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『フォールガイ』:職人仕事にひたる多幸感

『The Fall Guy』★★★★。
IMDb | Rotten Tomatoes | Metacritic
公開日:2024年5月3日(金)(北米)
公開日:2024年8月16日(金)(日本)

今年に入って、好きになっていいアクション映画の筆頭にあげたい。大味な90年代アクション映画へのオマージュ、スタントマンと裏方スタッフへのリスペクトに、相性もパフォーマンスもキレッキレの主演陣。

これだけ直線的なプレミスに$120M(現為替で183億円あまり)もの制作費を正当化できるのは、デヴィッド・リーチ監督(『ブレット・トレイン』『デッド・プール2』『アトミック・ブロンド』)くらいのもの。

そこへライアン・ゴズリングとエミリー・ブラントを迎えてラブコメをやるとなったら、スタジオにとっては安牌もいいところ。派手で華やかなアクションはお約束。『ブレット・トレイン』では舞台が日本ということでシラけ気味だったユーモアも、舞台変われば好感度も変わる。

「スタントマンが事件に巻き込まれる」という下地と、悪ふざけ感たっぷりな恋愛劇の脚本のマッチングが良し。丁々発止の掛け合いに加え、長回しも存分に見せる巧みな演出が、コルト・シーバース(ゴズリング)とジョディ・モレノ(ブラント)の恋模様を可愛らしく彩る。

そこでベタベタに職場恋愛をしまくる2人が、とにかくいじらしい…。いい大人がまっすぐな恋愛をする姿には好みが分かれても、この2人なら見てあげたいと思うシチュエーション。

余談だが、リーチ監督作品では大概悪役や胸くその悪いライバルを演じがちなアーロン・テイラー=ジョンソンが、次のジェームス・ボンド役に内定しているというウワサはどう捉えれば良いのか…。案外、ひょうきんな007になるのかも。

さて本編へ。

冒頭で物語のきっかけとなる事件(= inciting incident)が起きるまでをワンショットで撮り切るのも、絵作りへのこだわりが活きてる。シーバーを2chに切り替えて込み入った会話をするとか、撮影現場あるあるを詰め込んでいるのがまた楽しい。

トーンも、ド派手なカーチェイス中にフィル・コリンズのAgaint All Odds (Take a Look at Me Now)をカラオケのシーンとかぶせて流すとか、90年代推しなオヤジ世代のベタさがポイント。ハイになりながら戦うノリをCGエフェクトたっぷりに描くのも、かかるお金ばかり気になったりはするが…しっかり笑える。

タイトルの「Fall Guy = 落ちる男」とは、看板俳優のために黒子に徹するスタントマンの二つ名であり、単純に「人生」も「仕事」も「落ちた」男とを掛け合わせる。プロットを膨らませる要素のほとんどが映画の撮影現場と紐付いているのことに、現場愛を感じる。

初週の興行では北米国内で若干苦戦しており、今後の口コミに頼るしかなさそう。

でも、人が何かを作る過程を、楽しむのを見る楽しさ、がある。それを巨額の制作費でスタッフにお金を返しながら描いているのは、贅沢で好ましい仕事の仕方。

作り手が放つ多幸感は斜に構えずに受け取ろう。多少盛りすぎな展開にはなるが、性根の良さが魅力の一本。

(鑑賞日:2024年5月3日 20:00〜@Regal Cinemas Irvine Spectrum)

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