法制審議会家族法制部会ウォッチ9(武田委員と井上委員)
さあ登場!
○武田委員
親子の面会交流を実現する全国ネットワークの武田でございます。世間では,「親子ネットさん」と呼ばれていますので,「親子ネット」と略称にてお話をさせていただければと思います。
先ほど棚村先生から,現場の声という貴重な御意見を頂いて,私どももできる範囲で,現場を声を部会の場にも集めてまいりたいと思いますので,是非,別居当事者側の意見,逆にDV被害者の意見もお聞きした上で,この場で議論いただければ,非常によいのではないかと思っております。
まず,簡単に自己紹介させていただきますと,私はここにいらっしゃる先生方と違いまして,有識者でもなく,ふだんはIT会社に勤める一般人でございます。また,個人的には,別居親元当事者です。もう10年以上前に妻,子どもと別居になり,様々な紛争,夫婦間の紛争も体験をいたしました。別居時期は2009年ですので,民法766条改正前,改正後を含めて,双方の時期での紛争の現場というものを体感したと思っております。現在は,今はもう別居12年ですかね,実は3年前から私は長男と暮らすようになりました。別居後,長男は妻と8年暮らし,その後,不登校になり,父と暮らしたいという話になりました。したがって,今は別居親当事者ではなく,シングルファーザー,私自身はあまり自覚はないのですが,ひとり親でございます。私の長男は小さな子どもではなく,もう高校生ですが,小さな子を抱えて経済的に苦労もされて,発端がDV夫の被害を受けてといった「ひとり親家庭」の当事者の気持ちも少しは分かるようになったかなと,そんなふうに思っております。
本日は,自己紹介を長々としてもしようがありませんので,少し,親子ネットの紹介をさせていただきます。私たち親子ネットは別居親当事者団体です。別居親当事者から相談をメールで受けたり,東京で毎月,定例会というものを行っています。そういった場でお話を聴き,みなさんの支援をしています。我々当事者側も,精神的にやはりつらくて,大体,年に1人ぐらいは自死してしまう方がいらっしゃいます。
そんな中,最近の傾向としまして,昨年の秋口ぐらいからメディアでも取り上げるようになりましたが,昨今,実はお母さんの会員が非常に増えています。今,親子ネットの会員数は600人ぐらいですが,現在は約3割が女性会員です。私は2019年に代表になりましたので,ここ3年程度の傾向として,特に女性会員が増えたと感じています。今日も随行者として女性運営委員を連れてきています。先ほど,赤石委員から連れ去りに関する御指摘がございました。当然,逃げなければ死んでしまうという状態で逃げるなとすること,このようなことはあり得ないと我々も思っております。しかしながら,親子ネットのお母さん会員の皆さんは,「親権・監護権を確保したいなら必ず子どもを連れて家を出るように」といった情報を父親側が利用し,お子さんを連れ去る行為が行われ,お子さんと断絶させられています。こういった情報は今やインターネットで簡単に手に入る時代になっています。親子ネットの母親当事者向けアンケートでもDV有無も設問に入れたところ,大体半数ぐらいのお母さんがDVを受けていたと回答しており,具体的には,連日罵倒され,追い詰められ,無理やり離婚届に判子を押させられり,出ていかされたり,という酷い目に遭っています。これはまさに「同意のない子どもの連れ去り行為」だと思います。その後,家庭裁判所に行き,面会交流調停を申し立てても,面会交流の決定は出ません。裁判所で面会の決定が出ないお母さん,実は多いです。その後,私どもは「引き離し」と呼んでおりますが,母親と断絶する子どもが増えている,こんなことを最近の支援活動の中で感じているところです。
男女の視点,当然あると思います。しかしながら,男性対女性の争いのみの視点で議論して解決しないことが多々あるということを委員の皆さんにまず,御認識いただきたいと思います。
また,諸外国の取り組み,いろいろあると思います。我が国は30年後れだの,50年後れだのと言われております。戒能先生からありましたように,海外でも失敗例とか,逆戻りするとかという例もあろうかと思います。また,文化の違いももあろうかと思います。
そういった事例含め,知見ある先生方の御意見を頂きながら,検討が進めば良いなと思っています。
最後に,今後の議論の進め方ですね,棚村先生からお話ございましたとおり,当事者インタビュー,これは是非御協力をさせていただきたいと思います。今回のテーマは養育費,面会交流,離婚後親権の問題,未成年養子,財産分与と五つあると理解しています。しかし,まずは,離婚に係わる父母はどういう考え方を持っているのか,それぞれの層別に理解することが重要だと思います。
例えば,養育費の取決めをしていなくて受けたこともない,面会交流の取決めもしていなくて,面会交流をしたこともない,いわゆる「離婚は親子の別れ」であるということが常識になっている層,次に,取決めはしたのだけれども,養育費はストップしてしまった,面会交流も実施されなくなった,これら父母間の価値観が異なっているか何らかの高葛藤を抱えていると思われる層。最後に,養育費,面会交流ともに取決めをしていて,現在も支払いを受けていて,かつ現在も面会交流を行っているという「離婚後も双方の親が子どもの養育に係わる」と考えている層があろうかと思います。
