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指宿の土地と自然が育む絆のスピリッツ

鹿児島県指宿市に蔵を構える大山甚七商店さんからお誘いをいただき、ラムの原料であるサトウキビの収穫と、搾汁したてのサトウキビジュースを使った「アグリコールラム」の製造のお手伝いをさせていただきました。

この催しは大山さんが鹿児島の一大産業であるサトウキビの魅力、サトウキビを育てる生産者の方々、そしてそこから生まれるラムの魅力を知ってほしいと2023年から取り組まれているものになります。

全国各地から招待を受けた全国の飲食店さん、酒販店さん、その他関係者さんなどが集まって実施されます。スタートが朝早い事もあり、ご遠方から参加の方は前入りが必要で、打ち上げも考えると後泊も必要という事もあり、言わずもがな皆さん大山甚七商店愛に溢れる素敵な飲食店さん、酒販店さんたちで、終始和やかな雰囲気で学びあるひと時でございました。

今回感じた事は、何といっても「指宿という土地が育むサトウキビの美味しさ」そして「大山甚七商店さんと生産者さんとの深い絆」です。

自然農法サトウキビの生産者「うんまか糖」代表の田中さんは、歳をとるごとに仲間同士との会話が「昔話し」ばかりになっていたところ、大山甚七商店の代表の陽平さんとの出会いがきっかけで「未来の話し」をする機会ができた。と仰っていました。

また、うんまか糖の皆さんは本当に生き生きとした眼で、サトウキビの生育の事や、収穫のいろはについて、その後の搾汁方法や、砂糖への加工について、我々に伝えて下さったのがとても印象的でした。

ちなみに沖縄や奄美でも知られるサトウキビ栽培。サトウキビは寒さに弱いので寒い地域ではうまく生育ができません。温泉地で知られる指宿(いぶすき)は地熱が高いのでサトウキビの生育に向いているのです。まさに、「火山の国薩摩のテロワール」。

今回はそんな指宿が育む絆のスピリッツについて、詳しくご紹介したいと思います。

畑に入り立派に育ったサトウキビを収穫していきます。うんまか糖さんでは、この畑以外にもいくつかのサトウキビ畑を管理されていて、栽培をはじめられた30年前から、全てを自然農で栽培されています。

個人的に驚いたのは、ほとんど雑草が生えていなかった事です。うんまか糖の農家の方に、手作業でまめに雑草を抜いておられるのか質問させていただところ、雑草はほとんど生えてこないのだとか。

以前、別の自然農をされている農家さんに聞いた事があるのですが、長年自然農をしている畑では、もともとその地に根付いた雑草しか生えてこなくなるとの事でした。この畑もきっとそのような環境なのだろうと想像しました。

収穫後に土の上に残ったサトウキビの葉なども自然のカーペットになり、翌年のサトウキビの生育にもプラスにはたらきます。

真っ当な循環が生まれている畑で立派に育ったサトウキビ。そのサトウキビを使って、想いのある蒸溜家たちが生み出すラム。
飲む前から間違いなく美味しいと思いませんか。

収穫したサトウキビを圧搾しやすいように茎のみの状態にします。

収穫したばかりのサトウキビをかじらせていただきました。サトウキビの汁は甘くフレッシュで爽やか、甘さもくどくなく、いくらでも飲めそうです。笑

収穫したサトウキビを搾汁機にかけて搾汁していきます。

今回サトウキビの収穫とラム造りイベントに初参加していた大山家の長男アキくんがトップバッターで見本を見せてくれました。

大量にあるサトウキビから僅かな量しか搾り汁(サトウキビジュース)はとれません。生産者の皆さんの労力に頭が下がります。

圧搾したてのサトウキビの搾り汁(サトウキビジュース)です。とにかくフレッシュでやさしい甘みが印象的でした。甘みがくどくないので後口はスッキリしています。ホントに美味しいです。こちらが「アグリコールラム」の原料となります。

スタンダード商品の「ホワイトラム」はサトウキビの搾り汁(サトウキビジュース)を原料に作られた「糖蜜」と「黒糖」を使って造られます。

一方で、サトウキビの搾り汁(サトウキビジュース)をそのまま使用し、発酵・蒸溜させるラムの製法を「アグリコール」と呼びます。

サトウキビ100%のジュースは、搾った瞬間から劣化が始まるため保存ができません。そのため「アグリコール」タイプのラムは通年で造ることができず、製造できるのはサトウキビの収穫時期である数ヶ月のみ、なおかつ製造する場所(蒸溜所)は収穫場所の近く、つまりサトウキビの産地である必要があります。

