#34 問題をどう立てるか ~創造の方法学より~(2024/02/07)
創造の方法学、第1章「知的創造とは何か」では、教育の基本である読み、書き、算盤がどのように知的創造につながるかが解説されていました。
第2章のテーマは「問題をどう立てるか」です。
原因と結果の論理的な関係を元にした問題立て方に関して理解できます。
◯原因を考え、問題を整理する
この章では、「イギリスの闘い」と名づけられた、第二次大戦中に作成された戦意昂揚の宣伝映画が紹介されています。
このフィルムはマス・コミュニケーションとその影響に関する種々の実験のひとつで、当時のアメリカ軍は第二次大戦のために招集した兵士に太平洋を越えてイギリス人を助けに行く理由を理解できない者が多く、これらの新兵たちの戦意を昂揚させるために製作されました。
さて、問題解決のための基本的な要素は「原因」と「結果」とを明確に定めて、問題の理論を組みたてる方法です。
つまり、解決しなければならない問題を「結果」としてとらえ、その「結果」を生み出す「原因」となるべき要素を探り出します。
この因果関係の存在を仮定し、その過程を実証するという論理的構造を持ちます。
この因果関係はごく当然のことに考えられますが、例えば「酒を飲めば酔う」という関係は当然のことですが、その詳しい因果関係、つまり酒を飲む行為から酒が回るまでの詳しい過程は比較的最近まで明らかではなかったように、一口に因果関係といっても「結果」を一定の「原因」と結び付けて、「なぜ」という問に対する明白な回答を与えるのは、必ずしも容易なことではありません。
◯記述と説明の違い、なぜという問いかけ
以上のように、まず問題を「結果」としてとらえ、それに対する「原因」を結び合わせることで、両者の関係をついてはっきりと言えることがわかりました。
実験においては、「原因」と「結果」になる現状は常に明確に規定されます。
なぜなら両者の関係がハッキリしていなければ、実験の計画など立てようがないからです。
しかし、社会学や歴史学になると、より複雑な生きた現実を取り扱わなくてはならず、「原因」と「結果」を明確に定義出来ない場合が多く、
そのため、現実の現象がいかなる状態にあるかを正確に観察し客観的に記録する「記述」という研究方法があります。
このような記述に対して、「なぜ」という疑問を発して、「結果」として合疲れる現象と、その「原因」となる現象とを論的に関係させようとすることを「説明」といいます。
実験的方法を応用することがほとんど不可能な社会の研究では、記述と説明の差が重視されており、説明的研究を意図した研究者に対して「すばらしい記述的研究ですね」と評すことは侮辱と捉えられる程に大きな差です。
◯複数の原因の組み合わせによるモデル
研究の課題を「結果」としてとらえ、その現象を生み出す「原因」にさかのぼり、「原因」と「結果」との論理的な関係を設定するところに「仮説」が成立します。
しかし、「結果」は必ずしも一つの「原因」によって生み出されるものでなく、複数の原因から「結果」となる現象を「説明」することになります。
このように複数の仮説を組み合わせたシステムを「モデル model」といいます。
この図はミヘルスによる寡頭制はどのような原因によって生じるかを説明したモデルです。
詳細は著書に譲りますが、ミヘルスは巨大集団の寡頭制という「結果」を3組の「仮説」がシステムをなして一つのモデルを作り出しているいることを説明しています。
また、寡頭制が成立すると寡頭制自体が新しい「原因」となって指導者自身がもつ使命感を高めることも示しています。
このようにしてモデルを作り上げることが「問題を立てる」ということです。
第2章では問題の立て方に関しての解説でした。
「原因」と「結果」の関係は当然のようでありますが、社会の研究にかぎらずビジネスの世界でも実験のように明確に定めることが難しいと実感します。
新たな取り組みをする際に、記述的な調査に対する説明が不足したままで、なし崩し的にGOが出ることもしばしばあります。
もちろん、完全に説明できる状態を待っていては何も始められないので、ある程度の見切り発車も必要です。
リスクを減らすためには、結果を論理的に逆算できる程度の仮説を立て、それを検証できるように、客観的な説明が出来るモデルを構築することの重要性が身に沁みました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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