20年無敗(?)の雀士と最新の科学から考える、仕事や人生における「運」の引き寄せ方
最近、↑の記事がちょっと話題になってましたね。日本人は仕事や人生において運が重要だと思っているが、外国はそこまででもない、という話。私は調査パネルのバイアスが気になったので、いずれにしても万国共通で運って大事と思われているよね、という話でこの記事は受け取りました。
私自身はいろいろと運が良い方だと思っているのですが、ちょうどそれがなぜかが気になっていろいろ考え調べていたところだったので、「運」というテーマで記事を書いてみようと思い至った次第であります。
この記事で言っていること
・運の良さとは、結局のところ「運が良い」と思い込むことによって発生している事象である。そう思い込むことによって変わる行動の質が大きい。
・人生における幸福度はプラマイゼロになるようにできているという前提はあるが、マイナスのタイミング、すなわち人生における勝負所で、正しい手を打ち続けることがプラスの割合を増やすにあたって重要。少し拡大解釈すると、「選んだ道を正解にする努力」が死ぬほど重要。
・目的を明確に据えて取り組みながら、チャンスが訪れたらフルスイングして打ち返す脚力と集中力を常日頃から身に付けておくことも大事。
・型にハマりすぎず、変化に対して柔軟に対応するというマインドセットも同じくらい大事。
主な参考文献:
・負けない技術 / 桜井章一
・人生プラスマイナスゼロの法則は嘘なのか!? ~arcsin則の確率論的理論とシミュレーション~
・科学がつきとめた「運のいい人」 / 中野信子
(以下、私のしょうもない話と思考を中心に展開されていきますので、時間とタイトルに興味があって私の話はまぁいいやという人はリンク先の書籍や記事をぜひ読んでみてくださいw かなり学び深かったです)
個人的な「運」の話と雀鬼流の考え方
前述の通り、相対的にも私はかなり運が良い方だという自己認識がありました。友達や恩師、先輩、仲間との出会いにかなり恵まれているし、仕事においてもそうだし、趣味の麻雀も結構役満が出ます。
でもこの手の重要かつ若干オカルトめいた話ってだいたい科学されているんじゃないかと思い、運というものの正体を突き止めようとまず手に取った本がこれです。
20年間、裏社会の代打ちで無敗、雀鬼流という打ち方をつくった桜井章一さんが書いたという「負けない技術」。いやそっちから入るんかいという話はかなりあるんですが、一度流し読みをしたことのあったこの本を改めて読んでみると、学びが深く仕事に生かせそうな話がたくさんありました。長くなるので歩留まったパンチラインを3つほどに絞ってあげていくと・・・
「勝とうとする」のではなく、「負けない」ことに集中する必要がある。負けないということは技術である。その技術とは、必要なものに集中し、不必要なことが来たら耐えるということ。耐えることきこそが勝負所であり、それを面白がり、場が荒れていても、正しい一手を打ち続けることが重要。
不確実性の高い自然の摂理に従い、確証を必要以上に求めすぎず、感じたことをやり続けることが重要。特に「型」にはこだわりすぎると弱くなる。変化を感じ取り対応することの方が重要。
自分が得ることだけを求めて、相手を見ようとしない。これは「勝ち」の欲に囚われてしまっているからで、つまりは全体を見る目を持っていない。それゆえ判断、行動のバランスが偏り、ついには自ら崩れてしまうことになる。「勝ちたい」という欲のまま突っ走ると、実はそれは「負ける努力」をしていることに他ならないことがある。仕事でも人生でも、負けるという行為の99%は自滅だと言っていい。
最近ようやく心の底から理解できてきましたが、ビジネスとは本質的に競争です。差し当たって競争に「負けない」ための技術や心構えが随所に散りばめられていて、とても勉強になり一瞬満足していました。
が、何度か読んでいるうちに、あれ、この人実は直接的に運の話は特にしてないしマネできなさそうなこと結構あるぞと感じている中で、こんな記事に出会いました。
数理モデルによる「人生プラマイゼロの法則」の検証
「人生プラマイゼロの法則」は尊敬する後輩がよく言っていて僕も学生時代から意識していたことなんですが、それが本当かどうか、という点を数理的に分析しています。プロセスを完璧に理解できているわけではないのであれなんですが、要旨についてはこんな感じで理解しました。
人生の「幸運度/幸福度」を定量的にざっくり評価すると、大体みんな同じくらいになる。しかしそれは「幸運/幸福を感じている時間」がそうでない時間と同じになるというわけではなく、どのくらい長い時間幸せを感じているのかは人によって大きく異なるし偏る。
この前提に立って、記事の最後にあるお題、
この辺の解釈は難しいところだと思うので,正確な解釈は読者の演習問題としましょう
に応えるとすると、
自分でコントロールできるのは「マイナスの時間をいかに面白がるか、プラスに変えるか」という点。この考え方が重要であり人生において優先度高くコントロールすべき点だと捉えました。マイナスのタイミングこそが勝負所という話は桜井さんもしていたので、少しずつ近づいてきている感じがしてきます。
