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たてがみを手に入れた子猫の話(エッセイ)

初めて猫を飼ったのだが、顔がライオンに似ているな、とは思っていた。
同じネコ科であるから、似ていてもおかしくはない。
しかしここ数日の間に、マコに起きた変化を見ていると、猫はやっぱりライオンの仲間であることを確信した。


6か月になったマコは、身体も標準より大きく、順調に成長したので、去勢手術を受けることにした。
手術は順調に終わり、当日は帰って来てからもふらふらだったので少し心配したが、ごはんも食べて安心した。

しかし、困ったことがあった。
傷口を舐めないように、病院から付けて帰って来た首の「カラー」があると、マコは後ずさりして後ろ方向にしか歩けないのだ。
前に進むとカラーの端が物にぶつかって進めないので、帰って来てからずっと、お尻から進んでいる。

カラーを外してみたところ、マコはすぐに毛づくろいを始めて、傷を舐めそうになった。
元々マコは、いつも毛づくろいに時間をかけていて、毛がサラサラしてきれいだ。おしゃれさんなのである。
カラーを外すとどうしても、毛づくろいから傷を舐める流れになってしまう。カラーは一週間付けるように病院から言われていた。
私は大急ぎで、マコの為に布製の柔らかいカラーを作ることにした。

病院で借りたカラーを型紙にして、余っていたフリース生地を重ね、間に固めの芯を入れる。
首周りには緩まないように縁取りテープを縫い付ける。
微調整できるように、マジックテープを付けたら完成だ。

即席の布製カラーは、マコの目と同じ水色で、妙に似合っていた。
前方向にも歩けるようになって安心だ。

しかし布製とはいえ、ずっと付けているのはやっぱりストレスだろうと考え、
「マコ、かっこいい!」
「マコの帽子、素敵だな~」
などと、毎回大袈裟に褒めていた結果、マコは全く嫌がらずに付けるようになった。
それどころか、鏡の前に行って、カラーを付けた自分を、しょっちゅう見ているようになった。なんだか得意げだ。
そうか、これはマコにとっての、たてがみなんだ。

そもそもライオンにとってのたてがみは、身体を大きく見せたり、攻撃から首を守るのに役立つものらしい。
たてがみを手に入れたマコは、少し自信があるように見える。
(色々なぎ倒しながら)軽やかに走る。表情に余裕がある。
私も「マコのたてがみ、素敵ね。強そう!」などと、さらにおだてる。

ごはんの時や、見守りの元で遊ぶ時は外してやるが、再び付けるのを全く嫌がらないどころか、すっと首を差し出してくるようになった。
まんざらでもない様子だ。

傷を舐める心配もないし、カラーがストレスになっている様子もない。
よかった、よかった。
しかし、数日後にこのたてがみを外した時、彼が自信を失わないか、少し心配している。

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