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#215 システム開発成功のコツは期待値コントロール

こんにちは。ITベンチャーエンジニアのこへいです。

以前に、プロジェクトの成否の50%は人選で決まるという記事を書きました。

この記事は山口 周さんの「プロジェクトを炎上させないための、もう一つのコツ」という記事に対する私自身の解釈です。

プロジェクトを炎上させないための「たった一つのコツ」という記事も非常に面白く、さらに山口周さんの「外資系コンサルの知的生産術」という本も合わせて読むことで、プロジェクトを成功させるためのノウハウを学ぶことができます。

今日は、本書の知的生産の「戦略」についての学びを、システム開発の現場に照らし合わせて紹介します。

本書は知的生産に関わる全ての人の参考になるため手に取ってみてはいかがでしょうか。kindle unlimitedでも読めます。


〇外資系コンサルの知的生産術の概要

山口周さんは論理思考やフレームワークを学んでも知的成果を生み出せない理由として、知的生産性は思考の技術よりも行動の技術、いわゆる心得よって大きく左右されると指摘しています。そして本書では、知的生産のための心得が紹介されています。

知的生産のプロセスに沿って、「知的生産の『戦略』」「インプット」「プロセッシング」「アウトプット」の四つについての「心得」、そして「知的ストックを厚くする」と題して、知的生産のクオリティや効率を中・長期的に高めていく方法が説明されています。本書を通して、知的生産のプロセスのどこに自分の強みと弱みがあるかがわかります。

〇知的生産の「戦略」

知的生産を行う時はまず最初に行うべきは「知的生産の戦略策定」です。

どのような知的生産物を生み出せば、この局面で勝てるのか? という点についての見通しをつけることであり、それは顧客がすでに持っている知識との差別化をすることです。

これは顧客(知的成果の受け手)が、何をどこまで知っているかを理解した上で、どうやって「新しい付加価値」を生み出すかを考えることです。新しさを出すには、「広さで出す」か「深さで出す」という二つの方向性があります。

知的生産の戦略を検討する時は、相手側の問題意識の枠組みを整理した上で、広さと深さのどちらで勝負をかけるのかを最初に整理します。知的生産に必要な情報を集める時に「広さ」と「深さ」のどちらで勝負するかでアツまなければいけない情報の種類が大きく変わるため、最初に整理することが大事です。

顧客を明確化する

「広さ」と「深さ」のどちらで勝負するかを決めるためには、知的成果を受け取る相手である顧客を明確化します。ここで注意が必要なのは、直接の発注者が「真の顧客」であるとは限らないということです。例えば、受託のシステム開発をする場合、システムの利用者は業務を担当するオペレータや、顧客が抱えるコンシューマーとなります。

次は、要求されているクオリティを押さえます。
ターゲットとなる知的成果の受け手が明確化したら、そのターゲットがどのような知的成果を望んでいるか、つまり「何を知りたがっているか」「何を実現したがっているか」を明確化します。

受託のシステム開発では、顧客のプロジェクトメンバーがシステム利用者とは限りません。そのため、要求されているクオリティは実利用者からの又聞きであることが非常に多いです。その又聞きを信じて必要なクオリティや仕様を決めてしまうと、過剰スペックになったり作ったけど使われないということが発生するため、実利用者からの一次情報の収集が非常に重要です。

使えるリソースを明確化する

まずは使える時間を明確化します。アウトプットを出すための作業工程は納期に合わせて設計するため、納期が決まらないと設計が出来ないからです。
「なる早」という指示があった場合は具体的な期日を確認しましょう。

次は「どの程度のお金と人手が使えるか」を明確化します。収集する情報に「どれくらいの費用がかけられるのか」「手を動かせば集められる情報なのか?」「どれだけの時間が使えるのか?」などの制約条件から解決策を考えながら、求めれらるクオリティを達成するため見通しを立てるためです。

システム開発でも、インフラ費用がどれだけ確保されているか、どのレベルのメンバーがアサインされるかなどの制約条件に応じて適切な設定が異なります。
そのため、どこまでのリソースが使えるのかを最初に確認するのが重要です。

顧客の期待値をコントロールする

ここまでで、次の三つのポイントが明確化されました。

  1. 知的生産物のターゲットとなる顧客

  2. 顧客が求めている知的生産物の品質

  3. 知的生産にかけられる時間・金・人手

この2と3のバランスが取れている場合は、情報収集のステージに進めばよいですが、仮に求められている品質に対してリソースが十分でないと感じる場合、そのまま知的生産のプロセスに突入するのは危険です。
この状況をリカバリーするには、顧客との期待値をコントロールする仕切りが必要になります。

プロジェクト開始の段階で、顧客のスピード、品質、量に関する期待値を制約条件の中で満たせないと感じたら、まずは顧客との制客条件の調整について話し合いましょう。プロジェクトの進行に合わせて期待値のズレを感じた場合にもすぐに調整しましょう。
期待値と現実のギャップは時間が経つほどに埋めにくくなります。

知的生産における失敗というのは知的成果物の品質ではなく、あくまでも「顧客の期待値と実際の成果物とのギャップ」によって決まります。つまり知的生産におけるトラブルは期待値と成果物とのギャップが大きいために発生するのです。

システム開発においても機能の品質を高めることにばかり注力すると、すぐにコストにはねることになります。真の顧客の期待と現実とのギャップを埋めていく期待値コントロールにコストを割くことが、プロジェクトの成功には欠かせません。

また、知的生産活動に従事する管理職の役割として「ここまでやれば及第点」というラインを提示することが挙げられ、プロフェッショナルというのは80%の力でクライアントを継続的に満足させられる人のことである、と述べられています。

炎上プロジェクトをチームのハードワークでやりきることが賞賛されがちですが、そのようなプロジェクト進行は決してプロフェッショナルではないということです。肝に銘じておきます。


ということで、山口周さんの著書「外資系コンサルの知的生産術」から、知的生産の「戦略」について、システム開発の現場にも生かせる点について考えました。
最後までお読みいただきありがとうございました。


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