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貧血は風土病?

ちょっとインパクト強すぎるタイトルにしました。



以前から風土病に分類される貧血というものはあります。例えば鉤虫による鉄欠乏性貧血とかマラリアで見られる溶血性貧血です。しかし私がここで論じたいのは、日本でごく普通に見られる鉄欠乏性貧血のことです。もう一つ、ビタミンB欠乏の貧血も取り上げます。



鉄分が多い食品というと、たいていの人がレバーやほうれん草を思いつくのではないでしょうか。しかしレバーを日常的に食べる日本人はまずいないでしょう。ほうれん草は日常的な食品ですが、残念ながらほうれん草は非常に腸管での吸収効率が悪く、要するに殆ど消化吸収されないので、どんな栄養素があろうがほぼ無駄です。単に食物線維だから便秘に良いだけです。



鉄の中でも人間の腸で吸収されやすい「ヘム鉄」を多く含む食品は動物のレバーに続いて動物の肉です。魚介類でも牡蠣には比較的多く鉄分が含まれますが、あれも毎日食べるというわけには・・・。



だからこそ日本人、特に日本人女性には鉄欠乏性貧血が多いのです。画像は私がタイのチェンマイで食べたタイではポピュラーな麺「カノムチーン」で

カノムチーン・ナムニャオ・チェンマイ独特のカノムチーン。黒い塊が血を寒天状に固めたもの。

すが、この画像にある黒い塊のようなものは豚の血を寒天状に固めたものです。これは、中国南部、台湾から東南アジアまで広く日常的な食品となっています。何しろ、血を固めて食べるのですから、こういう地域に「鉄欠乏性貧血」という疾患は存在しません。



ヨーロッパでも血はソーセージに入れるなどして食べられます。要するに、肉食をする人々はわざわざ動物を殺すのに肉だけ食う、なんてことはしないのです。肉も内臓も血も軟骨も、全て食います。私たち日本人が魚を丸ごと食うのと同じです。だから肉食が昔から根付いている地域では「鉄欠乏性貧血」という疾患はないか、ヴィーガン(完全に植物しか食べない人)など特殊な食習慣を持つ人でなければ起こりません。



同様に、ビタミンBが欠乏して起きる貧血も、こうした肉食文化の土地では起きません。なぜならビタミンB群は肉に含まれるからです。因みに亜鉛欠乏も肉食文化では稀ですが、日本では非常に多く観られます。亜鉛欠乏は味覚、嗅覚異常、乾燥症など様々な問題を起こしますが、あゆみ野クリニックがやっている「もの忘れ外来」では必ず初診時に亜鉛、甲状腺ホルモン、ビタミンB群、葉酸などを採血で計ります。ある患者さんは物忘れが酷いと言って家族が連れてきましたが、採血の結果かなり酷い亜鉛欠乏であることが分かり、亜鉛を薬で補充したら物忘れはよくなってしまいました。



要するにこういう疾患は全部「動物を食わない民族・地域」で起きるのです。だからこれは一種の風土病です。日本では女性が鉄欠乏性貧血になるのは当たり前のように思われていますが、実はその背景には動物食が根付いていないという食習慣があるのです。



肉食えってわけです。

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