#38 理論と経験とをつなぐ ~創造の方法学より~(2024/02/15)
創造の方法学、第2章「問題をどう立てるか」では、原因と結果の論理的な関係を元にした問題の立て方が解説されていました。
第3章のテーマは「理論と経験とをつなぐ」です。
個々人の頭の中の映像と現実とのギャップがなぜ生まれるのか、そして、そのギャップの埋め方について理解できます。
〇われわれの頭の中にある映像
「われわれの頭のにある映像」と「現実」との間には常にずれが存在している
この島の住民の頭の中にあった映像は、戦争のない平和な世界であったように、現実とのギャップが存在します。
そして、私たちの生活は「われわれの頭の中にある映像」「その映像に向かって働きかける我々の行為」「現実の世界」による三角関係によって成り立っているのです。
そして、自己の意識と現実の世界とのズレは、外界からの報復を受けたときはじめて、自己の意識の間違った部分を訂正することができます。
自分の目に見えていない椅子に足の小指をぶつけて悶絶するなど。
2章では特定の現象を選び出し、その現象を引き起こす原因を求めて因果関係について仮説を立てました。
次は、その仮説と経験的事実を合わせて検証する過程となり、仮説の問題から一歩進んで、概念(concept)と理論(theory)のことを考えます。
〇概念の修正と創出
我々が普通「事実(fact)」と呼ぶものは、実は「概念(concept)」によって経験的世界(empirical world)から切り取られた現実の一部に他なりません。
つまり、概念がなければ事実もないということです。人間の認識の過程は、主体的かつ積極的な過程といえます。
「概念」とはサーチライトのようなものです。
我々は、概念というサーチライトによって照らされた事物を「事実」として認識します。現実の経験的世界には事実として認識されていない暗黒の部分が広がっています。
概念と経験的世界との間には普段の相互作用が存在し、「概念」は人間自身の思考によって修正されるだけでなく、経験的世界の人間への働きかけによっても修正されます。
通路にあるイスにぶるかることで「頭のなかの映像」が修正されるのと同じです。
この概念の修正、さらには新しい概念の創出こそ、人間の知的創造にとって、きわめて重要な働きなのです。
人によって、手にしているサーチライトや照らしている部分が異なるので、事実の認識も人それぞれです。
仕事においても話がかみ合わないなと感じることはよくありますが、その認識のずれを常に意識し、同じ事実を見る努力をしなければいけないということですね。
○概念を具体化した指標
実際の研究の過程において特定の「概念」は、研究者が「何を観察すべきか」の一般的定義を与えているということであり、観察すべき指標を具体的に定義し、観察を行います。
このような概念を代表する指標は「作業定義」と呼ばれ、概念と経験的世界との仲立ちをするいわば経験的な定義といえます。
〇経験と抽象との間の往復
抽象度の高い一般的概念の議論は経験科学ではなく、逆に経験的世界の平面の議論は経験主義者のレポートになってしまう。社会科学が経験的事実に基づいた科学であるためには、経験と抽象の間を往復しなければいけません。
この経験と抽象との間の往復の意味とはなんでしょう?
この図は抽象度の異なる二組の関係が互いに重なりあっています。
高い社会的結合は厳格な協会組織を持つカトリック協会に、図には示されていないが低い社会的結合は個人の自由度の高いプロテスタントに代表され、同様に不安という概念は自殺率という「作業定義」によって代表されます。
2つの概念と2つの作業定義とがそれぞれの因果関係によって結ばれていることで、理論を構成しています。また、作業定義によって集められた具体的証拠の関係が宗派と自殺率の関係の仮設に対応するとき、理論に関する仮設が検証されたことになります。
また、底辺のドロ臭い社会の現実の中で集めた息の長い経験と抽象との往復を繰り返すことによって骨の太い広い視野を獲得することができ、信頼性の高い理論を証明することに繋がるということです。
経験と抽象との往復の大切さは、チームや組織が同じ方向を向いて動けるような信頼性の高いビジョン作りなどにも通ずると思います。
実際の現場起こっていることへの深い理解と、ビジョンを達成する抽象度高い概念が合わさらなければ人の行動に変化をもたらすのは難しいですね。
具体と抽象は世界が異なるため、その往復を繰り返し両方を深く理解することで信頼性を生むというは非常に納得感があります。
第3章は理論と経験とをつなぐ方法と信頼性を生むための具体と抽象の往復の意味についての解説でした。
人によって認識しいてる事実が異なるということに非常に納得でき、
そのことを理解したコミュニケーションを取ることや、自分の中の事実をアップデートする姿勢の必要性を強く感じました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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