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二宮先生に学ぶ #子どもに優しい親権制

読書感想文の続き

第5章 人の世話をすること

同章では、保護と自立へのサポートと題し、自立できない人を助ける仕組みについて解説をしている。

子どもの保護

こう題して、親権について検討していく。まずは、民法818条、その歴史、そして、民法820条により、単なる権利ではないとする。

そして、子どもの権利条約について言及する。

・・・国連で採択された子どもの権利条約において、子の権利主体性が確認された。子の利益を守るとはいっても、それは、子が未熟、未発達な存在だから保護するというのではなく、子自身に発達し成長する権利があり、親や国・社会はこれを援助するものという発想に変わってくる。親は子に生命を直接与えた者として(実子の場合)、あるいは養育を引き受ける意思を表明した者として(養子の場合)、第一次的に子に対して養育の義務を負い国や社会は親がこの義務を適切に遂行できるような環境を整備する義務を負うのである。今日では、親権の権利性は、親として子に対して有する養育の義務を遂行するのに必要な限りで認められ、他人から不必要に干渉されない法的地位として構成される。そして不適切な養育については、国や社会が子の利益を守るために介入することがある。

大切なことゆえ、丁寧に引用した。親の権利とは、従来の父権主義の名残を感じさせるものではあるが、今となっては、決して、子を支配するものではない。子に対しては養育の義務を負うが、しかし、これを社会や周辺の他者、国家に対する義務という構成はできない。あくまで、義務を負うのは子に対してであり、その義務を全うするためには、社会や国に対し、養育の権利が保障されなければならない。社会や国、周りの者は、親であることを尊重しなければならないともいえる。それが子の利益を害するものでなければ、だ。第一次的には親の親としての養育を尊重していく、それが、子どもの保護に資するということだ。子の利益の最大化は、子を思う親心を備える親こそ実現できるという発想だ。例外があることを否定できない。そうはいっても、親子という自然的関係からすると、当然のことなのである。

これに続く解説のテーマは、共同親権だ。

婚内子の場合には、父母が共同親権者なので、親権を行使するときには、双方の合意が必要になる。そのため、相談し合ったり、一方の不適当な行使を他方が牽制することが可能になる。共同親権には、チェック・アンド・バランスの機能がある。

共同親権では、親権を行使するには、父母双方の合意が必要ということの意味が明らかにされた。相談し合ったり、時に不適当な行使を牽制する、そういう、チェック・アンド・バランスの機能により、子の利益の最大化が実現するということだ。

共同親権こそ子の福祉に適うということだ。

これが、婚外子では、一歩(それ以上かもしれない)後退する。

他方、離婚後や婚外子の場合は、父母どちらかの単独親権となる。

相談なく決定できる意味では機能的だが、不適切な親権行使が行われようとするときの、他方親権者による牽制を欠く。ただし完全に欠落しているわけではない。

親権者の親権行使が不適切だと判断する場合には、子の親族は、家庭裁判所に対して、親権者を父母の他の一方に変更することを請求することができる(819条6項)。ここでいう親族には、単独親権者にならなかった親も含まれるので、変更の請求という形で、チェックすることになる。

単独親権制においても、チェック・アンド・バランスの機能を発揮することが可能ということだ。それが子の利益を実現するには望ましい。不適切な親権行使がないか、別居して、別々に暮らす父母だからこその距離感をもって牽制することが期待されている。民法はそういう仕組みを想定していたということがよくわかる。

2007年出版の書籍である。この時点で、すでに次の指摘がある。

しかし、変更請求が認められるのは、よほどの場合に限られるから、日常的に父母が関わり、不適切な権利行使を抑制するためにも、離婚後や婚外子の場合にも、共同親権を可能とする法改正が必要である。

研究職というのは、真理の探究活動を通じて、未来予想を的中させてしまう。

平成26年、再婚養子縁組後の親権者変更が不可能という判例が確立した。

再婚養子縁組家庭の虐待報道が続く(もちろん円満良好な再婚家庭があることを否定しない。)。

共同親権の法改正の検討を政府が発表した。

最後に、法改正実現までの間のことに触れられている。

それまでは、監護者指定や面接交渉権で対応することになる。

決して、面会交流があればそれでよい、という話ではないのである。

つづく

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