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クラオタ歴26年のおじさん、初めて吹奏楽を聴きにいく 東京藝大ウィンドオーケストラ定期
東京藝術大学奏楽堂で、東京藝大ウィンドオーケストラ第95回定期演奏会を聴いてきた。
指揮:大井剛史
管弦楽:東京藝大ウィンドオーケストラ
ミヨー:フランス組曲
リード:アーデンの森のロザリンド
ネリベル:ウェストポイント・コンチェルト
西村朗:秘儀V〈エクリプス〉
マスランカ:交響曲第4番
《アンコール》
カール・キング:サーカスの日々
16歳で「功芳のラストリサイタル」を聴いて以来(入口を間違えた😅)、26年間クラシックコンサートに通ってきたが(途中お休みの期間が2年くらいあったが)、吹奏楽は初めて。
いつか行きたいと思っていた!
それも「ハリー・ポッター・メドレー」とか編曲ものではなく、ガチの吹奏楽!
吹奏楽のために書かれた本格的なプログラムを聴きたかった。
4月の横山奏/東京佼成ウィンドオーケストラに行くことも考えたが、今回のコンサートが初吹奏楽でよかった。
大井剛史は東京佼成ウィンドオーケストラの正指揮者で、吹奏楽の指揮経験が豊富な印象がある。
日頃から吹奏楽を振ってる指揮者で聴けてよかった。
結論から言うと、行ってよかった!😆
面白かった。年に1回くらい吹奏楽行くのも面白そう(東京藝大ウィンドオーケストラ定期は年2回ペースだからちょうどいい)。
今回知らない曲ばかり。日頃はWikipediaで曲の情報だけ頭に入れていく私も「どうせ吹奏楽初聴きするんだから」と思って、まったく調べないで行った。
「未知との遭遇」を期待したのである。
そしたら西村朗の「秘儀Ⅴ〈エクリプス〉」で楽団員のアクションシーンがあったので(大量の蚊に襲われてるのかと思ったら、プログラムを後で読んだら異界の邪鬼だったようだ)、予備知識なしで芸術鑑賞する大切さを知らされた。
前もって「この曲にはびっくりする仕掛けがあります!」と知らされるだけでも驚きがなくなる。
西村朗ってこんな仕掛けの曲書いてたんだ!とびっくりした(ご本人も来場していて登壇した)。
客層はびっくりするくらい若い。「一般2500円、高校生以下500円」という安さもあるだろうが、出演者の知り合いや在校生が来てるんだろうか。
サントリーホールとは全然客層が違う!
後ろの席で高校生?くらいの女子3人が女子トークをしていてびっくり。
サントリーホールで女子トークなんて聞いたことがない。
というか、連れ立って来てる客がそもそも少ない。
クラシックコンサートは一人で来るイベントになってしまっているのだ。
今日はグループで来ている若い人をたくさん見かけた。
「都民芸術フェスティバル」みたいな普及的イベントならこれに近い感じなのかもしれないが、在京オケの定期演奏会とあまりに違う雰囲気なので驚いた。
やっぱりクラシックコンサートって敷居の高い大人の楽しみになっちゃってるんだよなぁ😅
まあ舞台芸術は演劇も歌舞伎も能も落語もそんな感じだけど。
出演者が若者ばかりだから来やすいっていう理由もあるのかもしれない。
あとは値段だね。2500円は安いよね😏
曲の感想を言うと、マスランカが一番聴き応えがあった。
「交響曲」の名に恥じない厚みとスケール感のある曲だったが、管楽器のトゥッティの上に分厚いパイプオルガンが重なるので、生姜焼きの上に大量のマヨネーズをかけてるようでやや胃もたれする。
曲の最後もダメ押し感がくどい。全合奏になると銭湯みたいな音のカオスになるので、このへんは同じオルガンの曲でもサン=サーンスの「オルガン付き」とはかなりの差がある。
西村朗の曲は現代音楽にしては聴きやすかった。
アクションシーンも演技派の人もいれば苦手そうな人もいて、個性の違いが面白かった。
派手髪のコンマスの男性がノリノリでやってて好感だった😄
ミヨーとリードの安定感に比べると、ネリベルではオケのまとまりが欠け、どんな音楽を描きたいのかが楽団員によって違っている印象だった。
全体で合わせる練習量も足りてないように感じた。
前半グロッケンシュピールを演奏した方々は恐々叩いてる感じだったので、もう少し堂々と鳴らした方がよかったかもしれません。
とはいえ、弦楽器ありのオケでは管楽器は間違えるとすぐバレるけど、吹奏楽だと管楽器が目立たないかわりに打楽器が目立っちゃいますからね。
恐々しちゃう気持ちもわかりますが、演奏者の心情って結構音に出るもんですね……🤔
アンコールは勢いのあるマーチで、まさに吹奏楽!って感じ。
気持ちのよい気分で会場を後にできた。
演奏を終えた学生たちの顔には充実感と達成感が窺えた。
これから音楽家としての無限の未来が彼らの前に広がっている。
私は21歳のとき、大学1年生の春休みに南米(ペルーとボリビア)を5週間一人旅した。
18歳のときには、南太平洋(サモア、ツバル、フィジー)を1か月旅した。
南米の次はアフリカ→中東→アジアと、世界一周旅行を夢見ていた。
探検家で医師の関野吉晴が人力で南米からアフリカまで旅するドキュメンタリー「グレートジャーニー」シリーズの放送を食い入るように見ていた。
しかし大学2年の終わりに統合失調症になって閉鎖病棟に入院。
それ以降、海外旅行どころか国内旅行にもろくに行っていない。
それは体調が回復していないからではなく、近場の知らない街を歩いたりするだけでも十分“冒険”に感じるようになってきたからだ。
機会があれば今からでもアフリカに行ってみたい気もするが、精神薬を持っていかないといけないし、最近はcpapという睡眠時無呼吸症候群の機械を装着して毎日寝てるので(つけずに寝ても死にはしないが)、生活から旅行が縁遠くなってしまった。
何でこんな話をしたかというと、若さゆえの勢いでないと成し遂げられないものはあって、そういうことはおそらく若いうちにやっておいた方がいい。
年をとるといろんな制約(金銭面や健康面)でやりたかったことができなくなる。
そうした諦めの連続が年を重ねるということなのだが、その中であってもできることは山のようにあるので、「加齢=不幸」ということでは必ずしもない。
ただ今日、若さの塊の学生たちを見て思ったのは、彼らの未来は未知数で、きっと野心や希望や夢やいろんなものを白紙の未来に描いているんだろうなということ。
病気だったり事故だったり、さまざまな理由で夢を諦めないといけない人も中には出てくるかもしれない。
しかしそんな未来も、今の時点ではすべて白紙だ。
子供と親が口喧嘩をすると、親は経験の豊富さを武器に話を進めがちである。
「お前は若いからわかってないけど、年を取ればわかる」
とか。
でも、そんな論法は間違いだ。
行き先の書いていない航空券を持っているのが若さの特権なのだ。
マスランカの大音響を聴きながら、その音の大きさより学生たちの若さの方にこそ私は圧倒される思いがした。
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