私どもは,この新しい価値観,「離婚後も双方の親が養育に関わる」のだという社会を目指しているのですが,なかなか葛藤があってそこに至れない,そこに私ども親子ネットの知見があると思っています。逆に,私どもは「離婚は親子の別れ」と許容している層,ここは知見はありません。こういった各層別に俯瞰し,養育費からとか面会交流からではなく,俯瞰した上で,そもそも離婚後の親子の在り方,今,何が問題で何が起きているのか,皆さんで理解を深めつつ議論が進めば,良い議論になるのではないか,そんなふうに考えてます。
すみません,時間を過ぎてしまって恐縮ですが,ここまでとさせていただきます。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございました。御自身の御経験のお話から始まって,当事者のインタビューということについて積極的な御意見を頂いたかと思います。それから,議論をするに当たっては,カップルの関係がどういうことになっているかというのを類型化して検討していくことが必要ではないかと,こういう御指摘を頂いたと思います。ありがとうございました。
大分時間たっておりますので,休憩しようと思うのですが,その前にもう一方ぐらい御発言を頂いて,そこで休憩をしようかと思いますが,どなたか御発言ございますでしょうか。
棚村先生からのバトンを受け取るタイミングで、当事者の声へと導く
時代は別居母ということもわかる
○井上委員
井上です。ありがとうございます。私は労働組合の役員ですので,民法の専門家ではありません。この部会には一国民としての感覚,立場で参加させていただければと思います。今回の部会での審議に当たっての関心,課題意識ですが,離婚に伴う子どもの貧困や,非監護親と子どもの交流の欠如といった子の福祉に関わる問題がクローズアップされる中,この部会での議論は社会的にも大変注目されていると認識しています。現時点で私ども連合が持っている考え方は,離婚時の財産分与,それと子どもに対する親の養育費負担を制度化するということのみであります。したがいまして,改めて連合としての考え方を全体的に整理してこの部会に臨むことにしておりますが,その方針を確認する機関会議が来月なので,本日は飽くまでも個人的な見解として2点,それから,要望を1点,述べさせていただきます。
1点目は,部会資料1の4ページの(4)に子の養育に関する法的概念の整理について,とあります。ここに記載の内容には賛同するところです。と申しますのも,親権や単独親権,共同親権について,また監護についても,その中身に対する国民的な理解,認識は様々です。この部会での議論が空中戦にならないように,また,注視している国民が混乱しないように,定義や解釈,具体的な行為などを明確にした上で丁寧に審議を進めるべきであると考えます。その上で,現行の単独親権の制度の下では離婚に伴って父母のいずれか一方を親権者に決めざるを得ず,親権者とならなかった親は監護者となるか,単なる非親権者として面会交流の機会を持つにとどまります。親権者ではない親が実質的に面会交流の機会しか得られないのは不十分であり,DVなど特別な事情がない限りは,少なくとも父母が共に子の監護,養育に関与できるようになればよいのではないかと思っています。
次に,2点目として,部会資料1の3ページの(3)子の養育における子の意思や意見の反映についてのところですが,ここも大事なポイントだと思っています。子の意思の反映を重視,担保した上で,面会交流や養育費の支払いなどをきちんと盛り込んだ養育計画の作成を促進していくということが,在るべき方向性だと思っています。
それから,要望ですが,先ほどからデータのことについて出ていますけれども,本日準備していただいている参考資料1-7,この厚生労働省のデータは平成28年ということで,5年前のものとなっています。取り分けコロナ禍で雇用喪失などによって養育費の支払いが,また感染防止等のために面会交流が途絶えているケースがあるということも指摘されています。コロナ禍における影響を含め,早急に実態調査を行った上で,今申し上げたケースへの方策は優先的に検討すべきではないかと考えております。
以上です。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。国民に分かりやすい議論をということで,法的概念の整理というのが重要ではないかという御指摘,それから,共同での監護ということについての御意見,子の意思の尊重ということについても同様と伺いました。それと,データあるいは最近の状況はいろいろ変動がありますので,新しいものをという御要望も承りました。
それでは,まだ御発言あろうかと思いますが,もしよろしければ,ここで休憩を挟みまして,その後,まだ御発言を頂いていない方々,あるいはもう一度発言したいという方々の御意見を頂くということにさせていただきたいと思いますが,それでよろしゅうございますでしょうか。
それでは,休憩いたします。
(休 憩)
○大村部会長 それでは,再開させていただきたいと存じます。
先ほどからずっと皆様の御意見を伺ってまいりましたけれども,まだ御発言のない委員,幹事もいらっしゃるかと思いますので,引き続き御意見を頂戴できればと思います。
そうやって休憩となっていった
次回より、後半戦へ
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