音。ちゃんと芯のある声で歌っているのが好感が持てます。


ポイント3:Luiz Bonfá

作曲者のLuiz Bonfáによるギター演奏。いかにも映画音楽という感じではあります。映画はNYからリオデジャネイロに移り住んだ米国人女性の悲恋を描いたものらしいです。映画の中のどんな場面で使われているのか分かりませんが、ブラジルらしいエキゾチックさと哀愁を感じさせるメロディですね。


ポイント4:歌詞の内容

歌詞の中に「」が出てくる場合、様々な役割を演じますよね。
・心の中で流している涙の象徴
・実際に流している涙を流して隠してくれる役割
・無心だった子供の頃の思い出
・(外出を阻んで)ふたりを引き離してしまう存在
・周囲から隠してくれて、ふたりの距離を縮めてくれる存在
などなど

We both are lost and alone in the world
Walk with me in the gentle rain
Don't be afraid, I've a hand for your hand
And I will be your love for a while

ここでは雨は「ふたりの距離を縮めてくれる」役目を果たしているようです。何か事情があって、このふたりは周囲とはうまくいっていない様子。交際を反対されているのかもしれません(映画の中では男性は過去の事故で失ったGFを忘れられず、言葉を発することが出来なくなっている描写があるようです)。だから「この優しく降る小雨の中を一緒に散歩しよう、手を繋いで」と呼びかけています。雨は周囲からふたりを隠してくれるシールドみたいな役割なのかもしれません。

歌う際には「the gentle rain」の「the」は強調せずに軽く発音するのがよいと思います。意味が変わってしまうので。

I will be your love for a while
この「love」は「恋人」という意味です。でも、せっかく付き合おうと言っているのに、わざわざ「for a while(しばらくの間)」と付け加えているのが気になります。本気じゃないみたいに聞こえますが、まだ相手の気持ちが分からない段階で「もしも良ければ」と予防線を張っているのかも。

I feel your tears, as they fall on my cheek
They are warm like the gentle rain
Come little one, you've got me in the world
And our love will be sweet, very sweet
Like the gentle rain

ここでは相手が流す涙と自分の顔に降り掛かる小雨のイメージが重なっています。「暖かい雨だ、嫌じゃないよ」と。

日本は四季の中で雨が果たす役割も変わっていきますし、雨に関連する季語や諺とかも沢山ありますが、リオデジャネイロとかだと年間通して温暖で、特に春から秋にかけては小雨とかもそんなに気にならないのでしょうかね。


ポイント5:曲の構成

16小節のAパート2回に6小節のエンディングパートが付く変則的な構成です。実際にはラストテーマにはさらに長いエンディングパート付く場合もあります。演奏/歌唱するキーは様々ですね。

リードシート例

上記は一番簡略化されたリードシートの例です。


ポイント6:様々なバリュエーションを聴いてみましょう。

Ramsey Lewis、1966年録音
映画音楽ばかりを集めたアルバムから


Art Farmer
、1972年録音
Art Farmerの柔らかい音色がこの曲にピッタリですね


Toots Thielemans、1975年録音
このハーモニカの音色もいいですね、アドリブが盛り上がったところでフェードアウト。


Eddie Higgins Trio、2011年録音


Tony Bennett、1966年録音
バラードとして。こういう気取らない歌い方がTony Bennetには似合います。


Diana Krall、1997年録音
彼女のちょっとクールな声で歌っているのも似合いますね。


Emilie-Claire Barlow、2003年録音
ボサノバ歌手にはない表現の幅があるのがジャズ歌手らしいですね。


Sarah McKenzie
、2023年録音
クレジットを見ると彼女自身がアレンジを行なっているようです。


◼️歌詞


We both are lost and alone in the world
Walk with me in the gentle rain
Don't be afraid, I've a hand for your hand
And I will be your love for a while

I feel your tears, as they fall on my cheek
They are warm like the gentle rain
Come little one, you've got me in the world
And our love will be sweet, very sweet

Come little one, you've got me in the world
And our love will be sweet
Very sweet, very sad
Like the gentle rain



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