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アイツは忽然とやってくる

心を蝕んでくるメランコリー。
憂鬱感。
アイツは忽然とやってくる。

芥川龍之介の短編に、『孤独地獄』という作品がある。

ついこの間まで元気を見せていた主人公の知人が、急に次のようなことを述べ出す。

仏教の教えによると、地獄にもさまざまな種類があり、主に「根本地獄」「近辺地獄」「孤独地獄」の3つに分けることができるらしい。
その中で、南瞻部洲(なんせんぶしゅう)の地下にある地獄について、仏典に「南瞻部洲の下、500踰繕那(ゆぜんな)を越えたところに地獄がある」と書かれているので、多くの人は昔から地獄は地下に存在するものだと考えていたのだろう。
しかし、その中で「孤独地獄」だけは特別で、山の中や広い野原、木の下や空の中、どこにでも忽然として現れる。
つまり、今目の前に広がるこの世界が、そのまま地獄の苦しみを目の前に見せつけてくるのだ。

自分は2、3年前からこの「孤独地獄」に落ちてしまった。すべての物事が少しも長続きする興味を持たせてくれない。
だから、いつも次から次へと新しい環境を求めながら生きている。しかし、そうやっても地獄から逃れることはできない。
かと言って、同じ環境に留まっていれば、それはそれでさらに苦しい思いをするだけだ。だから結局、転々としながら、その日その日の苦しみを忘れるような生活を送っている。
でも、その生活すらいつか耐えられなくなるとすれば、もう死ぬしか道はない。
昔はどんなに苦しくても、死ぬのが嫌だった。今では……

芥川龍之介『孤独地獄』(原文をChatGPTで現代語に書き下したもの)

そして、その会話を最後に自分の前から姿を消す…という話。

ここでいう「孤独地獄」は、まさにメランコリーな感情を意味するのだろう。
こんな感じで気がつくと泥沼にハマることがある。

忽然と現れるからこそ、常に警戒しておかないといけない。
本当、やっかいだ。

やっかいで逃れられないのだから、いっそうまく付き合っていかなければならない。

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