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mofi|映画・答え合わせ

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ハリウッド映画を中心に、新旧の映画の構造や効果を「答え合わせ」します。
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#小原康平

『カメラを止めるな!』 忍耐の先に待つペイオフの充足感

『カメラを止めるな!』 忍耐の先に待つペイオフの充足感

『One Cut of the Dead』★★★☆。(4ツ星満点中、3ツ星半。)

監督および俳優養成スクール・ENBUゼミナール製作の長編作品が、単館上映で連日満員御礼という異例の人気を取得。口コミで公開館数が広がり、300万円未満で製作されたと言われる映画が億単位の興行収入を叩き出している。週刊誌で「盗作」の疑惑が持ち上がったものの、読み込めば「クレジット表記」の協議を要しているだけの模様。も

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『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が食い荒らす名作の遺産

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が食い荒らす名作の遺産

『Jurassic World: Fallen Kingdom』★・・・。(4ツ星満点中、1ツ星。)

作品性と採算性が一致しないケースは、驚くほど多い。かつての名作ブロックバスターの「遺伝子組み換え作品:第二弾」とも言うべき「炎の王国」は、興行的成功とは裏腹な完成度を見るに、その顕著な例だと言っておくのが正解。

「作品単体への課金」という常識さえも覆りつつある現代。ともすれば映画興行のあり方を

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『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』が乗り出すフランチャイズの荒波

『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』が乗り出すフランチャイズの荒波

『Solo: A Star Wars Story』★★★☆。(4ツ星満点中、3ツ星半。)

ミレニアム・ファルコン号の旅路は波乱含みだ。監督交代劇、プロモーションの盗作疑惑、そしてアメリカ国内での興行不振が大作フランチャイズに苦難を強いる。ところが、作品そのものには輝く原石が。『レイダース』の冒険と主人公像を連想させるハイスト・ムービーは、世間の評判に反して上々の完成度。

ディズニー傘下となった

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『犬ヶ島』の職人芸的ストーリーテリング

『犬ヶ島』の職人芸的ストーリーテリング

『Isle of Dogs』★★★★。(4ツ星満点中、4ツ星。)

これ以上ないほど「アンダーソン節」に満ちたストップモーション・アニメーション最新作は、同監督のファンでなくとも必見。その上で、物語の人種的な偏りに過剰反応する声があることは心に留め置くべき賛否混在の一本。結果的に看過しても良いのだけれど。

ウェス・アンダーソン監督の最新作『犬ヶ島』は、英語圏のプレス回りで二分した評価を受けている

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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は劇場娯楽・過渡期の象徴

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は劇場娯楽・過渡期の象徴

ルール:「答え合わせ」は「作品」と「個人」を切り離してます。話すのは前者についてのみ。後者への批判は目的になし、です。

『Avengers: Infinity War』★★★・・。(4ツ星満点中、3ツ星。)

[物語]
地球に、スーパーヒーローたちが束にならなければ太刀打ちできない絶対悪が迫っているー。未知なる人類の危機に、英雄たちが集う。

[答え合わせ]「インフィニティ・ウォー」は、演出面と

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『レディ・プレイヤー1』という、マーケティング的オーバードーズ作品

『レディ・プレイヤー1』という、マーケティング的オーバードーズ作品

『Ready Player One』★★・・。(4ツ星満点中、2ツ星。)

ルール:「答え合わせ」は「作品」と「個人」を切り離します。話すのは前者についてのみ。後者への批判は目的にないです。

2011年に出版された同名の原作を、スティーブン・スピルバーグが監督・プロデュース。日本発のアニメやゲームを含む80年代のポップカルチャーをふんだんに盛り込み、2045年の近未来人たちが唯一自由を享受できる

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