このようにワインにも似た、農業的なラムであることから「アグリコール(農業生産品)」という名称がついたと言われています。

サトウキビ畑から大山甚七商店さんまでは車でわずか約20分の距離となります。長年地元に根ざしてスピリッツ(芋焼酎)を造ってこられた大山甚七商店さん。そんな大山甚七商店さんが地元で美味しいアグリコールラムを造る事になったのは必然的な事だったのかもしれません。

まさしくラムは地元の指宿に根ざしたスピリッツ(地酒)の一つだと思いました。

こちらは、うんまか糖さんの販売用の黒糖の製造工程の写真です。頻繁に味見をされている田中さん。加熱を終えるタイミングを見計らっておられるのだろうとみんなで真剣に見守っておりましたが、間を置いて静かに口を開いた田中さんから一言、、



「ただ黒糖が好きなのでたくさん舐めててるだけです」


(※もちろん加熱の見極めもされているはず)

こちらはできたての白糖。ホクホクとした食感、綿菓子のように儚く消える口どけが最高でした。黒糖も白糖も甘みの中に海藻っぽいミネラル感のある塩味を感じました。

質問してみると、やはり畑が海に近い事も影響しているのだとか。
まさしくサトウキビにもテロワールを感じる瞬間でした。驚きの奥ゆかしい味わいです。

畑に来ると土の写真を撮らずにはいられません。こちらが火の国薩摩らしい黒色の火山灰土(黒ボク土)です。海に近いこともあり、ミネラルを多く含んでいる事がサトウキビにもプラスに影響しています。

こちらは白糖を作った際に同時に生成されるオーガニックの糖蜜です。大山甚七商店さんのレギュラーの「ホワイトラム」はこちらの糖蜜と鹿児島県産の黒糖を原料にして造られています。

昼食はうんまか糖の皆さんが無農薬栽培されているお米のおにぎり、手作りのお味噌汁、お漬物、そして枕崎産の鰹のたたきという贅沢なご馳走が並びます。ホント絶品でした。

タンクいっぱいのサトウキビジュースをトラックに積み込みワクワクする想いと共に蔵に戻ります。

そしていよいよ仕込みの時。

搾りたてのサトウキビジュースをタンクに移し、発酵が円滑に進む糖度になるまでお湯にした仕込み水を加えていきます。糖度が定まった段階で、参加されている皆さんと共にラム酵母をタンクに投入します。

ラムは糖度が高いサトウキビを原料にするので、焼酎酵母だと糖度の高さに耐えられず、うまく発酵が進まない事があります。そこで糖度の高さに耐えられる「ラム酵母」を使用します。しかし、この「ラム酵母」も適正な温度管理ができなければうまく発酵が進まない為、経験に裏打ちされた匠の技術が必要となります。

このラムを造る技術があるからこそ、同蔵の人気芋焼酎「薩摩の誉 THE RUM YEAST EDITION」も造る事ができるのです。

ゆえに、大山甚七商店さんにとって「ラム酵母」は代名詞の一つでもあるのではと個人的には感じております。

こちらも大山甚七商店の代名詞の一つ「銅製のポットスチル」です。この蒸溜釜から、指宿の風土、そして人と人との絆で育まれたスピリッツが産声をあげる事になります。

今回仕込んだラムは今年発売されるか、それとも熟成に回して3年後になるか、まだまだ未定との事!いずれにせよ楽しみです!

定番として販売されている「ACOU RAM White」は今回ご紹介させていただいた通り「うんまか糖」さんの自然農で栽培されたサトウキビで作られた「糖蜜」と鹿児島県産の黒糖を使用して造られています。こちらの「ACOU RAM White」はスタンダード商品としてノミヤマ酒販でも常時在庫いたしております。

飲み方ですが、シンプルにソーダ割りも美味しですし、コーラやトニックで割るのも良しです!もちろんラムを使った定番カクテルの「モヒート」も最高です。個人的には水割りもいいと思います。

是非身近なお酒のひとつとして、ラムをお試しいただけますと幸いです!

今回の催しを通して、鹿児島の一大産業であるサトウキビの魅力、そこから生まれるラムの魅力、そして生産者の方々の魅力を存分に体感する事ができました。

ちなみに私(店主)は大山甚七商店の代表の大山陽平さんと同い年です。地域の方々をポジティブに巻き込まれて事業を営んでおられる陽平さんの姿に、同世代としても改めてたくさんの刺激をいただく機会となりました!

陽平さんはじめ大山甚七商店のスタッフの皆さま、そしてうんまか糖の皆さま、この度は本当にありがとうございました!!!


大山甚七商店さんのお酒はこちら👇👇

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