が。まだ「運」とは何かという答えには行きついていない感じがします。そこで読んだのがこの本です。
科学的分析による「運」の要素
はじめからこれを読めばよかったんじゃないか感のあるこのタイトル。受け取った要旨(プロセスとなる科学的分析を端折って、結構意訳していますが...)はこんな感じです。
「運の良さ」は結局自己認識でしかなく測定は難しいが、運が良いと思いこんでいると変わる「運」がある。運が悪いと考えている人はうまくいかない原因を「運が悪い」せいにしてしまう節があるが、運がいいと考えている人には「自分に勉強不足のところがあるかもしれない」と、正しい努力が生まれる。この違いは、積み重なると大きな違いになる。
運の良さを導く思考パターン。それは、自分の特性をよく知り、最大限に生かす方法を考え、何かに取り組む際にプラスの自己イメージを持つということ。
運の良さを導く行動パターン。それは、明確な目的をもって物事に取り組むということ。そしてその過程でたとえ不運なことが起きたとしても、決して途中で諦めたりせず、何度でも挑戦すること。
...運が良いのはなぜかと考えていたら、運が良いのは結局運が良いと思っているからそうなんだ、という身も蓋もない結論に行きつきました。鶏卵、逆だったのか、という・・・。
けど、言われてみれば個人的に振り返ってみても確かにそうですね。高校時代の恩師と出会ったのも、たぶん2年生の時に目的が見えず辛い時期にチームが頑張ってたからこそ指導者になってくれたわけだし、今の素晴らしい仲間との出会いも、現状を変えようと行動を積み重ねたからに他ならないわけだなと、妙に納得をしました。今まではそれに気付けておらず運が良いと勝手に勘違いしてただけだな、と。
3つの参考文献から見えてきた「運を引き寄せるため」の共通項
さてここまで来ていろいろと点と点が繋がってきて、少しずつ運の正体が見えてきた気がします。3つの文献を総合して名古屋なりに解釈すると、ポイントは3つありました。
1. マイナスに振れているタイミング、すなわち人生における勝負所で、正しい手を打ち続けること
これを少し拡大解釈すると、「選んだ道を正解にする努力」が死ぬほど重要と言い換えられるのではないかな、と。日々選択を積み重ねていく中で、特に不可逆な意思決定についてはそれを正解にしようとする強い気持ちが重要ですね。
逆に、何か物事がうまくいっているタイミングでは、マイナスになっているところを切り取ると、常に勝負所になってきます。その緊張感こそが、仕事における伸ばしどころに変わるのではないかと、気持ちを新たにしました。
2. 目的を明確に据えて取り組みながら、チャンスが訪れたらフルスイングして打ち返す脚力と集中力を常日頃から身に付けておくこと
「科学がつきとめた運が良い人」に出ている事例を紹介すると、思わぬものを偶然に発見する能力をモノにした事例は科学上の大発見に多いとのこと。
たとえば、2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士の「導電性ポリマーの発見と開発」は、(研究生による)実験の偶然的な失敗が大発見のきっかけとなってます。これをモノにできたのは、何か事象が起きたときに、明確な目的を持っているとそれがチャンスとなった、ということ。白川さんは、中学生のころから「新しいプラスチックを作りたい」という思いを抱いており、常日頃から目的を持って考えていたからこそ、「これってこう生きるんじゃないか!」という形で運を手繰り寄せることができた、と感じています。
3. 変化に対して柔軟に対応する、ということ。
桜井さんはこの主張にかなりのページ数を割いていますが、型にハマりすぎると運が逃げていくということは間違いなくあります。流れを感じ取ってそこに正しく対応できるように普段から能力やスキルを磨き込んでいくことは、一度「良い流れ」が来た時の成果を最大化する力を持っていると思います。
ちなみにこの要素は、別に運が云々みたいな話ではなく、普遍的に大事なことですよね。僕の座右の書でもある「愛するということ」でも、重要だと言っていました。
さて話がそれましたが長くなってきたのでそろそろ結論に・・・
結論:まずは自分は運が良いと信じてみることはマインドセット的にはやって損しなさそう
長々と書いていきましたが、まずは運が良いと思ってみることです。思うことは無料なので、みんな「自分は運が良いぞ」と信じられるようになれば、社会そのものは良い方向に向かう可能性があります。もし仮に、冒頭紹介した記事のデータが信頼に足るものなのであれば、日本的にも良い方向にいくのではないかとほんの少しだけ期待しますw
まぁ、むやみにそう思うだけでなく、上に書いた3つを実践することが大事だとは思いつつw
いまだになんとなく迷うときに読む電通鬼十則(最近はこれに変わったらしい)にこのような一節がありますが、
自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
この「自信」に、自分は運が良いかもしれない、という根拠のない何かを加え、より仕事に迫力・粘り・厚みを加えていきたいなと思った次第です。
こんな結論でいいのかはよくわかりませんが、とりあえず長々とすいません!以上です。