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あのころにもどりたい

あの頃はよかった。
インターネットとスマホがない時代。

あの頃は、情報の流れがもっと単純だった。
価値観も今ほど多様ではなかった。人々が共有する共通の話題があり、物事が広まるスピードも今ほど速くなく、じっくりと受け止める余裕があった。

昼間に毎日『笑っていいとも』が放送されていた時代。
学校を休んだ日にだけ見られるその特別感は、子どもにとってちょっとした贅沢だった。
今のように好きな時に好きなコンテンツを見られる時代ではないからこそ、待ち望んで見る楽しさがあった。

ゲーム機のハードが目に見えて進化を遂げた時代。
ゲームボーイがカラーになった感動、スーパーファミコンからニンテンドー64への進化に伴う3D動作の衝撃。
ゲームの世界が目に見えて進化し、技術が生み出す新たな楽しみを純粋に受け入れていた。
今の子どもたちがゲームを当たり前に手に取る時代とは違い、当時は技術の進化自体がエンターテインメントだった。

子どもだからそう感じたのかもしれないが、当時の社会全体に「ゆるさ」があったように感じる。
現代ほどの効率性の追求やスピード感はなく、生活や仕事の中にも隙間や余白が存在していたのではないか。
大人たちも今ほど張り詰めた空気感を纏っていなかった気がする。

筆者の人生は「失われた30年」とほぼ重なる。
バブル崩壊後の経済停滞、長引くデフレ、雇用不安…。
経済的には決して良い時代とは言えないのは確かだろう。

今はどこにいても手元で好きな動画が見られる。
高画質なゲームがいつでもどこでもプレイできる。

便利さや効率性は格段に向上した。衛生環境も飛躍的に良くなり、戦争のリスクも今のところは少ない。

技術的進歩や平和な時代に生きることに、否定するつもりはないし、本当に幸せなことだと思う。

ただ時々、あの頃のゆるさや余裕が懐かしく思えてしまう。
いわゆる懐古主義というヤツか。

便利さや情報の速さを享受する現代に感謝しながらも、ふと「あのころにもどりたい」という感情が湧いてくる。

それは、あの時代に感じた“手の届かない新しさ”や“特別感”が今では失われてしまったからかもしれない。

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