離婚って,どうやるの?
法律婚をしていると離婚するには,戸籍の変動を要する法律行為なわけで,協議離婚ができなければ,自ずと裁判所や弁護士との関わりが登場することになる
それゆえ,離婚事件を扱う弁護士のホームページなどがあふれ,離婚に関する情報に簡単にアクセスしようと思えばできるように思える
しかし,実際,離婚の2文字がよぎったふつうの子育て世代にとっては,元々離婚や法律,弁護士に無縁な暮らしをしていて,そういう離婚の情報自体がピンとこない
というわでニーズを感じ,まとめることにした
その経緯はこちらから
離婚の種類として協議離婚と裁判所での離婚がある
弁護士らしく,民法に沿って解説するとこう
第763条【協議上の離婚】
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
およそ日本の離婚の大半は協議離婚である
協議して,二人で,離婚しよう,という気持ちが固まって,緑の紙に必要事項を書いて,お互いサインして,婚姻届(茶の紙)のときみたいに,大人2人にサインしてもらって(証人)完成した紙を役所に届ければ,離婚できる
紙を作成すればいいので,離婚の経緯,財産分与,慰謝料,年金分割,離婚後の住居のことなどを話し合う必要はない
ここに,協議といいつつ,NO協議でいいというギャップがあると思われる
しかし,婚姻届を提出したときのことを思い出してみよう
結婚式のこと,親への挨拶,友人への報告,最近なら,氏はどうする?ということは話合うのかな?結婚にあたって話し合いはあれど,法律上の身分関係について(氏の件を除き)十分に議論することがない方が実情だろう(特に財産・家計のこと,など・・・もっと話合っておこうよ,と思う)
愛し合っているね,結婚しよう,はい,茶の紙提出(最近は華やかに記念撮影できるコーナーもあるらしいし,各町のゆるキャラが載っている婚姻届が用意されていることもあったり)で婚姻できちゃうのと同じ感覚で,離婚しようと思えばできてしまう
紙切れひとつで,他人になれる
ただし,子どもがいるときは?民法766条がある
第766条
1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
監護者,面会交流,監護に要する費用について,協議しておこうね,協議が整わない,できないときは,家裁が定めるよ,ということになっている
そうはいっても,これは,努力規定
協議をしていなくても離婚届(緑の紙)は受付られてしまうことがある
親の都合で離婚して,子どもがほったらかし,養育費の取り決めがなければ,払われようがないことも想像しやすいから,養育費未払い問題の実像が見えてくる
養育費の取り決めがなくても,離婚できてしまう・・・それは子どもにとってリスクではあるけども,それでよいとされるのは,親権者を決めるので,親権者が責任をもって育てるだろうという発想にあるからだ
第819条
1 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる
まさか苛酷なワンオペ育児をするわけがなく,元々子育ては家族みんなで担うもの,というかつての拡大家族の共同体の中では,都合がよかったのかもしれない
責任者を1人に決めつつ,そのリーダーのもと,多くの人間を巻き込んで子育てするのであれば,自ずと父とも母とも関わりが維持できたかもしれない
むしろ,責任の所在を決めないことがかえって,子を不利な状況に追いやるという方が懸念されたかもしれない
時代は令和
昭和の終わり,特に,平成においても,家族のあり様が大きく変わった
サザエさんやちびまる子ちゃんのような家族が描かれもするけど,クレヨンしんちゃんのような核家族にシフトしていくことは説明するまでもないだろう
家族の実像が変わっているのに,法律は,明治時代そして,戦後の新しい憲法の理念を取り込んだものの,70年前の家族観のまま,今も変わらず続いている
離婚時に,父母の一方を親権者と定め,他方が親権を失っていく制度
今回は,問題提起ではなく,離婚の2文字がよぎった人に知って欲しい基本知識なので,制度の紹介にとどめよう
すでに,恐ろしい懸念を覚える方が自然かもしれないが,世の多くの離婚は,協議離婚であり,子どもがいる場合には,夫婦の離婚しようという気持ちと,親権者をどちらにするのか,という2点さえ決めて,緑の紙に記入して届ければ,離婚できるのである
離婚することは,とても簡単そうに思える
協議ができない場合はどうなるか,は・・・つづく
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世界から強く非難を受けて,ついに,国内でも,見直しを迫られ,法制審議会での諮問が予定されることになった親子法制に関わる内容を知ることができるでしょう
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