悪いことが起きない人生だって 相棒「人生ゲーム」
今日たまたま「相棒」の再放送を見ていたらとても素晴らしい内容だったので、感想を書きます(ネタバレあり)。
相棒19の第16話「人生ゲーム」です。
瀧本智行さんの脚本が素晴らしいと思いました(もちろん監督の東伸児さんも)。
たまたま録画したので(良さそうな作品だという勘が働いたのです😆)、見直しながら感想を書きます。
脚本がとにかく緻密なのです。
アパートの立ち退きを迫られていて、残りが自分の部屋だけになった安村剛(今野浩喜)。
なんで悪友・大槻健太(西興一朗)が誘拐の片棒に誘ってきたかの理由が明確です(子供を匿っててもバレない場所だから)。
このようにさまざまな事柄の動機付けがはっきりしていて、脚本家の都合でお話が展開しないので、事実に勝るリアリティがあります。
顔にアザのある少年・影山将(山城琉飛)から「友達を助けてください!」と頼まれる右京と亘。
場面が変わって誘拐直前のシーンになり、その後右京たちが安村のアパート前で待機し、
亘「人質を隠すにはうってつけですね」
右京「ええ、だからこそ安村さんを仲間に引き入れたのでしょうねぇ」
と話しているシーンに。
小学生とおじさんが友達って誰も予想しないですからね。
見事にミスリードされました(将の友達=誘拐された小峰翔太(加藤憲史郎)と誤解)😅
精肉店で安村に話しかける右京。ウザさがらしくてたまりません😁
スーパーコミネの社長・小峰裕司役の鎌倉太郎さんは無名塾のお芝居によく出てた方ですね。舞台で拝見したことがあります。
伊丹からネクタイを借りてる亘。
こういう細かい設定がこの脚本は巧みだなと感じます。
義理の父親から虐待されてる将の家は少ししか出てこないですが、散らかり具合のリアリティが素晴らしい。美術さんの力ですね。
安村が公園のブランコに座ってるところに右京が現れて、安村がむかし和菓子職人だったことが視聴者に明かされますが(右京さんは調べてわかった上で大福を買っていったのでしょう)、安村がブランコに座っていたのは将との思い出に浸っていたからでしょう。
1回見ただけだと気づかないですよ。秀逸な描写です😆
捜査のために買っただけの大福と高級ローストビーフを張り込みを頼むお礼として青木に渡す右京さん🤣
このへんのテキトーさも右京さんの魅力😁
特命に担がれたと信じきってブチ切れる伊丹がたまらない🤣
張り込み中の出雲の般若みたいなニコニコ顔も最高😂
笑いどころもたくさん用意されてるんですよね〜。
コインロッカーに身代金を取りに来た大槻が捜査一課の3人組に逮捕されますが、被害者家族が通報してないのに誘拐犯が捕まるのは珍しい設定かもしれませんね。
人生ゲームをモチーフにしてここまでのお話を作れるのが凄い。
三遊亭圓朝は「酔漢」「財布」「芝浜」の三題噺として「芝浜」を創作しましたが、さしずめこのお話は「人生ゲーム」「誘拐」「年の離れた友人」でしょうか。
悪い出来事のマスをいい出来事のマスに書き換えた人生ゲームなんて、泣かずにいられますか😂
その内容も、「鉄棒で逆上がりができた」「マラソン大会で優勝」「テストでいい点数とった」と、将に対する安村の深い愛を感じます。
脇役の皆さんも好演でした。
社長夫人に大村彩子、社長を告発する社員に俵木藤汰、安村の過去を知る噂好きの老婆に藤夏子。
ラストシーンは美しさを感じる終わり方です。
フィクションの持つ力強さ、素晴らしさを教えられました。
子役の演技も素晴らしい。
山城琉飛くんの好演で、おじさんとの友情という難しい設定のリアリティが生まれました。
考えてみれば、偽装誘拐を企んだ大槻と翔太も年の離れた友人だったわけです。
しかし、他人を陥れることに熱中する哀れな二人です。
翔太は両親から愛情を注いでもらえてこなかったのでしょうから、気の毒な子供です。
翔太の父親も人から愛情をもらったことのない、寂しく孤独な人生を送ってきたのでしょう。
本編に出てこないそうした人物の背景までもが伝わってくるお話でした。
安村や将のこれからの人生のマスがなるべくいい出来事で満たされるように願ってやみません。