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懐かしい場所

海外旅行後、1か月くらいは、渡航先の思い出、写真や買ってきた物を眺めながら現実逃避気分を引き続き味わいつつ、次の旅への思いを馳せるということは海外旅行好きにはあるあるでしょうか。

私自身も現職時代は30代半ばくらいから退職するまではそうやって過ごしていました。それがなかったら、仕事も長くは続かなかったかもしれません。

とはいえ、それが高じてきたため短期でもいいから海外滞在とか移住といったことを考えるようになって、早期退職を決断したきっかけのひとつにもなるわけです。

長くても10日程度の海外旅行(しかもほととんどがグループツアー)しか経験がないのに、滞在が1年ともなるとどうなるのかまるで未知の世界でした。

ましてや50歳。初めての語学留学(という形での滞在)。英語は中学レベルからのやり直しでした。

帰国直後はタイムスリップじゃないですけど、現実に自分の体は日本に戻ってきてるのに、自分という存在は向こうにも残っている感じがしてました。

時差ボケもあったとはいえ、私が生きてる世界が真っ二つに裂けたようで、帰国直後からめまいや吐き気さえ覚え、この浮遊感覚をどう処理したらいいかわからないまま眠れない夜も続きました。

自主隔離後は、解放感で一時帰国気分になり、たった1年余り離れていただけでも、日本での生活を新鮮に感じていました。

退職後渡航のタイミングの問題で確定申告などやれないままだったことや、持病の定期健診やら日本でしかできないことのTo do list  なんかも作って、帰国後はそれを潰してきました。

そして、帰国後3か月が経過。

一時帰国気分も消える頃…。実際、私は、留学先だったアイルランドからは完全帰国で、それは今も変わっていません。

でも、なんでしょう。この行き詰まり感たるや!!!

コロナ禍における日本という環境の問題なのか、私個人の問題なのか。

ただ、ひとつ言えることは、「振り出しに戻っている」という感覚です。

アイルランドで知り合った20代の日本人男性は一時帰国していたときの自分の感情を基に「絶対にまた(アイルランドに)戻ってきたくなりますよ。」と呪いのような言葉を私に掛けたことを覚えています。

思えば、彼にはアイルランドという国に対する愛と明確な目的(主に仕事)と情熱がありました。その彼だけではなく他国から来てアイルランドという国にある程度長く根を下ろす人たちはみなそうです。また、図らずも運命的な出会いがあったので、なるべく長くいたいという人もいるでしょう。

残念ながら私にはそれらがなかった(という部分も追々語る)。

ということで、私にはアイルランドという国はもう「懐かしい場所」に変わってきていて「戻りたい場所」ではない。

ヨーロッパの中でも突出して厳しく長いロックダウンが続いていたアイルランドを、帰国前後は「監獄島」と表し、そこから逃げたい、とか、逃げてきた、という感覚でした。これも非常時ということもあり、私の評価基準にかなりの曇りというか歪みがあるかもしれません。

とはいえ、

私の経験したアイルランドが私のリアルなアイルランドなのです。

ただ、数少ない本当に心が繋がったと思える友人はあの場所にいるので、またいつか「立ち寄りたい場所」ではあります。

この「懐かしい」とある程度突き放して言えるほどになるまで時間は掛かりました。ようやく最近になってその言葉が出せるようになってきたのです。でもまだ完全に清々しいものにはできてません。

というのも、無念だったことがたくさんありすぎて、どこか生々しい後悔と未練が残っていたからです。

それでも、私の現実。日常生活は今はここ、日本にあります。

帰国=振り出し

なのですが、それは、「やり直し」ではなく、また別の道に繋がっていると思いたいです。

さて、今日はここまで。





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