石巻
その患者さんはもう元の職場を退職し、完全にそことは縁を切ったので、話しても良いでしょう。
その人は保育園の保母さんでした。保育士です。園長のパワハラに遭ってこころを病み、そこを辞めて他の仕事に就いたら、すっかり回復しました。
その保育園は、ある寺が経営しています。寺の住職が理事長なんです。それで、理事長の坊主の口癖が、「俺が考えることを読んで動け」なんだそうです。その坊主理事長の考えることなんか、職員はみんな分かっています。如何に金を儲けるか。それだけです。無論その保育園はご立派な経営方針を掲げています。仏教の何たらかんたら言う教えに沿って子供を育てる云々。でもその坊主兼理事長の口癖は「俺が考えることを呼んで働け」なんです。
そこを退職してせいせいしてからその方が来院したとき、「あの坊主は飲酒運転をすり抜けたことがあるんですよ」と教えてくれました。検問でつかまったらしいのですが、同乗の部下を身代わりにしたそうです。
検問の警察官がそれに気がつかなかったわけではあるまい、と私は想像しています。石巻のそれ相応の由緒ある寺の住職で地域の顔。手広く商売もやっているとなれば、石巻の警察なぞは簡単に手加減します。
実は逆もあります。あるとき私がクリニックの勤務を終えて帰宅の途についたとき、パトカーに停止を命ぜられました。「ある人物があなたが飲酒運転をしていると伝えてきたので、これからアルコール検査をする」。
あきれ果てた話です。だってそのパトカーは数日前から毎日あゆみ野駅前に停まっていました。なんだろうな、と思ったら、私の帰宅を捕まえようとしていたわけ。いや無論、私は酒好きです。しかしクリニックの診療を終えた帰りなんです。いくらなんでも診察室に酒瓶を置いているわけではありません。
ハイハイ、と私は呼気検査を受け、結果は当然陰性でした。それきりパトカーがあゆみ野クリニックの周辺をうろつくことはなくなったのです。まあ、黙っているのが大人というものなのでしょうが、私は未熟なので、どうしても警察官に一言言わずにはおれませんでした。
「見下げ果てた話だ」。
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