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それでもそれでも_それでも日々はつづくから

<読んだ本(あくまでも私の所感)>
題名:それでも日々はつづくから
著者:燃え殻
読みやすさ:★★★★★
面白さ:★★★★★


お世辞にも読書家と呼ばれたくない私が
「ああ、私だってどんな本を読んだっていいんだ」
と思ったのは燃え殻さんの本を読んでから。(もう1人は爪切男さん)
活字を読む楽しさ、書いてある事がすんなり頭に入り突き刺さり、脳の引き出しに入っていく感じを知った気がした。

学生時代に強制的に読まされた名残を引きずり、老若男女誰でも知っているタイトルや著名すぎる作者の本ばかり手を出しては挫折していたからかな。
音楽や映画と同様、本にも自分に合う/合わないがあるのだ。多分。

ただ正直燃え殻さんの本は読み切れていない。
気がつくと著書が増えていて、この本も新刊かと思ったらとっくに売ってたエッセイの文庫化なだけだった。
燃え殻さんの本はいつか手元でダブりそう。

**

現在と過去を行き来するようなエッセイ。雑誌の連載エッセイのまとめ本。
雑誌のコラムやエッセイのページは著者問わず読むことが多い。
燃え殻さんのエッセイは日常から急に場面転換が入ったりご自身の過去の傷口に塩塗ったりお焚き上げを始めることが多く、限られた文字数の中にエピソードというか要素が多くて面白い。
それでもって着地点は香港アプローチなんだけど丁寧なソフトランディングで搭乗者全員がスタオベなのが見事。そういう表現の仕方だから人生相談(相談の森)も面白かったなあ。

エピソードも胸つくものが多く
特に思い立って急に遠出するエピソードは燃え殻さんの他の著書にもあるんだが、私のこれまでの人生にも数回あって、その頃の妙に行動全てのハードルが低かった時代の気持ちと被る。
年齢も過ごした場所も違うんだけど、あの時近くにいたんだなあ、近い思いをしていた人がいたんだなあとか思わせてしまう。


この本の中では「誰も許さなくていい、生き延びてほしい」のエピソードが非常に心に残っており、子供の頃の、断片的にしか残っていないけど絶対に忘れない衝撃的な記憶が、たまに急にふとした瞬間に高解像度で海馬の奥底から飛び出てくる。
飛び出た時、漠然とした怒りや悲しみに打ちひしがれるんだけどその対象が曖昧で、でも気持ちは強くてしんどい。
でも大人になった自分は今生きている。生き延びている。
当時周りにいた人を許す事はできない。それでもいいから生きることが大事。
許せないことは誰かにぶつけても仕方ない。
そっと昔の自分に伝えにいきたい。


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