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型(かた)

僕は訪問営業をやらない。
具体的には、飲食店へ突撃してまで酒の売り込みをやらないという事だ。

7年前、心ある造り手からお酒をお取り扱いさせていただけるようになってから、とにかくがむしゃらに営業していた時期がある。

惚れ込んだ酒の蔵元とのお取引きが叶ったとて、結局のところ、エンドユーザーの方々にしっかり売っていかなければ、酒屋にも蔵元にもお金が入っていかない。健全なパートナー関係を続けていくには「売る」事は大切なのだ。

一方で、もちろんただ売ればよいというわけではなく、造れる量が限られている小さな蔵のお酒だからこそ、酒屋には心ある飲み手の方々丁寧にに繋ぐ責務があると思っているし、むしろこっちの方が大切だと思っている。



"美しくたくさん売る"



つまりはこれが僕が酒販店として目指している事の一つである。正直のところ実力的にはまだまだであるが、とにかく目指している。

しかしながら、専門店になりたての7年前は、はっきり言って、美しさからはかけ離れていた。


実際に造り手に会い、信頼関係の下お取引きさせてもらっているわけなので、とにかく酒を見るたびに造り手の顔が浮かぶ。顔が浮かぶというのは基本的にはポジティブな側面が多いのだが、もちろん酒が売れない場合にも顔が浮かぶのだ。

売れない時には造り手に申し訳が立たないので、その度に何かしなければと行動に駆り立てられる日々である(今でも)。

当時は安定した販路を開拓していくには、やはりBtoB 、つまりは飲食店さんへの販売であると考えた。

考えると即行動だった私は、とにかく突撃で飲食店さんを訪問しては自分が好きな酒を紹介してまわった。ほとんどの場合には、興味なさげにとりあえずは話しを聞いてもらったり、門前払いされたりする。

そもそも酒に興味のない店主がやっているお店(悪意がある表現ですみません)からは、いわゆる有名の酒の名を出されて、それが入るならとってやるというような事を言われる始末だった。

こちらとしては、そもそも有名だとか有名でないとか、そういう低い次元で酒を飲んでいないし選んでいない。腹立たしい経験もしつつ、中には話しを前向きに聞いてくれる店主もいた。

「兄ちゃんがそこまで言うんやったら扱ってあげてもいいよ」そう言われた。

ただ、ここポイントなのだが、そもそも「扱ってあげてもいいよ」で扱ってほしいような酒ではないのだ。

しかし、当時はとにかく売らなければとがむしゃらに行動していた時期だった事や、店主の人柄自体はよかったりしたので、結局その飲食店さんに酒を卸す事になった。結果はもちろん目に見えている。全く酒が動かないのだ。

当時、経験も考えも覚悟も浅かった僕は飲食店さんのメニューにオンリストされれば、酒は動いていくものと勝手に思い込んでしまっていたのだ。

実際にはメニューに入った位では酒は動かない。行動してみてそこで初めて自分の行動が見当違いだった事がわかった。悔しくて仕方がなったが、だとしたら何をしたら効果的なのかという事はまだわからなかった。

とにかく自分のできる事を積み重ねていくしかないと思い、Instagramと facebookで酒の紹介だけは丁寧に投稿し続けていこうと思い立った。

何ヶ月も続けていくと、少しずつではあるが、Instagramを見たというお客さんが店頭に足を運んでいただけるようになってきた。

中には飲食店の店主も遠くからはるばる足を運んでもらえるようになってきた。僕の売っていた酒に興味を持ってくれて、店で扱いたいと言ってもらえたのだ。がむしゃらに動き、いとも簡単に門前払いされていた過去の自分が頭に浮かび、本当に嬉しかった事を今でも記憶している。

飲食店の店主が酒を持ち帰ってもらったその後、びっくりするほど酒が動いていった。


これだ!!!


仕入れた酒を飲食店さんが受動的に扱うのと、能動的に扱うのとでは天と地ほどの差がある。冷静に考えると当たり前の事であるが、それすらも念頭になかったほど当時の僕の考えは浅はかだったのだ。


引き続きInstagramとFacebookへは当時一日一投稿はするようにしていた。それと同時に、来てくださったお客さんが他のお客さんに店の事をしゃべってもらえるように一生懸命に接客をした。

その活動の積み重ねと、何より多くのお客さんに口コミをいただいたおかげで今がある。本当に感謝です。

自分に確実にできる事を日々着実に積み重ねていく。地道な事であるが、僕にとってはこれが一番の最短ルートであるという事を、今となっては強く認識している。


チャンスはいつ訪れるかわからない。そのチャンスをものにする為に"準備"を大切にする。

僕にとっての店舗運営は、準備が「99%」である。(ちなみに残り1%は運)

例えば、現場での臨機応変さだったり、いわゆるアドリブ的なものというのは、結局のところ経験から導き出すアクションであり、それは準備の中の一種であると僕自身は思っている。


少しでも風が吹いたら、いつでも前に進める状態になっている事、そこに全集中する。




"帆を上げて待つ"




これが僕なりの"型"だ。

なんて言いたいが正直まだまだなので頑張っていきたい。本当に。

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