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#267 中堅が「出来ない」と言えるマネジメント

こんにちは。ITベンチャーエンジニアのこへいです。

前回、中堅には不確実性の高い仕事のコントロールが求められ、時には「出来ない」とエスカレーションする勇気が求められるという話をしました。

今日は中堅側のセルフコントロールではなく、中堅に「出来ない」と言ってもらえる状況を作るためのマネージャー側のコミュニケーションの話です
定例などの進捗確認や1on1でのメンター役の際の参考になれば幸いです。

◯なぜ中堅は「出来ない」と言えないのか

中堅に対しては、任せた仕事をセルフコントロール完遂してくれるという期待と信頼が抱かれます。そして、中堅も過去に成し遂げた自信と経験とプライドがあるため、簡単には「出来ない」と言うべき状況ではないという前提があります。

中堅には不確実性の高いタスクがアサインされます。不確実性を減らし、曖昧な完了条件を明確にしながらゴールまで導くことが期待されます。これは中堅にとってもチャレンジングです。アサインする側もこのチャレンジを成し遂げられると期待し任せるという判断をします。

中堅の中には若手時代の勢いのまま仕事をする人もいます。若手時代に任された仕事の難易度やボリュームであれば、勢いでなんとかやり切ることも出来ます。しかし中堅になると、これまでよりも難易度の高い大きなプロジェクトを任されます。勢いだけではどうにかならないため、これまでのやり方を変える必要があります。

このように、過去の経験よりも高いレベルの成果を要求される中で、自分としても更なる成果や成長のためにやる気に燃えていると、「出来ない」とは言いにくい状況が生まれてしまいます。

不確実性が高く予算や期間などの制約の中から適切なゴールを作り出すのは非常に難しいです。そのため、「この条件では出来ない」ということをチームに共有することは非常に価値があります。
それを理解せず、単にプライドが邪魔して出来ないと言えないというケースは回避すべきです。

◯「次のアクション」を言語化する

プロジェクトとして困るのは「出来ない」というエスカレーションではなく、「出来るかわからない」状態が続くことです。

中堅には出来るかわからない不確実性の高い状態から、不確実性の低い状態に効率よく移していき、「わからない」から「これなら出来る」という状態に落とし込むことが期待されます。
タスクを分解し、タスク同士の依存を考慮し、どの順番で進めれば良いかを整理し、ゴールまでのマイルストーンを決め、時間を管理しながらタスクを進め、当初想定したゴールにたどり着けなくても新しいゴールを設定するための判断が出来る状態まで持っていければOKです。

タスクを進めることで解像度が上がり、不確実性を低くする方法が見えてきて、より良いアプローチが見えてきます。途中でアプローチを変えることも考慮し、粗くても良いのでどんどん作業を進めることが重要です。「このアプローチで本当に良いのか?」と机上で悩み続けることにはあまり意味がありません。しかし、過度に失敗を恐れて手が動かなくなるというのはありがちです。

中堅には自走が期待されるため、若手の時のようなマンツーマンのサポートはありません。チームやマネージャーに相談する場はありますが、自分から相談を持ちかける自発的な行動は必要です。これまでのように、「まずはやってみよう。何かあったらフォローするから!」と背中を押してくれたメンターはいません。自ら相談する力がないと手が止まって時間を溶かしてしまいます。

そのため、中堅が「出来るかわからない」と言う場合には、次のアクションの言語化を手伝うのが良いです。

何がわかれば出来る・出来ないの判断ができるか
そのための最初のアクションは何か
そのアクションをいつまでに、どの順でやるか

の言語化を手伝い、そのアクションの完了期日に同様の言語化を繰り返します。繰り返すうちに手が止まる状況を回避できるようになるはずです。「出来るかわからない」から「これなら出来る」という落としどころを自ら見つけられるようにフォローします。

◯まず60点を目指すことを合意する

不確実性の高いタスクは「出来ない」という判断をすることが難しく、まずはやってみないとわかりません。「出来ない」客観的に納得させることも難しいため、適切な判断が出来るくらいに解像度を上げるために、まずは60点の完成度で良いので一通りやってみるのが重要です。

やってみた結果、仕様が破綻していることに気付いたり、前提条件が不適切であることがわかり、当初の計画では実現不可能とわかることもあります。これは失敗ではなく、必要な情報収集の一貫です。

当初の計画を完璧にこなさないといけないと頭がロックされている中堅は、どうにかやり切ろうとボールを抱えてしまうことがあります。「出来ない」とは言えず、筋の悪いアプローチの沼にハマり抜け出せなくなってしまうのです。

途中で仕様を変えたり、要件を整理することも時には必要です。プロジェクトの序盤であれば、方向転換する余地が残されています。プロジェクトの終盤になると、もう覆せずにデスマーチでやり切るしかなくなってしまうため、早い段階で納得できる理由を持って「出来ない」と判断することは非常に重要です。

60点でいいから全体を作り切ることで、適切な判断が出来るレベルに解像度を高めることが出来ます。不確実性の高い状況で、100点を目指していつまでも手をこまねいているのは最悪です。
中堅には最速で60点を目指すことを合意し、失敗に対する恐怖心を取り除くことで、「出来ない」を言える状況を作り出しプロジェクトの成功を引き寄せることができます。


ということで、中堅が「出来ない」と言いにく状況が生まれる背景と、「出来ない」と言いやすくするためのコミュニケーションについて紹介しました。

前回の記事で中堅側に意識して欲しいことを述べました。今回は、中堅が「出来ないと言って良い」と感じれるような心理的安全性の確保という、マネジメント側のアプローチについて紹介しました。強いチームを生み出すには、片方の努力では不十分であり双方の取り組みが必要です。

私の職場では、両方が満たされていない状態が放置され、問題に発展してしまったので、自戒の念を込めて文章に残すことにしました。
皆さんのチームには両方が備わっていますでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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