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『終わらない週末』:終わった気がしない結末
『Leave the World Behind』(2023)★★☆・。
公開日:2023年11月22日(全世界)
IMDB | Rotten Tomatoes | Wikipedia
演出的にも技術的にも印象深いけれど寸止まりな印象を待つのは、明確には回収しきらない伏線もあるからだろう。その代わり、終幕後の展開を想像させるような余韻は残る。
民泊サイトを利用して郊外の豪華な一軒家を借りた白人家族と、その家を貸したはずなのに戻ってきてひと部屋返せ、とのたまう家主とその娘を名乗る黒人親娘。ふた家族がひとつ屋根の下で、世界がゆっくりと崩壊に向かう様子を体験するサスペンス・スリラー。
いわゆる世界崩壊系の物語でも、原因が定かでなく、隔絶された者たちにより謎が少しずつ判明していく展開。物語映画としては初のオバマ元大統領夫妻によるプロデュース作品ということで、国難にまつわる設定には専門家としての修正や指摘も入っているのだそう。
国が存亡の危機に至る様子を、あくまでこの両家族から輪を広げずに描く。ルマーン・アラムによる同名小説が原作で「Mr.ロボット」のクリエイター、サム・エスメイル監督作。
巨大貨物船の下り,耳をつんざく音、謎の電波障害などの現象がジワジワと不可解さを増していく演出が良い。加えて、人種の異なる見ず知らずの2家族がバチバチと牽制し合う葛藤が見どころ。ショック先行でない、凝りに凝ったカメラワークがそこここで仕込まれているのにも驚かされる。また、アメリカではいまも好感度マックスの女優、ジュリア・ロバーツをして人種差別主義者まがいのヒステリックな現代人キャラを演じさせるとは、度胸がいる。その相手役となるイーサン・ホークと、突然の来訪者役を演じるマハーシャラ・アリの存在感も抜群。監督とスター俳優たちとの信頼関係が厚いことが窺い知れる。
しかしこの配役、必ずしもプロットと噛み合っていない。マハーシャラが紳士すぎて疑えず、イーサン・ホークがいい人すぎて嫌えず、ジュリアが上品すぎてレイシストとは思い切れず、筋書きの狙いに引っかかれない。大人側はみな疑心暗鬼になるには、生来の暗部が少ない。
白人の子供たちにも、共感できるほどのアークがない。兄は終始携帯の電波を探していて、若者らしいことこの上ない。ただ、成長しない様子を見ているのが少々ツラい。マイハラ・ハロルドが演じるマハーシャラの娘役の突っ張り度合いは、嫌いになる手前までいくが、理解は可能か。一方、白人家族の妹がハマっている「フレンズ」が作中で担う役割が、意外と大きいことに驚く。世界崩壊後の精神安定剤としての「ありそうでなかった作り話」の重要性はよくわかるのだけど。
そうしたキャラクターたちへのユルめな因果応報と、拾いきらない布石の置き方が狙いどころ。流行りに乗り遅れたときの気まずい焦りや、集団移動の際に置いていかれたときの妙な恐怖感を味わえる一本であることは確かだ。
(鑑賞日:2023年12月13日 @Netflix)