セッション定番曲その101: You Are The Sunshine Of My Life by Stevie Wonder
歌ものセッション定番曲。みんなでメロウなグルーヴを共有したいならこの曲ですね。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Stevie Wonder, Talking Book
1972年に発表された名盤「Talking Book」、ファンキーな「Superstition」が人気ですが、それはもともとJeff Beckへの提供を前提に書かれた曲なので、この時期のStevie Wonderの真骨頂はこっちの曲なのかもしれません。
歌詞的にも曲調的にも、この「You Are The Sunshine Of My Life」は穏やかな愛に溢れたメロウな作品。「メロウ」をただ「緩い」と勘違いしている人もいますが、ちゃんと心地よく引き締まったグルーヴがあってはじめて成り立つもの。演奏する人も歌う人もそれを心掛ける必要があります。歌詞の一行一行も、曲全体としても、共通意識としてのグルーヴを。
ポイント2:原曲のアレンジ
・この時期のStevieはドラムも自分で叩いていて、シンプルなリズムキープに徹していますが、そこにスタジオミュージシャンのパーカッション(コンガ)が加わることによって絶妙に気持ちいいリズムが生まれています。
・中核になる楽器はStevieが弾くエレピ(フェンダー・ローズ)のとろけるような甘い音。あえて他のキーボード音を重ねずにシンプルな音作りに。ちゃんとアタック感もあるので、ベースとうまく絡んでいます。
・出だしの歌を2人のバッキングボーカリストに任せて、StevieはBメロから登場します。最初聴いた時は「あれっ?」と思いますよね。
・バッキングボーカルの存在感もすごくあります。後半はアフリカンパーカッションっぽい音を出したり、Stevieとの掛け合いもあったり。
・後半にかけてパーカッションの音数が増えて、曲のテンポは維持しながらもスピード感が上がっていきます。
3分足らずの曲の中にこんな展開が盛り込まれていて、この時期のStevieの「やる気」をすごく感じますね。
曲全体としてはメロウな印象ですが、アレンジによってはファンキーに展開させることも出来そうです。
ポイント3:You are the sunshine of my life
You are the sunshine of my life
That's why I'll always be around
目の見えない(光を感じられない)Stevieが書く歌詞だからこそ、特別な意味がありますね。自分を照らしてくれる、自分が進む道を照らしてくれる、太陽光。Stevieが実際に感じるのは「明るさ」ではなく「温度」なのかもしれません。僕はその暖かさを感じる場所にいつもいるよ、と。
You are the apple of my eye
Forever, you'll stay in my heart
「the apple of the eye」はもともと「瞳孔」という意味ですが、「You are the apple of my eye」というフレーズは「自分によって何よりも大切な人」というニュアンスで使われます。
シンプルな単語の組み合わせや使い古された表現でも、歌詞全体の流れでユニークさを出せるのが全盛期のStevieらしさですね。
And if I thought our love was ending
I'd find myself drowning in my own tears
「drown in my own tears」「自分の涙の洪水で溺れてしまう」というのもなんだか古臭い表現ではあります。実はこのあたりが当時多くのジャズ畑の人達にカバーされた要因かもしれません(後述)。
I feel like this is the beginning
Though I've loved you for a million years
And if I thought our love was ending
I'd find myself drowning in my own tears
これも古典的ですが「beginning」と「ending」、「years」と「tears」は韻を踏んでいます。他の箇所には見当たらないので、何故ここだけそうしたのかは謎ですが。
歌われているのは当時の妻であったSyreeta Wright、後に「哀しみの恋人達 (Cause We've Ended As Lovers)」を歌っています。
ポイント4:イントロ
イントロは通称「鉄腕アトムのアレ」とも言われるホールトーン・スケールです。この箇所にしか出てこないので、取ってつけたような感じはしますが、印象的ですよね。確かにラジオなどで流れる時に「おっ!」と感じますよね。お遊びとしては簡単な割に効果的。
ポイント5:カバー(イけてないパターン)
前述のように1970年代、方向性に迷いが出ていたジャズシンガー達によって多くカバーされました。
Ella Fitzgerald
Frank Sinatra
Perry Como
個人的な感想ですが、いずれもこの曲の本質を理解しないまま、「古い器」に無理矢理盛ってしまった印象。歌詞的にはスタンダードジャズに通じる表現もあるので、自分のものに出来ると思って選曲したのかもしれませんが、どれも「メロウ」というよりは「モッタリ」した感じです。
Ella Fitzgeraldはボサノバの文脈で解釈して自由に歌っていて、さすがに上手いですが。彼女の責任というよりはTommy Flanagan Trioの限界かもしれませんが。
ポイント6:バリュエーション
Cold Blood、1973年録音
米国西海岸のブラスロック・バンドによるカバー。ファンキーな曲も得意なバンド&ボーカリストなので、こういうメロウな曲もちゃんとグルーヴを感じるアレンジになっています。後半はどんどん盛り上がっていき、ラテンっぽくなっていきます。これはおすすめです。
Macy Gray、2012年録音
「Talking Book」を丸ごとカバーしたアルバムです。割とストレートなカバーですが、彼女の歌声は好みの分かれるところかも。
Matt dusk & Karen Aoki、2015年録音
この時期になってもジャズ畑の人達は「ボサノバの曲」として歌うのがしっくりくるようです。
Sarah Àlainn、2015年録音
Stevie Wonder、1974年ライブ録音
自由自在・・・
◼️歌詞
[Jim Gilstrap & Lani Groves]
You are the sunshine of my life
That's why I'll always be around
You are the apple of my eye
Forever, you'll stay in my heart
[Stevie Wonder]
I feel like this is the beginning
Though I've loved you for a million years
And if I thought our love was ending
I'd find myself drowning in my own tears, woah
You are the sunshine of my life, yeah
That's why I'll always stay around
You are the apple of my eye
Forever, you'll stay in my heart
You must have known that I was lonely
Because you came to my rescue, ooh
And I know that this must be heaven
How could so much love be inside of you, woah?
You are the sunshine of my life, yeah
That's why I'll always stay around, mmm
You are the apple of my eye
Forever, you'll stay in my heart, yeah
You are my sunshine of my life, oh, yeah